Dr. Mercolaより
様々なタンパク質や酵素の基幹要素である鉄は人間が生きるために欠かせず、 酸素輸送や細胞成長の調節、細胞分裂のために必要なことが特に挙げられます。
鉄の最も重要な機能の1つはヘモグロビン(赤血球細胞内のタンパク質)を供給することで、このメカニズムいよって鉄が酸素と結合して組織全体に通い、細胞に正常な酸素を供給することにより細胞死を防ぎます。
鉄が欠乏していると、倦怠感、免疫力減退、鉄欠乏による貧血が発生することがあり、放っておくと重篤になりかねません。この欠乏は子供や閉経期直前の女性によく起きます。
しかし多くの人が気づいていない事実として、鉄が過剰でも死に至るほど重大になることがあり、実際には鉄欠乏より頻繁に見られます。これはヘモクロマトーシスとして知られる遺伝病によるものです。
この検査のおかげで私の父は20年前に私がフェリチン濃度が1000にも及んでいることを発見したので命を救われました。父はβ型地中海貧血であったためです。
定期的な治療的採血により父の鉄濃度は正常になり、現在ある副作用は唯一、1 型糖尿病です。鉄が高濃度なためにランゲルハンス島細胞が損傷し、現在父は「ブロンズ」糖尿病というのにかかっており、インスリン投与を受けています。
私にも遺伝しているのでこれは私自身の問題です。私は鉄の濃度を毎年約1L輸血することにより正常に維持することができているのは幸いです。ただ一回でよくなるというものでもなく、数十ミリリットルずつを重ねていくに従い除去されます。
自分の患者全員のフェリチン濃度をスクリーニングしたところ、約1/4の人では高濃度になっていることがわかりました。そこであなたご自身やご家族全員がフェリチン濃度の検査を毎年一回行うようにお勧めします。治療するより鉄過負荷を予防するほうがはるかに容易だからです。
血清フェリチン検査という簡素な血液検査だけでできるので鉄の濃度検査は簡単です。鉄の濃度検査は予防的、先取的健康のためのスクリーニングの一部として定期的に誰でも行うべき最も重要な検査の1つではないかと私は信じています。
この検査はフェリチンといつ細胞内にある鉄担体タンパク質分子を測定します。この分子に鉄が含まれます。フェリチン濃度が低いと鉄の濃度も低いことを意味します。
正常な血清フェリチン濃度は20~80 ng/mlです。20未満なら鉄欠乏を表し、80を超えていれば鉄が過剰にあることを意味します。40~60 ng/mlが最適です。
100を超すほど数値が高ければ鉄過負荷は悪化しており、濃度が300超なら毒性があり、これほどの濃度が長期的に継続している人ならだれでも重篤な障害に及びます。
身体に鉄を排出する能力があなたの身体に不足しているために濃度が高いのかを知ることが重要です。その場合は鉄が肝臓、心臓、膵臓などの器官に堆積しやすくなります。鉄は強力な酸化物質なので、この状況は危険であり、次のような異常を含む重篤な健康の害につながるほど組織が損傷することもあります:
肝硬変
肝がん
不整脈
1型糖尿病
アルツハイマー病
細菌やウィルス感染
がん研究者らは鉄濃度が高いと大腸がん発生率が2~3倍高いことを示す新たな根拠も発見しました。
健康な状態より多くの鉄が蓄積するのはヘモクロマトーシス患者に限ったことではありません。閉経期前の女性に定期的に生理がある場合はめったに鉄過負荷を受けることはありませんが、たいていの成人男性や閉経後の女性は毎月血液が排出されないのでリスクが高い傾向があります(余分な鉄を排出する最もよい方法の1つは輸血です)。
鉄過剰のもう一つのよくある原因はアルコール消費であり、呑むと食事の中の鉄が吸収されやすくなるからです。例えば、ステーキにワインを飲むと必要以上の鉄が吸収されやすくなります。鉄高濃度の別の潜在的原因には次のようなものがあります:
とりわけスタチン薬について調べた結果、鉄がいかに炎症を促進するかについて貴重な情報はすでに得られています。当然のことながらスタチンはコレストロール剤です。スタチンは酸化ストレスを軽減することで体内の抗炎症効果があり、 この点は制約会社が開示しない傾向になることです。
スタチン剤が炎症を軽減し、 C反応性タンパク質等の炎症マーカーを削減することからして、スタチンが一部の 人に関しては心臓発作を軽減する理由になっているようです。このメリットはコレストロール削減作用と関係性がありませんが、むしろ炎症の軽減と関連しています。
American Journal of Public Health2013年4月号に掲載されているある研究の研究者らはスタチンが過剰な鉄の堆積による炎症促進効果を少なくとも部分的に打ち消すことで、心臓血管への結果が改善することを発見しました。この研究では、改善した結果はフェリチン濃度の低下に関連しており、脂質レベルの「改善」とは関連していませんでした。
研究者らは鉄の削減がスタチンに代わる安全でコスト安な手段ではないかと結論していました。それより以前にAmerican Heart Journalに掲載された別の研究も鉄負荷が低い人は心臓発作や脳卒中のリスクが低いことを示していました。
