薬品の有効期限日が実は何を意味するのでしょうか?

薬品の有効期限日

早分かり -

  • 1979年に米国食糧医薬局は処方薬に有効期限日を記載することを義務付けました。
  • 30年経過した薬品を分析したら最大86%の成分に効能があり続けることが判明しており、さらに検査すれば有効期限日が伸びることになるでしょう。
  • 医療費さらに廃棄される薬品による環境負荷を削減するための最適で効果的な方法はライフスタイルを変えて薬に依存しなくなることです。
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Dr. Mercolaより

1979年以降生産される薬剤に有効期限日を記載することを米国食糧医薬局(FDA)は医薬メーカーに義務付けました。

それ以前、薬品を購入した人々はそろそろ捨てる頃だと自分で感じるまで使用していたのです。あなたもおそらく気が付いていると思いますが、私はあらゆる理由で処方薬の使用を好みません。

しかし、一人一人が自分で健康への道のりを歩むわけで、処方薬を止めて健康状態の管理やもっと栄養を取ったり、睡眠、水や運動を身体に供給して健康を回復するのに役立てる方へ向かっている方もいるでしょう。

処方薬は薬剤に応じて通常1~5年の有効期限日があります。効能がない(効かくなっている)とか健康に害があるのではないかといった理由で、有効期限日を過ぎた薬を飲むのはたいていの人が躊躇するはずです。この薬品の売上高が一人一人、病院、薬局、米国軍に高価についており、 — 毎年数百万ドルが掛かっています。

Journal of the American Medical Association(米国医学会の専門誌)に掲載された研究で研究者らは約30年間未開封のままの純正パッケージ入りの薬品を発見してその効能を分析しました。この調査対象薬品が薬局の中で熱や光から遮断されて涼しく乾燥した環境に保管されていたことを念頭に置くことが重要です。

科学者らの発見した事実:30年経過した薬品にまだ効能がある

記載の有効期限日を経過した薬品にまだ効能があるか否かについての議論は医師、薬品会社とFDAの間だけで行われました。

こうした疑問のいくつかに応えようと取り組んだ、臨床薬学教授でCalifornia Poison Control System(カリフォルニア州立大学運営の毒物管理組織)サンディエゴ支部の代表者リー・カントレル氏のチームは1970年以前に有効期限日を迎えていた処方薬を入手することができました。 

同氏らの焦点は有効期限日を延ばしてヘルスケア費用の削減につながりうるような処方薬の効能持続性を評価することにありました。

薬品がラベル記載の有効期限日経過後も効能を保持することをその他の研究はすでに実証していました。この特定の処方薬ストックを入手できた研究者らは数十年前に有効期限が切れているが涼しく乾燥した環境に熱や湿度から保護して保管されていた薬品の効能を綿密に調査する独自の機会を得ました。

15種類の有効成分を含む8種類の薬品をその分析に含めました。各製品について3個のカプセルまたは錠剤を個別にテストしました。

テストした14品目のうち12は薬品の効能について濃度90%かそれ以上、すなわち一般的に認められている最小レベル以上の有効成分がまだ残っていることを科学者らは発見しました。これらの薬品は薬剤の効能に関する大部分の標準が規制で定められる以前に製造されたものなので、そのうち3品目は表示濃度より多い量を実際には含んでいました。

2種類の薬品では最小の90%より少なく、これらの薬品 — アスピリンとアンフェタミン — は年が経つうちに効能を失っていました。

カントレル氏のチームはこれらの事実により一部の薬品の有効期限日を延長しても安全であると考えています。但し、テストした薬品は未開封のままで最適な条件に保管されていたものであることを銘記するのは重要です。

有効期限日の決定方法は?

