妊娠中のビタミンD欠乏で自閉症の子供になるリスクあり

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早分かり -

  • 最近ある研究は妊娠中のビタミンD欠乏が6歳児の自閉症関連の特徴につながることを明らかにしました。欠乏とはビタミンD濃度が25 nmol/L (10 ng/mL)未満になったときを指す
  • 妊娠中に最適量のビタミンDを摂れば早産リスクは半減し、子供の多発性硬化症リスクが下がる
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Dr. Mercolaより

自閉スペクトラム症(ASD)の発生率が過去30年間で激増していますが、専門家はこの発生率が増加し続けると見ています。

米国疾病管理予防センター(CDC)も子供の6人に1人が何らかの発育障害を被っており、これには唖や言語障害からさらに重大な知恵遅れにまで及んでおり、自閉症と脳性小児まひも含みます。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の上席研究科学者ステファニー・セネフ博士(Stephanie Seneff, Ph.D.)によると、現在のトレンドが続けば今後20年以内に生まれる子供の約半数はある種の自閉障害を持つという計算になります。

この見通しの通りになると国が消滅する勘定になります。何らかの先端人工知能なしには国が生き残れなくなり、繁栄はおろか、成人の半数が自閉症になることになります。この流行病的現象の原因は何でしょうか?

ますます多くの研究が示しています。脳障害は一般に投入されている除草剤ラウンドアップを含め、妊娠中も生後も過度に毒素に暴露されている結果です。

腸内細菌叢の損傷とビタミンD欠乏にはその他2つの決定的要因が関わっています。このうち後者について以下でご説明します。

妊娠中のビタミンD欠乏は子供の自閉症リスクにつながる

一時期、ビタミンD欠乏が自閉症の原因ではないかという考えは単なる理屈上の疑惑程度にしか見られていませんでしたが、人の脳にビタミン D受容体が存在することからして、ビタミンDが正常な脳の発達や機能のために重要であることを示しています。

この仮説を実証するためにますます多くの研究が行われ始めています。Molecular Psychiatry(分子精神病学の専門誌)に最近掲載された複数の民族を対象としたコホート研究では妊娠中のビタミンD欠乏は6歳児における自閉症関連の特質発現につながることを明らかにしました。

国際的に媒体を通じて報じられたこの研究は妊娠性のビタミンD欠乏や自閉症または自閉症関連の特質を一般人口の標本から調査した最初の研究です。

重要な二つの検討事項

この研究に参加した全ての母親は2002年4月から2006年1月に出産していました。その子供たちを6歳まで追跡しました。

ビタミンD濃度を妊娠中期(18~25カ月)の母親の血液試料からと出産時にへその緒から採った血液を分析したものです。この研究に関してここでは二点に焦点を当てたいと思います。

1. この研究はビタミンD欠乏を25OHDマーカーで見た場合に濃度が10 ng/mL以下の、すなわち 25 nmol/l未満として定義しました。ビタミンD濃度範囲10~19.96 ng/mL (25~49.9 nmol/L)は不足であると見なされた一方、20 ng/mL (50 nmol/L)以上なら十分と見なされました。

その他先端のビタミンD研究者らは40 ng/mL (100 nmol/L)未満なら不十分で、 20 ng/mL (50 nmol/L) 未満は欠乏していることを示す納得のいく根拠を示しました。

こちらの研究による高い濃度値を採用すると、ASD症状とビタミンDの状態の間にさらに大きい相関性があるという結論に至っていたことでしょう。健康な妊娠と赤ちゃんのためには、ビタミンD濃度は40~60 ng/mL (100~150 nmol/L)を維持するようにしましょう。

2. この研究にいう濃度25OHDは25ヒドロキシビタミンD2と25ヒドロキシビタミンD3の血中濃度の和として定義されたものです。

すなわち、日光に当たること、サプリメント、食事等すべてのビタミンD摂取源を含んでいます。ビタミンD2は日光の照射を受けた植物性で、D3は動物性です。

しかし、ビタミンD濃度を上げることについては、ビタミンD (D3かD2のいずれかとしてであって、このうちD2のほうが大幅に副作用があることはすでにわかっています)を飲むだけでは適度に日光に当たるのと同じメリットは得られないといえる根拠があります。

