高血糖でがんが増殖しやすい素地ができる

高血糖値

早分かり -

  • 肥満は様々なメカニズムによってがんを促進します。これにはミトコンドリアの機能障害、過食、砂糖の摂りすぎ、慢性的炎症、特定のタンパク質やホルモンの生産過剰が含まれます
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Dr. Mercolaより

砂糖と肥満ががんリスクを高めることは今やわかっています。肥満はあらゆる死因による死亡リスクに寄与する。

平均的に、体重が多すぎるだけでも余命を約一年縮め、若干肥満だと余命が3年は縮みます。

正常な体重の人は長寿で70前に死ぬ確率が低いです。

こうした事実を念頭におくと、砂糖の過剰消費による財政的な負担も高くなることは想像がつきます。

Credit Suisse Research Institute(クレディスイス研究所)の研究「砂糖:消費を見直す時期」(2013年)によるとヘルスケア支出の40%が砂糖の過剰摂取に直接起因する疾病に向けられており、肥満、糖尿病、がんを含みます。

砂糖添加の加工食品は見た目には安価でも結局は高くつくことになります。

食事はあらゆる経路でがんに影響する

肥満をはじめ高血糖値、インスリン抵抗、がん等の肥満に関連する病気について言えば、食事は決定的な役割を演じています。肥満が様々なメカニズムでがんになりやすくすることが研究からわかっています。

砂糖ががんその他の慢性病に罹りやすくする主なメカニズムの一つはミトコンドリアの機能障害です。砂糖は脂肪より新陳代謝によりはるかに多くの反応性酸素種(ROS)を発生するので「汚く」燃えるため、身体にとって最適な燃料ではありません。

このために過剰なフリーラジカルが過剰な砂糖の摂取により発生し、ミトコンドリアや核のDNAを損傷すると同時に細胞膜やタンパク質の障害をきたします。

つまり従来式の理屈に反し、細胞の核に発生する遺伝子異常ががんを引きおこすのではありません。ミトコンドリアがまず損傷し、これが核の遺伝子突然変異につながっています。

慢性的な過食がこれと同じ影響を及ぼすこと、特に細胞のミトコンドリア内部にある膜のネットワークである小胞体(ER)に研究は注目しています。

小胞体に処理能力を超す栄養分が来ると細胞表面のインスリン受容体の感度を落とすように信号を出します。

従って過食は細胞が過剰な栄養分によって課される余分な作業のストレスを受けてインスリン抵抗を促進します。インスリン抵抗はがんを含む大部分の慢性病のコアをなします。

砂糖はがんの主な要因

過食する人はたいてい砂糖の多い食品を多く食べており、高血糖値とインスリン抵抗を促します。砂糖が多い食品の過食は、自然食品の食べ過ぎよりがんのリスクを高めます。

砂糖が世界のがん急増の主な原因であることが近年の研究からわかっています。2014年に出されたある世界がん負担に関する報告書によると、肥満は推定毎年500,000万の症例の原因だそうです。

この理由はがん細胞は主に砂糖が無酸素状態で代謝て促されるからです。砂糖がなければ、ほとんどのがん細胞はサバイバルできないほど他の手段で代謝するだけの柔軟性がありません。

健康な細胞はグルコースや脂肪から得るケトン体をはじめとして適合するだけの代謝の融通性があります。大部分のがん細胞にはこの能力がなく、正味の炭水化物量(総炭水化物量から繊維分を控除した量)を減らすとがんを効果的に飢え死にさせます。従って食事をケトーシスに変えることでがんにとても効果があるように思われます。

テキサツ大学のMDアンダーソンがんセンターによる近年の研究によると、精製糖は乳がんリスクを著しく高めるだけではなく、腫瘍の転移リスクも高めることがわかっています。

たいていの加工食品や飲料に含まれる高果糖コーンシロップ(HFCS)に含まれる精製果糖が乳がんや転移の主な原因です。

糖尿病とがんの相関性が高まりつつある

全体的に見るとインスリン抵抗はがんリスクの高まりに寄与する主な要因の1つであり、 2型糖尿病リスクがより大きいことが多くの研究で実証されています。

100万人以上の成人がん患者を対象にした近年のある研究は、2型糖尿病と診断された患者は糖尿病のない患者より23%余計に、糖尿病と診断される前の十年間にがんと診断される傾向があることが判明しています。

