Dr. Mercolaより
腸脛靱帯とは何かをランダムに歩行者に訊けばたいていの人は知らないでしょう。IT (腸脛靱帯の英語iliotibialの略)帯が筋肉ではないかと思う人もいるでしょうが、その場合はかなり当たっています。
これは実際には臀部からすねまで脚の外側に沿う結合組織あるいは筋膜組織なのです。腸脛靱帯症候群による痛み(ITBSということもある)は膝の上の外側に痛みや腫れをともなう筋膜の炎症により起きます。
ランナーがときどき被ることがある怪我の一種ですが、強化したりストレッチくらいしたほうがよいと誤解すれば悪化させるだけです。
実際にはそのどちらも行ってはならず、腸脛靱帯は筋肉を囲む内部の網目状組織と同様にとても強く、筋肉のように柔軟ではなく、その周囲の筋肉は伸ばせます。
週末だけの運動家は一週間を一貫して運動せず二三日で費やすためにエネルギーを貯めておくので、こうした怪我を負う傾向があります。
この異常の予防は運動を少なくとも数日に分散して行うことで可能であり、6日間運動を全くせず、ヘッドバンドやリストバンドをして外へいざ出るというのではできません。
医療従事者の中には股関節痛や大腿部の痛みをITBSであると誤診することがありますが、Pain Scienceの説明によると「膝以外のITBSというのは存在しない。この痛みは膝の脇にしか起きない」」そうです。ITBSの起き方は具体的にいうとこうなります:
この怪我がそれほど明確に特定しうる理由は痛みに係る解剖学的見地からして特定組織に関しているからで、脚の他の部位に起きる痛みは別の痛みであり、特定しにくいものなのです。
筋肉の凝りが筋膜上の発痛点となり若い人に特に発生する傾向があるしばしば関節炎と思われている、通常は筋肉から始まりやすい股関節痛や大腿部の痛みです。
X線を見て関節炎であっても痛みはない一方、股関節の痛むたいていの人の場合、関節炎ではないことに診断上の問題があります。
股関節痛は発痛点や筋肉の凝りに起因していることが多いと別の研究が指摘しています。深くて治まらない痛みを伴い、上臀部から拡散するような筋肉痛は熱やマッサージで和らぎますが、腿や背中、臀部全体に広がることもあります。
腸脛靱帯の緊張が他の合併症と合わさって問題を生じさせている可能性もあります。
Pain Scienceによると真性ITBSと診断するには一点の痛みであることが条件なので、「ほぼ」側面または膝の脇に起きる膝の痛みがITBSではない可能性が高いそうです。
膝の痛みは数か所で起きる多くの種類があるので、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)として多くの可能性をひっくるめた「バケット」方式の診断で片付けられてしまうかもしれませんが、こちらのほうは常に膝の前面に発生します。
ITBSとPFPSの相違は繰り返しになりますが、後者が前側で、前者が膝のわきで膝頭の少し上で発生します。
腸脛靱帯症候群ではないかと思う痛みを感じたら、まず衝撃を伴う運動やランニング、サイクリング、スイミング等の運動を止め、止めたことで軽減するか経過を観察し、もし痛みが引くなら、運動をだんだんと始めることです。
してはいけないことはその痛みを無視することで、他の筋肉同様に運動させるほど悪化させます。医者の検診を受け、腸脛靱帯が実際に凝り過ぎていないかを診てもらい、処置についてアドバイスを受けてください。
以下にご紹介するいくつかの癒し運動で痛む筋膜周囲の筋肉を強化すると同時に、弛緩もさせ、組織からストレスを若干でも軽減させるのに役立つでしょう。
1. ステップダウン運動はときどき強くない場合がある大臀筋が充分に強くないと臀部を水平に維持できないので効果があります。腸脛靱帯がプレッシャーを受け、このため炎症、疼痛、凝りにつながります。高さ約5cmの台(厚手の本程度)を使い、これより高いと大殿側筋に効果がなくより強い中央の筋肉に仕事をさせる結果になるのでなるのでこれより高くせず行います。
台に片足を上げ、片方の足をそっとタップします。次に台にこの足を上げ、踏んでいる足と並べますが、支持している足に体重を掛けたままにします。片側15回ずつ繰り返し、2秒ほどタップして足を降ろし、次の2秒ほどでタップして足をまた台に上げます。他の脚も同様に繰り返し、また最初の脚に戻り、合計15セットずつ行います。
2. 片脚バランス(方法A) は全ての臀筋だけではなく大腿四頭筋の強化にも役立ち、これにより臀部の水平度を達成して腸脛靱帯に過負荷がかからなくなります。
片脚で立ち、他の脚を上げ、自分の前へ伸ばし、足は曲げたままにします。臀部をできる限り水平にしたまま90秒そのまま持ち応えます。反対の脚も繰り返します。静止状態でのバランスをマスターしたら、以上の他にも方法Bを試すこともできます。