この研究を行う前からカントレル氏は「有効期限日」という用語が的外れの名前であることは知っていました。むしろ、こうした日付はFDAや製薬会社が薬剤の効力を保証するつもりの時点であり、必ずしもその日以降効能が「消滅」することを意味するわけではありません。

ほとんどの薬品は有効期限日を過ぎても危険にはなりません。カントレル氏も、さらにNational Capital Poison Center(毒物を追跡する米国NPO法人)の医療副理事キャスリーン・クランシー氏も期限切れの処方薬で被害を受けた人など聞いたことがないといっており、カントレル氏は医療文獻に記録例があることは把握していないといいます。

有効期限切れの薬剤を服用することの危険は — 特に生命に危険な状況で使用される薬品、例えばアナフィラキシーショックに処方されるエピネフリン注射等が効かないときに発生します。

製薬会社は薬品の有効期間を定める安定性検査を行う義務があります。その検査は薬品に表示された有効期限日以前に使用した場合での薬剤の効能を確実にするように設計されています。

薬品が完全性と効能を維持する特性に影響を及ぼすいくつかの要因が存在します。これには有効成分の種類、保管、保管容器の種類、薬品に含有される保存料を含みます。

その根拠となる薬品のストレステストはFDA、米国の3連邦機関、世界保健機関(WHO)が指導しています。

検査目的は製品の可能な劣化率を特定することです。検査は通常の場合、湿度、温度、光分解、酸化を薬剤へのストレス要因として用い、製品の単一バッチに対して実施されます。

FDAは提出データを検討して有効期限日を確定します。しかし、製薬会社は薬品についてより長い有効期限日を定めることができるかいなかを見極めるために表示期限日を経過した薬品を継続検査する義務はありません。これで薬品が実際に効能を失うと見られるよりかなり早期の有効期限日を表示されている理由について部分的には説明がつきます。

医療費増大の中で破棄される高価な薬品

SLEPプログラムは有効期限日が来た薬品を買い替えることにより発生する何百万ドルもの費用を節約して、緊急時のための準備を連邦機関が行うのを補助してきました。

但し、この節約は薬局、病院、医師やあなたご自身は享受していません。近年薬剤費の国民医療費全体の費用を押し上げる寄与度は1面ニュースに載る機会が増えています。

2004年にThe Associated Press(通信社)が実施したアンケートによると、アンケートに回答した3人に1人の医師は処方薬のための支払が金銭的に課題になる、また4人のうち3人は価格がゆえに処方箋の作成を延期すると答えていました。

回答者10人のうち1人は費用削減のために処方薬を違法でもカナダやメキシコから仕入れていることも認めました。2004年以来、薬剤費は上昇し続けています。

カントレル氏の当初の研究は2012年に出版され、有効期限切れの薬品を無責任に勧めるとして研究者らが非難されるほど注目を一気に集めました。しかしカントレル氏は研究者らの意図は医療費削減を助けることができそうな課題に着目したと主張して断固として譲りません。「処方薬の有効期限日設定プロセスをもっと洗練すると数十億ドルの節約に役立つでしょう」と同氏はコメントしました。

SLEPプログラムを承認すれば一貫して、政府は毎年節約できるようになるとして、American Medical Association (AMA、全米医師会)は薬品の有効期限日の再評価を要請しました。Pharmaceutical Research and Manufacturers of America(米国研究製薬工業協会)、FDAさらに、薬品の規格策定機関であるU.S. Pharmacopeial Convention(米国薬局方協会)宛に信書が送られました。

AMAレポートの作成に携わったリューマチ学者のロイ・アルトマン博士は次のように言っています:「何も変わりませんでしたが、試してみました。この主題が現在再び取り上げられていることを嬉しく思っています。相当の無駄があると思っています。」

製薬会社は有効期限日を延ばすように指示する文書を時々受け取ることになります。ファイザーが注射式のアトロピン、エピネフリン、ブドウ糖、炭酸水素ナトリウム(重曹)の有効期限日を伸ばしただけでボストンのニュートン・ウェルズレイ病院ではあっという間に$7,500も節約できました。