何らかの理由により一年を通して十分に日光に当たって最適な濃度に上げるか維持できないならば、ビタミンD3のサプリメントは確かにお勧めです。

何も摂らないよりましですが、最適なのは、ビタミンDの全てのメリットは適度に紫外線(UV)に当たり、日焼けしてしまうまで当たり過ぎないように注意することです。

ビタミンDはUVB暴露を表す間接的生体マーカーであり、日光に当たらずにビタミンDを摂って身体をごまかしておくと、重要でまだ発見されていない多くのメカニズムに障害を与えることになります。

私たち研究者が現状で把握している事実は、日光のUVBに当たると、UVBとのバランスを取り、多くの重要な機能がある近赤外線照射が不足することです。

近赤外線照射はミトコンドリアの中のシトクロムCオキシダーゼという酵素を活性化し、多くの重要な機能のなかでもとりわけATPの生産を最適化するのに役立ちます。

ビタミンDが自閉症に影響する理由

生物学者ロンダ・パトリック博士(Rhonda Patrick, Ph.D.)はビタミンDがいかに自閉症に影響しているかについて優れる二つの仮説を提唱した2本の論文を出しました。

ビタミンDが脳の機能(や機能障害)に極めて重要な役割を演じている理由を把握するには、ビタミンDがステロイドホルモンの一種に変換されること(その他のステロイドホルモンにはエストロゲンとテストステロンを含む)を把握することが重要です。

ステロイドホルモンとして、このホルモンは1,000種類以上の生理的プロセスを調節しており、ヒトゲノムの5%以上を制御していると考えられています。体内にビタミンDが十分にあると、全身にあるビタミンD受容体に結合して、それでしか開かないドアを開く鍵のような役目を果たします。

ビタミンD受容体の錯体はDNAの奥深くまで入り、DNAが、ビタミンD受容体錯体に遺伝子をスイッチオン(アクティブにする)かオフにする(非アクティブにする)するコマンドとして機能するコードの秘密を明かすシーケンスを認識します。

パトリック博士の研究は、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)という異物酵素を符号化するビタミンDに制御される遺伝子を特定しました。TPHはトリプトファン(食事中のタンパク質から摂っている)を気分の調節と脳の発達ともに関わっている神経伝達物質であるセロトニンに変換します。

体内には脳に1つと腸に1つ、2種類のTPH遺伝子があります。脳内にあるほうが脳内でセロトニンを生成し、腸内のほうはトリプトファンを腸内でセロトニンに変換し、後者は血液脳関門を脳内まで通過できません。

ここが重要なポイントです。というのは、体内のセロトニンのほとんど(約90%)は腸内で作られており、腸のセロトニンが脳の機能に自動的に影響を及ぼすものと考えられてきたからです。

しかし血液脳関門を脳内まで通過できないので、この仮説は成り立ちません。二つのセロトニン系は全く別物です。腸のセロトニンは血液凝固のために一役果たしているので、重要なメリットがあります。しかし、腸のセロトニンが多すぎるとT細胞を活性化して、拡大して炎症を促します。

ビタミンDが腸のセロトニンレベルを下げる

パトリック博士が発見したのは、腸内でビタミンDがTPH (トリプトファンをセロトニンに変換する酵素)を生成するための遺伝子を不活性化させることです。ビタミンDは過度のセロトニン濃度による内の炎症を抑えます。

脳内ではトリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子にはこの逆の反応を起こすシーケンスが存在します。ここではビタミンDは遺伝子を活性化し、セロトニンの生産を増加させるのです! 当然のことながら、ビタミンDがじゅうぶんあると2つのことが同時に起こります。

  1. 腸の炎症はセロトニン生産に関連する遺伝子を不活性化させることによって軽減します。
  2. 脳内のセロトニン濃度はこの遺伝子の活性化により増え、脳内ではセロトニンが気分、衝動制御、長期計画、長期的行動、不安、記憶、その他本質的ではないまたは重要ではない刺激を捨象する機能である感覚ゲーティングを含む多くの認知機能や行動において重要な役割を担っています。

