メラトニンでよくなるうつ状態、自己免疫性疾患とがん

メラトニン

早分かり -

  • 日光に当たらないことに加え夜遅くまで人工の照明下にいることで生物時計が狂い、このためメラトニン生産を阻害し、がんリスクが高まるなど多くの重篤な健康への影響が出てきます
  • 春や夏の多発性硬化症の再発は - これがビタミンD濃度が高いことにより起きなくなる傾向があるとはいえ、それでもまだ発症しうるもの - メラトニン濃度の低下と関連しています
文字サイズ:

Dr. Mercolaより

ホルモンのメラトニンは健康のために重要な多くの機能があります。これにはよりよく寝れることから免疫系の強化、老化の遅延、偏頭痛を起きにくくする、骨質量の保護、がん予防など多岐に渡ります。

日光に当たらないことに加え夜遅くまで人工の照明下にいることで生物時計が狂い、このためメラトニン生産を阻害し、多くの重篤な健康への影響が出てきます。

実際にメラトニンは100種類以上の疾患用途について臨床前研究のテーマに取り上げられてきており、その用途の多くが睡眠の重要性と結びついています。

睡眠のためだけではないメラトニン

中枢生物時計は脳の視交叉上核 (SCN)という視床下部の一部をなす部位に存在します。光と闇の信号を受けるとSCNは松果腺にメラトニンを分泌する時間であるかそれを止める時間であるかの信号を送ります。

科学研究でメラトニンのサプリメント寝つきがよくなり、睡眠し続けることができるようにすること、落着かせ、日中の倦怠感を予防することがわかっています。

このサプリメントは極めて微量で足りることを覚えておいてください。初めは0.25 mgか 0.5 mgだけにしてだんだん増やしていくのがよいでしょう。3 mgほどの用量になると眠たくならずむしろ余計目が覚めてしまうので、緩和にしておき必要に応じ用量を増やしていきます。

メラトニンは多くの時間帯を飛び越える長距離旅行の時差ボケを軽減することもわかっています。最近の研究によるとよい睡眠の妨害になりやすい湿疹を持つ子供はメラトニンサプリでより寝つきがよくなることもわかっています。

興味深い点として、メラトニンは湿疹の重度を軽減すること、すなわち抗炎症性があることも示されています。しかし、メラトニンの効能は睡眠のほかにもあります。ここで取り上げる3つの分野は、抑うつ状態、多発性硬化症、がんです。

概日リズムシステムの正常化で抑うつ症状を軽減できる

メラトニン濃度は光と闇に反比例して増減し、肉体的健康も精神面の健康もこの光と闇のリズムと深く結びついています。日暮れには、メラトニン・レベルが増加し、太陽が沈み始めると、なぜか疲れを感じはじめたということがあるかもしれません。

これとは逆に、テレビや電子機器の画面から出る青系の光などの明るい人工照明に夜間当たると、メラトニン濃度が落ち込むので寝つきが悪くなります。

上のビデオでご説明しているように、夜間起きているときに光に当たるのも問題です。しかし、赤やオレンジの波長はメラトニン生産を抑制しないので、慌てる必要はありません。

夜間トイレに起きるときは赤い光を使えばよいのです。寝室に時計があれば、赤LED表示のものであるかを見直してください。青はメラトニンを最も効果的にシャットダウンするので最悪です。

冬の悲しみブルース

季節性感情障害 (SAD、「冬のブルース」)は日光に当たらないことと関連しており、科学者らは一般的に全スペクトル領域の光セラピーのほうがSSRI(プロザックやゾロフト等)薬より優れるとしてこうした異常に勧めています。

興味深い点としては、最近のある研究は光セラピーが重篤なうつ病にも効くこと、中度から重篤なうつ病患者に対してプロザックより効くことを示しています。それほどメラトニンがよい理由の一つは明るい光が生物時計すなわち概日リズムをリセットするのに関与していることと関わっていることです。

メラトニンサプリメントもある程度まではこの効果がありますが、日中明るい光に当たることほどには効果はありません。光はまた、神経伝達物質の機能を調節することで抗うつ効果があります。

光セラピー — プロザックより効果的

ここで取り上げた研究は光セラピーのみと抗うつ剤フルオクセチン(プロザック)の併用による効果を比較しました。

8週間の検査に19~ 60歳の中度から重篤なうつ病と診断された成人122人が参加しました。

参加者を次の投与内容別に4つのグループに分けました:

  • 光セラピー(10,000ルクスのカレックスブランド日中光装置を使用した古典的な、起床時に毎日30分)と偽薬
  • プロザック (20 mg/日)とプラセボとしての光源に使用した不活性化イオン発生装置の併用
  • 光セラピーとプロザック
  • プラセボ発酵装置と偽薬(対照群)

その研究結果は、光セラピーとプロザックの併用が最も効果的でしたが — 光セラピーのみは微差で2位、次が偽薬グループでした。.