肥満のアメリカ人はますます血糖管理がうまくいっていないため、2型糖尿病と関連する健康の障害確率が高まっていることも近年のある研究でわかっています。このトレンドに対抗するためには、体重過剰の人が「真剣に減量に取り組む」ように研究者らは促しています。

前糖尿病症状もがんリスクを高める

以上の発見された事実は前糖尿病症状もがんのリスク要因であることを示す以前の研究を裏付けます。20歳以上の3人に1人が前糖尿病症状を持っており、この場合はグルコースレベル(血糖値)が正常値より高いが、糖尿病と診断するほど高くなっていないものです。

前糖尿病症状を持つ人の15~30%が5年以内に2型糖尿病になっています。

2014年に公表された約900,000人を対象にしたメタ分析では、前糖尿病症状を持つ人は肝臓がん、胃がん、すい臓がん、乳がん、子宮内膜がんリスクが15%高いことが発見されました。

別の研究では、がんと診断された時に最もインスリンレベルが高かった人はがん再発リスクが高いだけではなく、特に悪性のがんと診断されるリスクがより高いことがわかりました。

私の見解では、発生するROSがより少ない高品質のきれいな脂肪を燃焼するのに対して、砂糖(グルコース)によって促進されるメタボリズムにより促進され、不要かつ損傷を与えるフリーラジカルを多く発生させることでがんが発生するメカニズムを把握できれば、こうした事実は想像のつくことです。

絶食ががん患者を助ける仕組み

絶食は、肥満を抑え、ミトコンドリア機能を最適化するのを助けるもう一つの戦略で、がんとの闘いに臨みを与えるものです。

実際にある研究グループはがん患者の併行療法として米国食糧医薬品局(FDA)が絶食を認可する可能性を追究していると報告しています。

ヴァルター・ロンゴ氏(Valter Longo, Ph.D.)は絶食とがんへの効能に関して多くの研究を発表してきました。Cancer Cell(がん専門誌)に掲載された最近の同氏の研究は化学療法中に絶食するとがんを殺すT細胞がより強力に活性化し、化学療法の効果がよくなることを発見しました。

ロンゴ氏は説明しています:「がん細胞をT細胞に暴露させる最大の要因はがん細胞に通常高濃度で含まれる酵素ヘメ・オキシゲナーゼ1に対する効果です。絶食するとオキシゲナーゼレベルが下がり、主腫瘍を殺す細胞毒性T細胞の増加を含む多くの改善が見られます。」

最適な健康とがん予防のための食事

私の見解ではがん予防として食生活を無視することは大きな間違いです。たいていのがんは適正な食生活で予防できると私は確信しています。

(農薬をはじめとする)毒素への暴露を避けることはもう一つの重要な要因であり、できる限り有機食品、特に草を食べさせたか牧草で育てた肉や動物性製品を食べるように私が勧めている一つの理由です。

インスリンやレプチン抵抗がある方の場合がん予防/治療のためにまず行うべきことは、いかなる形態の砂糖/果糖や穀類も食べないことです。この初期手順は悪性変成に寄与し得る信号伝達経路を最適化します。

前半に取り上げた代謝によるミトコンドリア障害こそ基本的に取り組むべきことで、そのためには正味の(繊維質以外の)炭水化物を急速に減らし、高品質脂肪に置き換えることです。

タンパク質の消費を適度にすると同時にタンパク質の品質に注意することも重要です。過剰なタンパク質もがんの増殖に寄与するからです。

従って、まとめとしては、最適な健康のためには十分な量の炭水化物、脂肪、タンパク質が必要です。しかし健康な炭水化物と不健康な炭水化物があります。

脂肪とタンパク質に関しても同様です。ミトコンドリア機能を最適化するために必要な分子生物学の視点からすると、以下の栄養比率による食生活を目指すのがよいようです:

