Dr. Mercolaより
気功の一部門である太極拳は2,000年以上も実践されてきました。気功はこれよりさらに遡り5,000年もの歴史があります。中国で生まれたこれらの運動は気の平衡を保ち、気を促進し(中国語も同じ「気」)、つまり「生命エネルギー」を強くし、しばしば動作中瞑想とも呼ばれます。これは動作が1セットのゆっくりとした緩和な動きをしつつ呼吸に集中することからこう呼ばれます。これを見ただけでは、これらの運動ではほとんど身体の運動という観点では役立ちそうも無いように見えますが、見かけだけでは本当のことは見えません。
研究により太極拳や気功が多くの肉体的、心理的メリットを与えてくれることが証明されています。中国伝統医学(TCM)によるとこれらの運動は身体のツボを通して気を通すことによって、全身の健康と快適な状態を改善します。もっと具体的に言うと、太極拳は中枢神経系を刺激し、血圧を下げ、ストレスを軽減し、筋肉に張りをつけ、消化や排せつを助けることが研究によって実証されています。
太極拳はインパクトが小さいので高齢者に特にメリットがあります。車椅子の方も太極拳はできます。慢性痛や凝りにお悩みの方も大いに得るものがあります。よく見られることとしては、痛むときに動かないでいるのは筋肉をますます弱め、痛みや凝りを減らすどころが増やすほうに作用するので、自分に対してできる最悪のことのひとつにすぎません。
じっと座っていることがつらい場合は座ったままの瞑想に代わる効果を太極拳は持っています。太極拳を行っている間、心を自分の動き、弛緩、深呼吸に集中させ、一方では気を散らすような想念を無視します。
気功とは呼吸動作、弛緩、動き、自分でマッサージを一つに合体した医学的動作としてとらえることができます。太極拳がいかに生気を生むかは初めて試した多くの人が印象づけられます。長年この古代の運動への科学的興味が増すに従い、各種の健康状態に応用することを支持する確固たる研究基盤ができあがりました。
PubMedには気功についてだけでも500本を超える記事が公開されています。2010年に気功と太極拳の健康のメリットについて包括的な考察ペーパーが出版されました。そこではこれらを実践することによる心理的と生理学的効果について検討されました。太極拳や気功に関して合計で77本のランダム対照試験(RCT)ペーパーが1993~2007年にこのレビューに掲載され、これらの運動の間に多くの共通点が指摘されました:
「気功と太極拳というこれら二形態の瞑想的動作は共通の理論的起源があり、共通の動き要素、同様にウェルネスや健康との連関性がある密接な親戚といえ、伝統的中国医学の諸側面を促進するものである。
健康増進という文脈でいうと、これらは実際の応用面を見るとほぼ同じであり、中国伝統医学が身体の焦点(姿勢と動作)、呼吸の焦点と心の焦点(瞑想的要素)という「3つの調整要素」と呼んだものが大部分共通している。気功と太極拳の類似性に基づいて、これらの形態の瞑想的動作に関する科学の現状についてのこの考察では両者の形態の便益をまとめて調査した。」
その特集レビューは気功をコミュニティー、学校、監獄、高齢者のために家庭に紹介するための指導員トレーニングに長年の経験を持つ中国医学の医師ロジャー・ジャンキー氏が主監を務めたものです。ジャンキー氏(Jahnke)の著作「The Healer Within: Using Traditional Chinese Techniques to Release Your Body’s Own Medicine」(自分の中の治療者:中国伝統医学を応用した身体の自己医療、1997年出版)は気功を効能のあるセルフケア方法として推奨しています。
第二作で2002年に出版された「The Healing Promise of Qi: Creating Extraordinary Wellness Through Qigong and Tai Chi」(治せる気の癒し:気功と太極拳による抜群のウェルネスの生み出し方)はさらに一歩進めて、気功を現在のヘルスケア危機に対する費用節約的矯正策として紹介しており、パーソナルな「年齢や医学的状態を問わずに効く自己癒し方策」を自分で作り出すガイドラインを説明しています。
疑いようもなく、そのメリットの一部は心身への影響に基づいています。これには瞑想への焦点を含んでいます。マヨクリニックやハーバード医学校など尊敬されている従来的な健康管理機関でも太極拳を特にストレス軽減手段として健康のメリットがあるものとして推奨しています。ストレスが身体に及ぼす多くの害悪を考慮するとこのことは決して驚くに値しません。
太極拳と気功は健康の何に効くのでしょうか?科学的実証に基づいていうと、これらの運動からメリットを得られる状態には限定することなく次の病気を含みます:
✓ 高血圧
✓ 心臓血管疾患
✓ ガン
✓ 関節炎
✓ 脳卒中や脳損傷からのリハビリ
✓ 有酸素運動能力、体力、調整力
✓ 転倒や平衡感覚障害
✓ 骨鉱物密度
✓ 帯状疱疹関連の免疫
✓ 痛みや凝り
✓ 不眠症
✓ ストレス、不安、鬱
WorldTaiChiDay.orgの医学研究ライブラリには太極拳のメリットがある約100件の健康上の問題を収蔵しています。従ってこれでは包括的一覧表からはほど遠いです。これを念頭においた上で、最も説得力のある証拠によると、気功が痛みや疲労の身体状態、肺や心臓血管機能、平衡感覚と調整力、ストレスと不安、全身的免疫機能関連に効くことが裏付けられています。