その通りで、薬剤による処置が最も効果がなく、偽薬よりも効果がなかったのです!研究の最後に以下のような回復がありました:

  • プロザックのみのグループは19%より少し多いだけ
  • 偽薬グループでは30%
  • 光セラピーのみのグループではほぼ44%
  • 能動的な併用グループではほぼ59%

がんと闘うメラトニンの機能

がんはメラトニンが主役を演じるもう一つの分野です。放射線治療の有害な影響から保護するのにも役立つので、がん治療のためにメラトニンが重要な要素でもあるという証拠があります。全身の細胞は — がん細胞でさえ — メラトニン受容体があり、メラトニンは本質的にまた単体だけでお細胞毒性がああり、腫瘍細胞の自己死(アポプトーシス)を促します。そのメリットは他にもあります:

  • インターロイキン-2等の免疫最適化物質の生産増加、この物質は悪性がんにつながる突然変異細胞を識別して攻撃するのに役立つ
  • がん転移の現象である新生腫瘍血管(腫瘍血管新生)の阻害
  • 腫瘍の成長を阻害するサイトキン系の活性化によって遅延さえ、マクロファージと単球の細胞毒性活性を促すことによってがんの進行を遅延させる
  • メラトニンの抗酸化活性によって DNAへの酸化性損傷も制限する
  • エストロゲンに対抗して腫瘍の成長を阻害する(夜間にメラトニン生産がピークに達すると細胞分裂が鈍化する。メラトニンが乳がん細胞と結合すると、エストロゲンの細胞成長促進特性を阻害することが発見されている)

メラトニンはエストロゲン以外にも性ホルモンを抑制する効果があり、これは性ホルモンにより促されるがんに対して最も効果的に保護する理由の説明要因となっています。これらの疾患には卵巣がん、子宮内膜がん、前立腺がん、精巣がん、乳がんを含め、このうち後者は科学研究が最も多く行われています。

乳がんに関するメラトニンの研究には次のようなものがあります:

  • Epidemiology誌は夜間シフト勤務の女性ほど乳がんのリスクが高いと報告していました
  • 近隣の夜間照明が多い場所に住む女性は夜間に闇が覆う地区に住む女性より乳がんになりやすいことをあるイスラエルの研究が発見しました
  • Nurses' Health Studyの参加者からは、夜間勤務の看護婦が乳がんになる確率は36%高いことが判明しました
  • 光を検知できないのでメラトニンをしっかり生産できる盲目の婦人は平均未満の乳がん発生率でした
  • 疫学調査の被験者全体について評価したとき、食生活の相違等他の要因を考慮しても、夜間シフト勤務の婦人は通常勤務者より乳がん発生率が60%高いことが判明しました。

メラトニンが肺がん患者をよくする

他のがんにもメリットがあります。2004年に寿命延長財団(Life Extension Foundation)は米国ガン治療センターとメラトニンの肺がん患者への効果を評価した初の臨床検査を協力して実施しました。

2014年全米臨床がん科学学会に合わせて出版されたその研究結果は、メラトニンを夜間に投与した人のうち29%を僅かに上回る部分が腫瘍に応答しており、 朝投与した人では8%を若干下回る程度、偽薬グループでは10.5%の応答率に対して対照的なものでした。

Life Extension Magazineが次のように報告しています:

「欧州の臨床検査では転移性非小細胞肺がん患者において、5年生存率と全体的な腫瘍退化率はメラトニンを併用した患者のほうが化学療法のみの患者より高かった。

化学療法で処置された患者は2年後に生存率ゼロだったが、化学療法とメラトニン投与で処置した49名の患者のうち3名は5年後生存していた。

研究者らは、同様に有望な結果があれば主流の医者が初期がんの治療において、標準的ながん治療にメラトニン投与を併用することに確信できるものと期待している。」

体内時計の同期に欠かせない光と闇

メラトニンの生産は闇によって刺激され、光によって抑制されるので、就寝前にその濃度が最も高いのはこのためです。この完璧に調和のとれたシステムによって、日没になると眠くなり、日の出とともにリフレッシュして目が覚めるようになっており、同時に潜在的に老化防止や疾病予防効果も伴っています。

メラトニンが生産されていないために寝つきが悪い場合、就寝の遅くとも1時間前までに照明を消し、全くの闇の中で寝るようにお勧めします。また、テレビを見ないこと、コンピュータその他の電子機器は就寝の遅くとも1時間前までには使用をやめることもお勧めします。

暗くなってからも仕事しているとこれら全ての機器は青系の光を放つので、メラトニンが減ります。従ってこうした機器類を日没後はオフにするのが最適です。それでも使用する必要があれば、青の波長をフィルターする黄色い眼鏡をかけるかf.luxなどのフリーウェアをご使用になるとよいです。.

夜間の室内照明にはメラトニン生産を抑制する青ではなく琥珀系の光を放つ「青が少ない」電球を使用しましょう。同様に重要な要因としては日中当たる光の質があります。日中十分な日光に当たらないと、概日リズム時計が狂いだします。

大部分の白熱電球や蛍光灯の光は質が劣悪です。身体の最適な機能のためには屋外で当たる全スペクトル領域の光が必要ですが、この健康な光を活用できるほど私たちの多くは屋外で過ごしていません。

自宅やオフィスで全スペクトル領域の光を使用するとこの高品質の日光に日中当たれない欠乏を改善するのに少しは役立ちますが、日光に代わるものはありません。そこで努力して少なくとも30~60分は毎日最も明るい時間帯(日中前後)に屋外へ出るようにしてください。このようにすると概日時計を「セット」するのを助け、よく眠れるようになります。

最適な健康にはよい睡眠が不可欠

概日リズムが狂うと、身体のメラトニン生産が減るので、がん予防の潜在力が減り、フリーラジカルからの保護も弱まり、これが老化や病気を促します。

ご自分の睡眠習慣を変えても寝つきがよくない場合、高品質のメラトニンサプリメントが役立つでしょう。

毎夜体内で生産され分泌されるメラトニンの量は年齢によって異なります。通常子供のほうが成人よりはるかにメラトニンが多く、年を経るにつれて減少していきます。このため一部の高齢者のためにはメラトニン.を補給するとメリットがあります。

夜間シフト勤務者、頻繁に出張する人や時差ボケがある人にも同じことがいえており、対策をとらないとストレスその他の理由でその都度不眠に襲われることになります。最初は0.25 mg 0.5 mgだけにして、だんだん必要に応じて増やしていくのがよいでしょう。サプリでむしろ目が覚めた場合は、用量が多すぎるので減らしてください。