Dr. Mercolaより
痴呆自体は病気とは違い、むしろ記憶力、思考、行動、日常生活の支障に影響する様々な脳疾患を言い表した用語です。
最もよく見られる痴呆はアルツハイマー病であり、痴呆の60~80%がこれです。
痴呆は記憶喪失 — これこそ赤信号 — とよく関連づけられますが、全ての記憶障害がアルツハイマー病に起因するとは限りません(さらに記憶喪失のような痴呆に似ている症状は甲状腺の問題やビタミン欠乏などを逆転させ回復も可能)。
ご自分や大切な方が物忘れがひどくなったり思考能力の衰えを感じたら、すぐにヘルスケアプロバイダーに相談することです。
しかし初期症状ははっきりわからないので見過ごされやすく — 記憶の問題が如実になるよりずっと前から行動や気分の変化が表れます。
記憶と思考の支障がはっきりわかるようになる前に、痴呆は気分や行動の変化となって表れる傾向があると、神経精神医学者とアルツハイマー病専門家のチームが見なしており、このうち後者の症状こそ痴呆の最も早期の兆候ではないかと見ています。
トロントで開催された2016年のアルツハイマー病協会国際会議(AAIC)で、そのチームは34個のチェックリストを発表し、チームが考えるところによると軽度行動障害(MBI)という新たな異常の診断に利用しうるそうです。
たいていの日常生活機能にまだ影響しない程度の認知力の顕著な衰えとして定義される、軽度認知障害(MCI)と同様に、MBIは、MCIより前に起きる行動や気分の変化、痴呆関連の認知力の衰えを言い表しています。
そのチェックリストは早めに痴呆リスクのある患者を特定することを目的としており、チームメンバーでカルガリー大学神経精神医学者のDr.ザヒヌール・イスマイル氏によると、MCIの人の中から気分や行動の変化が生じた人が速く痴呆にまで悪化するようです。
そのチェックリストが過剰診断や誤診につながるおそれがあり、一部の人に無駄な医学的検査が行われ不要な心配をさせるのではないかという懸念を持つ人もいます。
例えばMCIの症例においては、診断された人が皆アルツハイマー病やその他の種類の痴呆にまで悪化するとは限りません。実際にTimes紙の報道によるとMCIの人の最大20%が後に正常な認知力に戻るそうです。
さらに、異常行動や人格の変化がないか注意し続けることで少なくとも早期の症状軽減といった手助けにはなるという人たちもいます。アルツハイマー病は悲しいことに当面治癒しない病気なので悪化に伴い診断された本人や身内、友人にもひどい体験になります。
痴呆は人によって発現のしかたが異なるので、大切な人にしては変わった点に注意することが最も重要であるのはこのためです。例えば、誕生日にはあなたのために特定の料理をするとか夕方のニュースを見るといったような、いつも行うのが好きなことを行わなくなったことが挙げられます。
無気力もよくある兆候のひとつですが、人によっては突然性的にやらしくなったり他の人のお皿から食べ物を取ってしまうといったもっと甚だしい変化が起きる場合もあります。
この病気の早期には苛立ち、不安、うつ状態も起きやすくなります。実際にNeurology誌に掲載されたある研究が、痴呆に至った人は人生のもっと早い時期にうつ状態を起こす傾向が高いこと、その一方一貫したパターンで気分の変動も起きていることを発見しました。
早期の気分や行動の変化をMBIであると見極めるには行動の変化が少なくとも半年以上継続することが前提です
人によっては早期の気分や行動の変化の後にMCIが続くことがあります。MCIは軽度の認知力悪化ですが、アルツハイマー病を含む重篤な痴呆のリスクを高めます(確かにそうとは限りません)。65歳以上の人の最大20%は MCIになっていると推定されています。
ときどき鍵の置き場所を間違える程度は警戒信号にはなりませんが、アポ、会話の内容、最近の出来事など普通なら思い出せるはずの重要な情報を忘れる場合は兆候であるといえます。
確実な意思決定を行う、ある作業を終えるために必要な手順の把握、そのための所要時間見積なども無理になっていく場合があります。
MCIと診断された方は、症例によっては進行せず、治ることさえありえることを念頭に置いてください。日常の運動、適正な食生活、精神的、社会的に刺激を受ける活動に取り組むことが「脳力」を高めることになります。
アルツハイマー病協会はアルツハイマー病等の痴呆の症状と典型的な加齢による変化の見分け方もまとめました:
判断力低下、意思決定力低下
ときどきある判断ミス
予算管理不能
毎月の支払いを忘れる
日付や季節を忘れる
曜日を忘れ、後で思い出す
会話が困難
使うべき単語を忘れる
物の置き場所を間違えたり、見つけるための手順を逆に思い出していけない
時々物を失くす
アルツハイマー病協会によると、以下のリストのうち少なくとも2項目の主要な精神的機能が支障をきたせば痴呆であるとみなせるようです:
心の中に懸念や疑義の兆候が湧くほどもの忘れが頻繁になったり、異常な気分や行動の変化に気が付いた場合、方策を講じるべき時です。
ケトン系食生活という脂肪中心で適度なたんぱく質に僅かな炭水化物を摂る食事習慣は脳の健康を保護するために欠かせず、ほぼ誰にもお勧めの生活ですが、特に脳の健康に懸念がある人には推奨されます。この食生活はでんぷん以外の野菜の炭水化物以外はすべて食べず、その分を高品質たんぱく質と有益な脂肪を多く摂る食生活に切り替えます。
