加齢による筋肉ロス防止法

筋肉の老化

早分かり -

  • 筋肉の老化は比較的早く始まります。30代に入る頃までに筋肉ロス (筋肉の委縮)は予防するするために先取的な手順を踏んでおかないとすでに始まります
  • 筋肉は新陳代謝系を正常に保つのを助け、筋肉量を維持すると新陳代謝の低下やホルモン減少、肥満、糖尿病、心臓血管病から守るのも助けます
  • 適切な食生活とエクササイズ特に筋力トレーニングを行うことで加齢にともなう筋肉ロスを予防したり逆転させることさえできます
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Dr. Mercolaより

経時的老化は誕生とともに始まり、この時計を止めることはできません。しかし生物学的老化も存在し、細胞の老化を遅める、場合によっては逆転させることさえ可能であることを示す根拠があります。

このことは特に筋肉組織に当てはまり、適切な食生活とエクササイズで高齢になってからも再生することができます。

筋肉の老化は比較的若い頃から始まることはおそらく想像できないことでしょう。三十歳代に突入する頃までには加齢に伴う筋肉の減少は予防するために先取的な手順を踏んでおかないとすでに始まります。

何も対策を摂らないでいると、10年当たり平均してほぼ3kgの筋肉を失っていきます。

この過程で毎日の活動が重要な機能を果たすことを実感することは欠かせません。食べる物、食べる時間、エクササイズの方法はすべて身体の老化の速さを決定する遺伝子活性となって現れます。

筋肉量の維持が重要な理由

通常は筋肉の老化に伴いサイズや強さがだんだんと減っていくだけではなく、有酸素容量も失われていきます。これより判別しにくい副作用は、こうした筋肉量の減少が新陳代謝の全体的機能をも下げることです。

筋肉の生物学的機能は動作以外に多くのことに及びます。このほかにも筋肉は新陳代謝を正常に維持するのを助け、筋肉量を維持すると新陳代謝の低下やホルモン減少、肥満、糖尿病、心臓血管病から守るのも助けます。

さらに、認知機能をも強くし、老化を遅めます。筋肉の生物学的、新陳代謝的意義を考えると加齢にともなう筋肉委縮は大きな健康の危機が到来していることを告げます。

端的にいうと筋肉ロスが始まると、健康は急激に劣っていきます。筋肉ロスは全般的な体力低下、余分な体重が付く傾向につながり、病気に罹りやすくなり、老化が加速します。

支えられずに動けないほど脆弱になることにともなう自立性が全面的に失われることはいうまでもありません。

Dr.ムルタザ・アハメド氏が筋肉の委縮 (加齢に伴う筋肉ロス)に関する記事で説明いています:

「...若い時は日常行うべきことのために必要な量よりはるかに多くの筋肉がある。

椅子から立ち上がったり、階段を上る等の日常生活で欠かせない動作をすべて行ためには、私たちが発揮できる力の30%しか必要ではなく、最大の力は長年かけて5%ずつしか減少していかないので、日常生活のための動作をまだ容易に行うことができるため、この低下には気が付かない。

問題は若い頃の約50%まで力が落ち始めると起き、かつては簡単だったことが突如として困難になり始める。

車から降りる等の面倒な動きが難しくなっているのに気づき始め、次に着替えや髪を梳く等の簡単な動作まで問題になり始めることもある。」

筋肉の委縮は転ぶリスクも増やし、これが命の脅威となる帰結につながりやすくなります。転ぶことは高齢者の 臀部骨折 の最もよくある原因であり、この骨折により合併症のリスクがおおいに高まり、通常は長期的な特殊介護を要するようになります。

幸いにもライフスタイルを二三の戦略で変えることでこの連鎖反応を遅くしたり逆転しさえすることも可能になります。

インスリン抵抗性で進行する筋肉浪費

まずなにより、健康的なインスリン感度の維持は健康的筋肉の維持と筋肉の委縮予防に欠かせないことを実感していただきたいのです。

加齢に伴い、若い頃には機能していたインスリンが食間や夜間の筋肉崩壊を阻止できなくなります。これと同じ現象はインスリン抵抗性があったり糖尿病でも起きます。

この現象の背景にあるメカニズムはmTOR (ラパマイシンの哺乳動物標的)といい、インスリン経路の一環をなしています。このためインスリン感度は筋肉の中に適正なたんぱく質組成のために欠かせないのです。