例えばある研究は変形性関節症を持つ高齢の婦人が12週間太極拳を練習したら関節炎症状、平衡感覚や身体機能に大幅な改善が見られました。他の研究では、太極拳がリューマチ性関節炎患者の動作範囲を保持し、障害度を軽減するのに役立ったことが実証されています。
線維筋痛症患者も太極拳を4カ月練習したら痛み、倦怠、鬱が軽減したほか、身体機能や睡眠が改善しました。気功の痛みに対する効果を研究した1999年のある調査は機構はともなく、こうした緩和な運動が著しい効果を持つことを確認しています。この調査では18~65歳で複合性局所疼痛症候群I型患者が気功の指導と気の放散について気功の達人か似非名人から同じ内容の指導を受けました。
本物の達人の気功グループの患者のうち82%は第一回の指導プログラム終了時に痛みが軽減した一方、対照群では45%でした。最終回までに、本物の気功グループは91%で痛みが軽減した一方、対照群では36%でした。不安の軽減も本門の気功グループの方が大きかったのです。
近年では、2015年にBritish Journal of Sports Medicine(イギリスのスポーツ医学専門誌)に公開された体系的レビューが4種類の慢性病に与える太極拳の効果について分析しました:
33本の研究データを見直した結果、研究者らは太極拳がこれらの全疾患に対してある程度以上のメリットが認められると結論しました。全検体で痛みや呼吸困難等の重篤な副作用なしに、例えば体力、平衡感覚や姿勢が改善しました。関節炎患者の場合、痛みや凝り等の関節炎特有の症状が軽減しました。紹介した研究の大半は太極拳の練習を12週間の間に週2~3回の頻度で1回に1時間行っていました。
もう一本の興味深い研究は、太極拳の修正版で簡素化された太極智という運動が帯状疱疹ウィルスへの免疫応答を飛躍的に増大させ、その発生を防止することを実証しました。2010年のレビューに含まれる数多くの研究は白血球、好酸球、単球等免疫関連の血液マーカーが改善したことを発見しており、これらの心身運動が免疫機能に直接効果があることを示しています。
炎症も免疫機能と密接に関わっており、研究により気功と太極拳が炎症マーカーも削減するのに役立つことが判明しています。これにはCRP(C反応性たんぱく質)やインターロイキン6等が含まれます。
ここで注目した2010年のレビューに掲載されている77件の研究のうち27件は、不安、鬱、ストレス、気分、転落恐怖症、自尊心等心理面での成果があることを報告しています。これらの研究の大部分は心理的苦悩を採用パラメータ―に含んでいませんでしたが、発見された事実は有意であることが判明しています。
例えば、規則的運動に比べて、気功のほうが被治験者の不安の度合いにより明確なメリットがあることが発見されました。鬱も活動しない対照区より大幅に改善しました。太極拳は標準的な心理サポートの処置よりアウトパフォームしました。著者によると:
「特に不安と鬱を中心としたこの種の症状は太極拳と気功の両方に対して相当一貫性のある応答を示しており、特に、対照群での処置に運動等の活発な処置を含まないことから、この違いが顕著であった。
特に、処置に応答する不安や鬱と関連しているバイオマーカーの変化がありえることを数件の研究が示しており、この部類は心理状態の変化に対する活動の持つ潜在的仕組みを調査するとよい結果が認められそうなことを示している。」
気功と太極拳は身体を引き締め、強化し、循環や酸素の流れを増大させ、柔軟性や平衡感覚を改善する、穏やかな修復的運動の二例です。2010年のレビューには次のように記載されています:
「太極拳についての研究と増大し続ける数の気功研究を合わせると説得力がかなりある量の研究が存在することになる。証拠からわかるように、多くの健康へのメリットはこれらの瞑想的動作への応答に見られ、その一部は一貫して効果があることが判明しており、他方では従来に限れば発見された事実はまだ少ない。
このレビューから気功と太極拳の効果に関する異なる程度の証拠に基づいて多くの成果が特定された。この効果には、骨の健康、心肺の健康や関連バイオマーカー、肉体的機能、転倒防止、平衡感覚、生活一般の質向上を含み、患者は成果、免疫力、不安、鬱、自己効力感等の心理的要因が改善された。
対照群では活動を制限した場合特に、かなりの数のランダム対照試験(RCT)が一貫したプラスの結果を実証している。瞑想的運動という単一の練習の部類に対する2つのアプローチとしてとらえることができる太極拳と気功を合わせて調査した場合、研究の数の多さは実に印象的である。」
実際に、研究者らは医者がいつかは太極拳を複数の慢性病高齢患者に処方する時が来るであろうと予測しています。しかし、いつかまで待つ必要はありません太極拳は自宅で本やDVDから学ぶこともできますが、経験あるインストラクターのいる教室に参加して、確実な動きを正しく安全に行えるようになります。多くの地域で太極拳教室はあるので地元のヘルスクラブやヨガスタジオに訊いてみてください。
あまりにも虚弱で以上のヒントを行えない方は、体力と平衡感覚を改善するための座ったままでできる運動を始めてはいかがでしょうか。最適なのは包括的フィットネスプログラムです。これはエアロビクス(有酸素運動)、無酸素運動、ウエイトトレーニングも含みます。最もメリットがある運動は高強度インターバルトレーニング(HIIT)です。これは高強度な動きを瞬発的動作で行って次に回復時間をおいて行います。連続的な激しい努力を継続するのとは逆です。
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