2014年にパトリック博士の最初の論文が発表されて以来、アリゾナ大学の独立研究チームは生化学的に同氏の発見した事実を裏付けました:ビタミンDはトリプトファンヒドロキシラーゼ2 (TPH2)遺伝子を多くの種類の神経細胞の中で活性化することが確認されたのです。

この論文の発表以前、この事実さえ知られていなかったことで、ビタミンDの自閉症に対する影響をよく説明できるようになったという意義がある発見でした。自閉症の子供たちの大部分は脳機能障害だけではなく、腸に炎症も起きています。

同氏の研究は十分にビタミンDを摂ればこれらの問題を両方とも防止し処置もできる重要性を明らかにしました。詳しくはパトリック博士のインタビュー(上記参照)をお聴きください。

ビタミンD不足が多発性硬化症と関連している

ビタミンDはその他多くの理由にもよって妊娠中に欠かせません。ビタミンDが適度な濃度ある女性から生まれた子供は多発性硬化症(MS)やその他、炎症性腸疾患や1型糖尿病等自己免疫性疾患のリスクが子供のときも成人してからも低いことが研究からわかっています。

最近のデンマークの研究はビタミンD濃度が20 ng/mL (50 nmol/L)以上で生まれた新生児は、出生時のビタミンD濃度が12 ng/mL (30 nmol/L)未満だった子供より30歳までにMSに罹る確率が47%低いことがわかりました。

MSは脱髄プロセスにより引き起こされる脳と脊髄内の神経が萎縮する慢性病です。この病気は処置方法がほとんどなく「絶望的」疾患と考えられてきました。

American Association of Neuromuscular and Electrodiagnostic Medicine (AANEM、米国神経筋電気診断医療学会)の2014年度学会会議で発表されたある研究は、ビタミンD欠乏がMSその他神経筋病と診断された患者に共通していることを示しました。ビタミンD欠乏は30ng/mL (75 nmol/L)以下の25OHD3濃度として定義されました。

神経筋病と診断された患者の48%はビタミンDが欠乏していました。14%のみ「正常」以上でこれでもビタミンD濃度が40 ng/mL (100 nmol/L)でした。

ビタミンD — あなたとお子様の健康改善のための安価で簡単な方法

Protect Our Children NOW!(子供たちを今すぐ守ろう!ビタミンD濃度を女性と子供の健康のために最適化する重要さを訴える世界的意識高揚を目指している)という公共衛生のための社会運動で主任研究者であり新生児学医師のキャロル・ワグナーさんとグレン・デプキーがインタビューしました。

ワグナーさんは4,000IUのビタミンD3を毎日摂るのが妊娠中の女性の最適レベルであるといえることを示す、同氏のチームによる研究に基づいて指摘しています。

これはあくまでも標準値なので、人によって現状に応じてこの値より高くも低くもなるわけで、ビタミンD濃度を — 最適なのは妊娠予定時、妊娠中、授乳中にも — 分析してもらい、あなた自身にとって必要な量のビタミンD3を摂りこみ、濃度を40~60 ng/mL (100~150 nmol/L)にしてこれを維持してください。確実にいえることは、40 ng/mL (100 nmol/L)より下げてはいけません。

以上の情報を心に焼き付け、メリットを受けれると思う人と共有してください。ビタミンD濃度の最適化は合併症や早産のリスクを削減するための最も簡単で安価な方法の1つです。お子様のASD、MS、その他慢性病リスクも大きく下がることでしょう。

ビタミンDテストは25(OH)Dすなわち25ヒドロシキビタミンDというのを行ってください。これは公式に認められているビタミンD状態のマーカーであって、全体的健康と最も深く関連しています。もう一つ利用可能なビタミンDテストは1,25-ジヒドロキシビタミンD (1,25(OH)D)といいますが、これはビタミンDの適正レベルを判断するにはあまり役立ちません。

日光に当たることはビタミンD濃度の最適化のために理想的な方法ですが、冬と仕事のため、この記事を読む方のうち90%はサプリメントなしでは最適な濃度に達しません。ビタミンK2とマグネシウムの摂取を増やすように注意してください。これは食事でもサプリメントでも構いませんし、日光によく当たり自然にビタミンDが体内でできるように亜熱帯に引っ越すか長期休暇を取るようにしましょう。