手短に言うと筋肉を作るためにmTORメカニズムの活性化が必要です。インスリン受容体の感度が落ちていると、この活性が起きず、筋肉浪費は不可避の事態になります。mTORメカニズムは食事でもエクササイズでも活性化されません。

乳漿たんぱく質は高度に有益な栄養素であり、GLP-1 — 健康的なインスリン分泌を促進し、その機能を効果的にする飽和感を生じさせるペプチド — を増やすだけではなく、ヒト成長ホルモン(HGH)も増やします。

高強度インターバルエクササイズ と 間歇的絶食 も体内のHGH生産を促します。

高強度インターバルエクササイズ、絶食、高品質の乳漿たんぱく質をエクササイズの30分後に摂り込むという三つの組み合わせはインスリン抵抗性と筋肉浪費を予防するために効能がある一つの戦略です。

も一つの検討すべきライフスタイル要因は適度に日光に当たることで、ビタミンDは筋肉の機能に必須のものだからです。(ビタミンDはカルシウムとマグネシウム同様に骨の健康のために欠かせません。)ビタミンD欠乏 も体重に関わりなくインスリン抵抗性と2型糖尿病のリスクを高めます。

乳漿たんぱく質 — 強力な筋肉増進剤

アミノ酸は健康な筋肉のために欠かせないものであり、最も重要なものは ロイシンであり、これは数少ない例を挙げるだけでも乳製品、ビーフ、鮭、鶏肉、玉子等各種の動物性食品に含まれます。ロイシンは体内で複数の機能を果たします。そのうちの1つに、上記のmTORメカニズムへの信号伝達です。このシグナリングによってたんぱく質が作られ、筋肉を付けます。

フィットネス専門家でUnlock Your Muscle Gene(筋肉遺伝子を発揮させる)の著者オリ・ホフメクラ氏によると、身体のたんぱく質を維持するためのロイシン必要量は一日に1~3gですが、同化経路を最適化するためには1日あたり8〜16gのロイシンが必要です。一つの例外を除き、このレベルに届くにはたいていの食品を食べてもたいへんなことです。

ロイシン8gを食事から摂るには鶏肉なら680g、生のチェダーチーズなら227g程度は必要になりますが、高品質の乳漿なら85gだけでも推奨量が得られるので、最適な選択肢になります。

50歳過ぎの方なら最適な筋肉たんぱく質の合成を維持するためには、たんぱく質をもっと多く食べることも必要であると考えられます。最近のある研究が高年者は一日に体重1kg当たり約1.5gのたんぱく質、つまり現状のRDAガイドラインの2倍の量が必要であるとアドバイスしています。

そうはいっても、身体が実際に消費できるたんぱく質の量には 上限 があるので、 たんぱく質自体は本質的に筋肉の委縮に対する魔法のように効くソリューションではありません。がんリスクの増大を含むリスクはたんぱく質の食べ過ぎに伴うので、筋肉を「救う」ためにたんぱく質だけに頼ることはよくありません。筋力トレーニングで実際に筋肉を鍛える必要もあり、また、がんの方の場合 過剰なたんぱく質の消費には特に注意する必要があります。

品質がよくない乳漿(フェイ)製品は百害あって一利なし

乳漿製品はじゅうぶん市販されていますが、大部分の品質は劣悪で、高品質の乳漿にあるような健康的効能はありません。濃縮乳漿たんぱく質製品をお探しください。濃縮製品には老化防止にとてもよい栄養素であるグルタチオンの先駆物質であるグルタミルシステインも含んでいます。

最高品質の乳漿製品なら生乳製チーズの製造工程から得られる派生製品をお求めください。乳漿の成分のなかで最も重要なものはグリコマクロペプチド(GMP)で、これは健康な腸内細菌叢も支えてくれる効能がある免疫力を支持する成分を含んでいます。しかし、生乳製の乳漿しかこれらの効能はありません。その他の製品では効果が得られません。