健康な脂肪、全カロリーの75~85%。有益なモノ飽和及び飽和脂肪はオリーブとオリーブ油、ココナッツとココナッツオイル、草で育てた生の有機牛乳から作るバター、マカダミアやピーカン等の生のナッツ、黒ごま黒クミン、かぼちゃ、麻の実等の種、アボカド、草を食べさせた肉、ラード、獣脂、ギー(浄化バター)、生のカカオバター、有機の草を食べ冴えた玉子の黄身、動物性オメガ3脂肪、イワシやアンチョビ等小型の脂ぎった魚に豊富です。

病気に寄与する有害な脂肪は主にトランス脂肪と高度に精製された多価不飽和オメガ6サラダオイル(PUFA)が挙げられます。グルコースは脂肪よりはるかに多くのROSを生成させる本質的に「汚い」燃料であることを覚えておいてください。しかし、脂肪を燃焼させるには、あなたの細胞は健康かつ正常でなければなりません。がん細胞は脂肪を燃焼させることはできません。これが健康な脂肪食が効果的な抗がん戦略として見なされる理由です。

主な燃料をグルコースから脂肪に切り替えると、がん細胞内の大部分のミトコンドリアは機能せず燃料を燃やすための酸素が来ないのでがん細胞は生き残ることができなくなります。同時に健康な細胞は最適な優先的燃料を受け、酸化性の損傷を軽減し、ミトコンドリアの機能が最適化されます。これらの効果が合わさって健康な細胞は生き残り、がん細胞は「飢え死に」します。

炭水化物、一日の合計カロリーのうち8~15%。非繊維質(正味)炭水化物の2倍の繊維質を摂るように心がけましょう。つまり合計炭水化物が一日のカロリーのうち10%だとすると、少なくともその三分の二は繊維質にすべきだということになります。繊維質には体重の管理や特定のがんリスク低下を含むその他の健康へのメリットがあります。

正味炭水化物(果糖も含め)を一日に100 g未満に減らし、合計果糖摂取量をあらゆる食べ物から合計して一日に25 gまでに制限することが有益であると私としては考えています。インスリン抵抗のある方なら果糖を一日に15 gまでに制限することが賢明でしょう。

がん患者はさらに厳格な制限を適用すべきです。正味炭水化物量を減らせば炎症軽減とがん増殖の軽減に至りうる4つのことを実現できます。実現可能な4項目:

血清グルコース濃度の低減

mTOR濃度の低減

インスリン濃度の低減

インスリン成長因子1 (IGF-1の低減。このホルモンは下垂体腺に作用して細胞成長や複製を含む新陳代謝と内分泌効果の誘因になります。IGF-1濃度が高くなると乳がんその他のがんに罹りやすくなります)。

私の場合は、一日の正味炭水化物量を50~60 gに制限しています。これがとても無理なように聞こえる反面、砂糖や果糖の消費を劇的に下げる最も簡単な方法としては、本物の食品に切り替えることが挙げられます。砂糖や果糖の大部分は加工食品に含まれているからです。

豊富に食べるとよい高繊維質の炭水化物の優れる摂取源にはチアシード、ベリー類、生のナッツ、カリフラワー、根類、タマネギやさつまいも等の塊茎類、緑の豆、ソラマメ、ブロッコリ、葉キャベツ、オオバコの種子外皮が挙げられます。

タンパク質、全カロリーの7~10%。品質は重要ですので、高品質の草を食べさせたか牧草で育てた肉や動物製品をお求めください。原則的には体脂肪を除く体質量1 kg当たりタンパク質を約1 gに制限すべきで、ほぼ誰でも一日に40~70 gに相当します。

(タンパク質の必要量を推定するには、まず体脂肪を除く体質量を求めます。体脂肪率パーセントを100から引きます。例えば、体脂肪率が20%の場合、80%が体脂肪を除いた体重です。このパーセントに現在の体重を掛け合わせると体脂肪を除いた体重が求まります。)

タンパク質を制限する理由は、過剰に摂るとmTOR伝達経路を刺激し、がんを含む多くの病気において重要な役割を演じているからです。細胞の修復と維持のために必要なだけのタンパク質を摂れば、mTORは阻害されず、がん発生確率を最小化します。