3. 片脚スクワット(方法B) も、全ての臀筋を使い、臀部を水平に維持するのによいので効果があり、ランニングのフォームがよくなり、腸脛靱帯へのストレスも軽くなります。
高さ約45~60cmのベンチや箱、その他腰掛けを使います。この前に背中を向けて立ちます。片脚をまっすぐるにして約45cm前へ旋回し、ゆっくりとしゃがんでいきますが、実際には腰掛けず、片足で全体重を受けます。伸ばした足を上げたままにして、足を3秒曲げます。さらに3秒で元の姿勢に戻ります。片脚ずつ15回これを繰り返します。
4. ラテラル大腿四頭筋ロールは腸脛靱帯はあまり柔軟でない反面、筋肉その他の組織は柔軟なので効果があります。外側広筋すなわち大腿四頭筋の側面を深くマッサージして解します。
最適なのは筋肉の発痛点に「食い込む」ように設計されているバンピーフォームローラーを使い、この上に両腕を脇に伸ばした状態で側面を乗せ、ローラーは乗せている脚の骨盤のすぐ下にした状態です。上になっている足を片方の足の傍で支えるか上の側の膝を曲げて足を体の前でフロアに着け姿勢を支持します。
下側の足をマットから離し、両腕で支えながらスムーズにフォームローラーの上でゆっくり膝のすぐ上に来るまで腿全体に約30秒転がし、次に逆に転がして元の姿勢まで約30秒で戻ります。
最初は圧痛があったり気持ちよくないかもしれません(実際に痛むなら止める)。痛みのある点まで来たら圧痛が解消するまで深呼吸します。以上を繰り返します。役立つ実演ですのでビデオをごらんください。
坐骨神経痛は通常怪我や筋肉等の酷使が元で起きるよくある神経の異常で、不快なしびれまたはうずき、あるいは坐骨神経が圧迫されるに従い、衰弱させるような苦痛を伴うことがあります。
動作範囲を回復し、筋力をつけ、炎症を抑えるには運動が大切で、特に苦痛を和らげたい場合に重要です。大臀筋、臀部をルンゲス、スクワットその他の動作で日常鍛えると効果があるし、やりがいがあります。
特にテニスプレイヤーの場合は片脚でコートに立ち旋回させる6つの臀筋の中で最も大きい梨状筋を特に傷めやすく、こうした苦痛を経験します。テニススプレイヤーではこの異常が悪化しやすいのはこのためです。幸運なことにActive.comによると「仙骨ひねり」とか「短足症候群」とも呼ぶことができるこの問題を容易に矯正できるそうです。
坐骨神経痛の最善な予防法は梨状筋を梨状筋の筋膜解放運動で元の長さに伸ばすことで、そのためにはピジョンスタティックストレッチや臀部外側のストレッチを行います。これらについては以下に説明します。さらにこのように説明されています:
「長時間の不活発な状態や着座は梨状筋の問題につながります。仕事や学校でほとんど座っているライフスタイルでテニスコートへ飛び出て飛び回っていると、将来的な問題を作り出しているのも同然です。酷使され収縮しときには炎症さえ起きる梨状筋には筋肉の正常な機能を阻害するような痛みの発生点を含みます。」
硬めの太さ約15cmくらいのボール、ラクロスボールかソフトボール(ローラーではだめです)を使って以下の運動をします:
同じようにして別の痛い点を標的にすると解消できます。この運動は日常行うと想像以上にルーチンが楽になっていき、さらに坐骨神経痛がすぐに治ることさえあります。
ハーバード大学で2015年にある興味深い研究が二件実施されました。これは人が足ったり歩くために必要な一連の動きをするときどのように腸脛靱帯(ITB)が動くかを見極めるため、5人の死体を用いたキャロライン・エング氏が行った研究です。
これらの研究はJournal of Biomechanics誌に掲載されました。
エング氏チームは人体での機能の仕方を見るためのコンピュータモデルを作り、次に、チンパンジーと同じ構造をした大腿筋膜張筋の別のモデルを作り、これをJournal of Experimental Biology(実験生物学専門誌)に載せました。Runner's Worldがその研究結果をうまくまとめています:
この研究の著者は、次のように述べました。「この研究は2~5 m/sの速度で走る際の弾性エネルギーを備蓄し解放するITBの能力を評価したもので、そのために人間の下肢の3D筋骨格の幾何学的形状及びITB、大腿筋膜張筋(TFL)、大臀筋(GMax)の力と長さの特性を特徴とするモデルを使用した。」
筋肉及び筋膜の構造、関節の動き方、負荷がかかったときこれらが実際どのように衝撃を受けるかを解析した結果、研究チームはチンパンジーの大腿筋膜張筋と人間の大臀筋に共通する筋肉腱の単位で生成される力が、走っている間に腸脛靱帯を「大幅に」伸ばし、エネルギーを貯めていることを発見しました。
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