乳漿たんぱく質分離精製物は避けましょう。これはアルカリ化ミネラルや天然のビタミンや脂質などの貴重な栄養補助因子が無く、 — これらはすべて分離精製工程で失われています。高品質製品を見分けるには以下の基準で判断します:

有機(ホルモン不使用)

牧草で育てたもの

滅菌されていない(生)乳製

熱は分子構造を壊すのでコールドプレス品であること

加工レベルが最小限であること

豊穣でクリーミーな飽和感ある風味

水溶性

人工甘味料ではなく、自然に甘味をつけ、しかも砂糖を使用していないもの

消化が非常にいいこと — 長鎖脂肪酸ではなく中鎖脂肪酸(MCT)であること

筋肉浪費を予防するリンゴの皮や末成りトマトの成分

全体的には最適な食餌戦略とは化学物質との接触を避けるため、本物の食品、最適なのは有機品で草で育てた物です。種類豊富な果物や野菜を含むバラエティーに富んだ食事を食べるようにすると老化が早く始まらないようにするため役立つと思います。

例えばアイオワ大学の研究者らはリンゴの皮や末成りトマトがATF4というたんぱく質の活性を弱め、筋肉ロスを予防するのを助けることを近年発表しました。

ATF4は筋肉たんぱく質の合成を枯渇させるプロセスに関与している転写因子です。 リンゴと末成りトマトにはATF4活性を低下させる2種類の化合物が含まれており、筋肉たんぱく質の正常な合成を可能にします。その2種類の化合物とはウルソル酸とトマチジンというリンゴや末生りトマトにそれぞれ含まれる化合物です。この点に関して主幹筆者のクリストファー・アダムズ氏が次のように説明しています:

「ATF4活性を低下させるウルソル酸とトマチジンは骨格筋が老化の影響から快復できるようにする。」

0.05%トマチジンか0.27%ウルソル酸のいずれかを含む餌を当てた老齢マウスの筋肉量が10%増加し、筋肉の質がたったの2か月で30%よくなりました。その効果は若い成長したマウスと同程度の筋肉量と強度へ効果的に戻れるだけ充分あったのです。Tech Timesが次のように説明しています:

「以前の研究はこれらの化合物が栄養失調や過度に座り続けるライフスタイルに関連する重篤な筋肉浪費を予防する可能性があることを示していた一方、近年発見されている事実はこれらの化合物が加齢に伴う筋肉の弱体化や委縮を軽減するためにも効果的であることを示している。」

エクササイズは筋肉ロスを予防するためのカギ

最後に重要なことは、エクササイズしない限り加齢に伴う筋肉ロスを予防することはほぼ不可能ではなくても困難です。忍耐トレーニングまたは筋力トレーニングは高齢者にとって欠かせません。アメリカンスポーツ医学大学、全米心臓学会、米国連邦保健社会福祉省(DHHS)はともに一週に少なくとも二日は主要な筋肉群を標的にした筋力アップ活動に取り組むことを推奨しています。

不可避の運命ではない筋肉の委縮

筋肉ロスは加齢に関連する自然な影響であり、宿命ではありません。健康で活発な60歳は30歳の筋肉量を持つことが可能ですが、座ってばかりいて主に加工食品を食べ、インスリン抵抗性や糖尿病がある中年の場合、筋肉の質は70歳に相当する場合もあります...

本物の自然食品を食べ、活発でいることがインスリン抵抗性を予防するので重要です。活発でい続けることに関しては座ることを極力避け、耐久エクササイズに必ず取り組むことです。

筋肉を付けるのによい戦略としては高強度エクササイズを絶食しながら行い、その後で高品質の乳漿たんぱく質を食べ、筋肉が回復するための栄養素を与えることです。

こうしたプログラムを開始できないほど高齢の方にも望みはあります。上のビデオのような座ったままでできる筋力エクササイズから始めて、だんだんと運動量を増やします。大きく改善するために70代でも80代でも決して遅すぎません。