これで体重を最適化し、脳を保護しつつ慢性的委縮性の疾患リスクを軽減するのに役立ちます。この食生活なら炭水化物を燃やすモードから脂肪を燃やすモードに切り替え、これが身体にケトンを生産するように(ケトン体やケト酸)させます。
ケトンは脳に栄養を与え、脳の萎縮を予防します。この食生活なら損傷が始まってからでも脳内のニューロンや神経機能を復元および更新します。ケトン性食生活に加え、ケトンの主要摂取源はココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪トリグリセリド類(MCT)です。
砂糖や精製果糖を避ける。理想的には、砂糖の消費量を最小限にし、果糖の一日合計摂取量を25グラム以下にし、インスリン/レプチン耐性や関連障害があれば一日15グラム以下に抑えてください。
グルテンとカゼインを避ける(主に麦、滅菌乳製品。バターなどの乳製品脂肪を除く)。グルテンは腸が漏れやすくなり、このためたんぱく質が本来あってはならないのに血流に流れ込みます。これが次に免疫系を敏感にし、炎症や自己免疫性を発症さえ、これらは両者ともアルツハイマー病の発現に一役買っています。
発酵食品を日常食べたり、効能が高い高品質プロバイオティクスサプリメントを定期的に取ることで腸内細菌叢を最適にしてください。
動物性オメガ3を含む健康な脂肪をもっと消費すること。健康な脂肪の摂取源にはアボカド、草で育てた生の有機牛乳から作るバター、有機の草地で育てた鶏卵の黄身、ココナッツやココナッツオイル、生のナッツ類、生の乳製品、草で育てた肉や鶏肉が含まれます。動物性オメガ3脂肪も十分に摂るように注意してください。
オメガ3脂肪EPAやDHAを多く摂るとアルツハイマー病に起因する細胞破壊を防止でき、病気の進行を遅延させ、障害発生リスクを下げることになります。
カロリー消費全体を減らしたり間歇的絶食を行う。ケトンは炭水化物をココナッツオイルやその他健康な脂肪源に置き換えると活性化されます。間歇的断食は脂肪をいかに燃やせばよいか、さらにアルツハイマー病の主な寄与要因でもある、インスリン/レプチン抵抗性を修復する方法を肉体が覚え始める、強力な起爆剤になります。
マグネシムをもっと取る。アルツハイマー病の症状軽減が脳内のマグネシウム濃度増加と深く関連することを示唆する、説得力ある初期研究が存在します。
残念ながら、ほとんどのマグネシウムサプリメントは血液脳関門を通過しませんが、トレオン酸マグネシウムはこの異常の処置に今後役立ちそうであり、他の形態のマグネシウム化合物より優れているようです。
葉酸が豊富な高栄養価の食事をする。野菜は疑いもなく葉酸の最適な形態であり、毎日多くの新鮮野菜を誰でも食べなければなりません。葉酸の劣等合成品バージョンの葉酸サプリを避けてください。
運動。運動するればタンパク質PGC-1α濃度も増加します。研究によると、アルツハイマー病患者は脳内のPGC-1αが低下していること、このタンパク質をより多く含む細胞がアルツハイマー病に関連する毒性アミロイドタンパク質をより少なく生産することもわかっています。
安全な日光浴でビタミン。D濃度を最適化する。アルツハイマー病患者のビタミンD濃度と認知力テストの成績が悪いことの間に相関関係があることは判明されました。
研究者の考えるところによると、ビタミンD濃度が最適なら、脳内の重要な化学物質の量が増える可能性があり、損傷したニューロンを回復させる際にグリア細胞の効果を増進して脳細胞を保護します。
ビタミンDもその抗炎症作用と免疫促進特性によりアルツハイマー病に対する有益な効果があるようです。免疫系がアルツハイマー病に関連する炎症と闘うためには50~70ng/mLというじゅうぶんなビタミンDは欠かせません。
水銀を回避し体から解消する。重量比で50%が水銀の歯の詰め物アマルガムは主要な重金属毒性源の一つです。しかしこの詰め物を取り去る前に健康になることが必要です。
私の栄養摂取計画に説明されている食事を続けられるようになったら、水銀解毒処置要領を開始して、次に歯科医にアマルガムを取外してもらいましょう。
アルミニウムを避け体から解消する。アルミニウム源にはデオドラント(発汗防止剤)、焦げない調理器具、ワクチン免疫賦活剤を挙げることができます。
インフルエンザワクチンを回避する:ワクチンの多くは神経毒性、免疫毒性物質である水銀とアルミニウムが含有されています。
抗コリン薬やスタチン薬を回避する。神経系伝達物質であるアセチルコリン阻害薬は痴呆リスクを高めることが証明されています。こうした薬物には睡眠中の鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、睡眠薬、特定の抗うつ薬、失禁抑制剤、特定の麻薬系鎮痛薬が含まれます。
スタチン薬はコレステロール合成を阻止し、脳から補酵素Q10や神経伝達前駆物質を枯渇させ、脳が必要な適量の必須アミノ酸と油溶性抗酸化物質が供給されなくします。これは不可欠な低密度リポタンパク質という担体である生体分子の生産を阻止するからです。
毎日心に課題を与える。特に何か新しいことを学ぶ(楽器とか言語)等精神的な刺激は認知症やアルツハイマー病のリスクを下げます。脳を作り上げるのに役立つ精神的課題/チャレンジがアルツハイマー病関連の障害を防ぐ傾向があると研究者らは考えています。
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