専門家の試算によると期限切れ薬品を廃棄しているヘルスケア機関に毎年最大$7650億、年間国民医療支出のほぼ25%に該当する額の費用が発生しているそうです。

最適な防御こそ最大の攻め

増大し続ける診療費と薬剤費から最適に身を守ることとは、薬品の使用が必要になるようなリスクを削減するライフスタイルで生活することです。残念ながら従来の医学では疾病の対症療法にのみ焦点を当て、予防には焦点を当ていません。

自分の口に入れるものは自分の選択であり自己責任です。あなたが自分で選ぶものは自分が享受できる健康の決め手ともなります。

最適な栄養を取るには自宅でゼロから料理した本物の食物を食べて加工食品は止めるのが重要です。このようにすれば精製糖、工業果糖、染料その他健康にインパクトがあり気分が悪くなったり病気になったりするリスクが増大する化学物質のほとんどは自ずと摂らずに済むようになります。

食事に健康な脂肪の量を増やすに連れてグルコース依存度が減り、ますます健康な脂肪を燃料にして燃やすようになれます。加工食品を捨て去るのは難しいかもしれません。加工食品は日常の食生活から捨て去れるだけではなく、痛みもありません。

食事は地元のファーマーズマーケット(農産物生産者が直売する市場)から有機産品を中心にして計画しましょう。こうした産物はしばしば売れるような価格設定になっています。二食分をそれで作り、一食分は翌日仕事先で昼食にしたり、料理する時間がないときは夜食用に冷凍したりもできます。

手元の素材を全て使えるような一週間分の食事計画を一度に作り、仕事からの帰り道に夕食は何を作るかを考えるのも一つの手です。

古い薬品は責任を持って廃棄する

水源を汚染せずに薬品を廃棄処分する問題に応え、米国には「回収制度」を実施している州があります。FDAは回収制度のある区域に住んでいない人向けのガイドラインと環境保護のためになすべきことを示した注意書を発行しました。そのガイドラインの内容:

  • 薬剤のラベルに記載されている特定廃棄処分n指示や薬品に同梱の患者向け情報に従うこと。説明書に具体的にそうするように指示がない限り、処方薬をトイレに流さないこと。地域の水質保護のためにどんな薬剤もトイレに流さないようお勧めします。
  • 公衆が正しい処分用の集中回収所に未使用薬剤を持ち込める地域の薬品回収制度を活用すること。薬品回収制度がお住いの地域にあるかを確認するため、役所の世帯ごみ・リサイクルサービス担当に問い合わせてください。麻薬取締局(DEA)は州や地元の警察等と協力して全国処方薬回収デーを米国全体で運営しています。
  • 薬剤のラベルに何ら表示がなく、また回収制度がお住いの地域になければ、薬剤を家庭ごみに捨てる前に:
    • 残りの薬を容器から取出し、コーヒーの滓や飼い猫用の捨てる砂等、望ましくない物に混ぜて処分しましょう。薬品はこうしておけば子供やペットの注意を引かず、ゴミを漁る人たちにも見分けがつかなくなります­
    • 捨てる薬剤を封止式バッグ、空いたカンその他の容器に仕舞い、ごみ袋から薬品が漏れたり、袋が破れて外に出ないようにしてください
    • 容器を廃棄する前に処方ラベルを剥がしてわからないように破壊してください
    • 州によっては薬品を回収している薬局があります。よくわからなければ薬局に助言を求めましょう。この辺りの事なら喜んで手伝ってくれるとてもよく訓練され教育の行き届いた人がほとんどです。

以上の推奨内容は問題を一部の環境から別の場所へ移すだけのことにすぎません。DEAは全国的回収プログラムを実施しており、このプログラムは入手可能な薬剤を毎年益々多く回収し続けています。

2017年に同プログラムには4,000拠点を超す警察関連のオフィスが取り組み、ほぼ5,500箇所の回収場所と過去最高の450トンもの薬剤が回収されています。同プログラムの主な目的は濫用のおそれがあるオピオイド処方薬を処分することですが、DEAは錠剤ならその他の処方薬も何でも回収します。

しかし、薬剤による環境汚染を軽減するための最適な効果的手段は自分の健康を掌握し、まず何より使用する薬の数を減らすことです。