これらの研究は数年前私が世界最先端の自然心臓療法医学者Dr.スティーブン・シナトラ氏から数年前に知りえたことを裏付けるもので、スタチンの持つ唯一の健康的効能とは炎症軽減であることです。
このことは心臓発作の死亡率が極めて高いごく僅かな人々には役立つでしょうが、コレステロール濃度が高いだけの人にはメリットがありません。スタチン薬剤はどこでも過剰に処方されており、多くの方がリスクを負わされるほどに価値がないものです。症例によっては脳卒中リスクを実際に高めるようです。
鉄濃度が高いと炎症や心臓血管病を促進するのであれば、 鉄の濃度を単に下げることにして多くの副作用を伴うスタチン剤を摂らないようにするほうがはるかに有意義です。
鉄の濃度が高いまたはヘモクロマトーシスであることがわかった方にとってよい点としては、この異常は比較的容易に治せることです。フィチン酸やIP6等の鉄キレートを使用するよう勧める人もいますが、私は父にこれを試した結果、全く役立たなかったので、お勧めできません。
輸血ははるかに安全でより効果的かつ安価な方法です。
同時にサプリメント、飲料水(井戸水)、鉄調理器具、強化加工食品から過剰な鉄を消費しないようにすべきです。
さらにこのように説明されています:
米国では最も多く生じている遺伝病の1つであるヘモクロマトーシスの起源と経緯については多くの理論や推論が存在しますが、真の発生過程はいまだ複雑な神秘に閉ざされています。
近年The Atlanticに掲載されたこのテーマについての素晴らしい記事が大部分のヘモクロマトーシス症例の原因であるC282Y遺伝子突然変異因子を遺伝的に持つ人は誰でも同一人物まで遡るという推論を取り上げました。言い換えると、1人のはるか昔の祖先がこの突然変異を遺伝させ、現代では北欧系の人に多くみられます。
この創始者が精確に誰かは誰も解明していませんが、アイルランド系の人であったという初期の推論をもとに、もともとバイキング文明で発生したか、以前に、中欧の狩猟採集民族に由来しているという可能性が出てきました。
この疾患が起きる(起きたとしても僅かの人しか発症しない)には、突然変異の遺伝される2個のコピー(父母から1つずつ)が必要です。
突然変異因子が1個だけしかなければこの異常は発生しませんが、他の人より若干は余計に鉄を吸収するので、この体質が食事から鉄が欠乏していたときには有利に機能したようです。
ヘモクロマトーシス突然変異因子が人類が狩猟採集から農耕へ移行していった時代に古代欧州で広がったという推論があります。
「洞窟人」の古人類食生活はそうするしかなかったがために比較的バランスの取れた、鉄が豊富な肉食、魚や植物からの食物を含んでいたのとは異なり、農耕によって人類は穀類の過剰な炭水化物に依存するようになったようです。
今回取り上げた記事は以下のように説明しています:
「化石からわかることは古代欧州の農耕民族は狩猟採集していた祖先より約15cm背が低く、これは栄養失調を表しているのではないかとみられる。貧血にともなう骨の感染症、虫歯、頭蓋骨奇形が増えるに伴い、平均身長と寿命が縮んだ。
正確な古人類の食事内容については意見が分かれるが、欧州の狩猟採集民族は現代の農耕によるより多くの肉を食していたことにはほぼ意見が一致している。また、この動物性たんぱく質はよく知られる微量栄養素の1種である鉄の優れる摂取源であった。
世界保健機構(WHO)の推定では世界で約16憶人が現在赤血球細胞の欠乏すなわち貧血に罹っており -- その半数は鉄欠乏が原因であるようだ。鉄欠乏の蔓延が新石器時代に炭水化物偏重の食事が肉や魚を中心とした食生活を置き換えた頃に始まったかいなかについては自分の中の古人類が推測するしかないようである。
貧血は血液の酸素輸送機能を弱くし、重篤な発症があれば、貧血で人が健康でい続け、食品を見つけ、生殖する能力を阻害する。C282Y突然変異因子 は鉄の吸収を促し、予想外にもこの因子を持つ人を貧血の脅威から保護したようである。」
もう1つ複雑な理論が示すところによると、ヘモクロマトーシス突然変異因子が14世紀のペスト蔓延から保護した可能性があります。この突然変異によってYersinia pestis bacteria が人間の免疫細胞の中で複製できなくなったからです。
今回取り上げた記事が、「黒死病の時代にイギリス諸島で死亡率が50~66%と最高であったが、ここがその後の遺伝性ヘモクロマトーシスの温床であった。 このような最も敵対的な環境の中でDNAの相違が生存と死を分けたようである。
遺伝的優位性は島の住民に迅速に広まった -- 黒死病による死亡率が低いとみられる本島ではさほど多くはなかったようである」 と説明しています。
しかしこの理屈は、ペスト菌が宿主から鉄を利用して細胞を感染させる能力を促進することを示した対立する情報からは疑問視されています。
従ってヘモクロマトーシスの人はペスト感染で最も死にやすい状況にあり、このととは突然変異因子が生存と関係していないことを示します。おそらく自然淘汰の結果であるか全く異なる説明が存在するのかもしれません…
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