Dr. Mercolaより
この名称が含意する通り、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は心が傷ついた後やストレスに関連する障害です。この障害は任意の集中的で恐れを生起させるまたはストレスに満ちた出来事や苦痛に暴露された後に発症する可能性があります。PTSDは心的外傷を及ぼす事故、暴力行為、軍事的戦闘体験や災害と頻繁に関連しています。
Effexor(エフェクソール)、Paxil(パクシル)、Prozac(プロザック)、Zoloft(ゾロフト)等の抗うつ剤はPTSDに対してよく処方されますが、効果の程は大きく異なります。どんな医薬品にもある通り、これらの薬剤にも有害な副作用がつきまとっています。偽薬が一部の処方薬と同様に効果的であることを研究が実証した事実と合わせこれらの薬剤の危険性を考えると、PTSDの潜在的な自然治療を提案する研究に注目していただきたいです。
具体的に言うと、ジョージ・ワシントン大学の研究者の示唆するところではオレンジのエセンシャルオイルはPTSDの被害者のための医薬品外の選択肢になるようです。実験用マウスで実施した研究は、オレンジ エセンシャルオイルには障害に伴う恐怖感やストレスの軽減のために価値があることを実証しました。この種の研究を完全に有効なものとして確立するには、当然同様の研究を人体で実施することが必要と思われます。
このことを念頭に置いた上で言うと、この研究は、認知療法、内破療法、眼球運動による脱感作および再処理法(EMDR)等の医薬品を使用しない他の処置と併用することができそうな、PTSDの潜在的に自然な療法を識別することに向け前途有望な一歩となった画期です。
PTSDの影響は数カ月または数年も後を引く可能性があり、時として生産的で高品質な生活を享受する能力に深く影響します。PTSDの被害者は以下の症状のうち一つか複数をよく体験します:
✓ 不安
✓ 憤怒、罪の意識、悲しみなどの強い感情
✓ 呼吸困難
✓ 侵入的想起や突如とした回想
✓ 分裂性の体験
✓ 過敏症
✓ 無感情
✓ 注意力散漫や集中力欠如
✓ 心不全
✓ 不眠症
上述の通り、ジョージ・ワシントン大学で実施された実験用マウスを用いた研究では、オレンジ エセンシャルオイルがPTSD症状に及ぼす可能性があるインパクトを評価しました。
オレンジ エセンシャルオイルの影響をパブロフ型恐怖条件付け(即ち古典的な条件付け)という手法を用いて試験しました。これは同試験における行動パラダイムを、恐れの記憶がいかに形成され、保存され、PTSDのモデルとして発症する仕組みを解明する手段としてマウスに適用したものです。Medical News Todayが次のように説明しています:
「パブロフ型恐怖条件付けは足へのショックなどのマイナスの刺激に合わせて音色を聞かせ、マウスに恐れの反応を呼び起こすものである。マウスは音色と刺激を連合記憶で結びつける。音色のみを聞かせたところ、マウスは恐れの反応を示し、典型的な凍結姿勢を取った。この反応は経時的にゆっくりと逓減する。
[研究者らは]マウスを3グループに分けた。12匹の第1グループは音色のみを聞かせ、別の12匹のマウスに水を与えて恐怖条件付けを実施し、残りの12匹にはオレンジのエセンシャルオイルを恐怖条件付けの各40分前後に吸引させた。」
顕著な結果として、オレンジのエセンシャルオイルに暴露したマウスは恐怖による凍結姿勢を取ることが大幅に少ないことが判明しました。実際に、このオイルで処置したマウスは他のタイプの処置を受けたマウスより早期に凍結姿勢を全くしなくなったのです。
さらに、これらのマウスはPTSDと関連する生化学的経路に関連した免疫細胞が大幅に減少していました。 以上の結果から、研究者はエセンシャルオイルがマウスのPTSD症状を和らげるのに役立つ医薬品外の潜在的オプションとして認めています。
ジョージ・ワシントン大学ポール・マーヴァーラボの研究助手カサンドラ・モシュフェグさんは、オレンジのエセンシャルオイルが持つPTSDに関連する恐怖感とストレスに対して持つ作用をはじめ、脳や神経系への特定の効果の仕組みをよりよく理解するためには、さらに研究が必要であると言っています。オレンジのエセンシャルオイルのメリットについてモシュフェグさんは次のように言います:
「医薬品とは異なり、エセンシャルオイルは大幅に経済的であり、重篤な副作用がありません。オレンジの植物性エセンシャルオイルは私たちの実験マウスの応答行動に有意な効果を示しました。このエセンシャルオイルを受動的に吸入すると人のPTSD症状を緩和する潜在性があることが示されたという点でこの結果を有望視しています。」
2012年にJournal of Alternative and Complementary Medicine(代替・補完医療専門誌)に公開された研究では、甘いオレンジのエセンシャルオイルが人に抗不安薬的効果を持つことが確認されました。即ち、不安を和らげるための効果的療法であることが示されたのです。この研究は40名の男性ボランティアを5グループに分けて行い、各グループに次のうち一種類を吸入してもらいました:
吸入直後に各参加者にストループ・カラーワード・テストを用いた不安モデルで試験を実施しました。このモデルは一連の色単語またはインクの色をできる限り早口で読み上げさせるスクリーニングツールです。対照区のグループに対して、オレンジ エセンシャルオイルを吸入させた参加者は不安生起テストの間、実験を一貫して不安や主観的緊張度がほぼ変わらないか全く変わりませんでした。研究の著者は次のように提言しています:
「不安障害に対してアロマテラピーが臨床的関連性を持つかについてはさらに研究が必要だが、現在の結果からは、甘いオレンジの芳香が持つ急性の抗不安作用を持つことが言え、一部の科学者はこれをアロマテラピストによる鎮痛剤として利用を支持している。」
モシュフェグさんの研究に関連して、オーストラリア国立大学の神経学者ジョン・ベッカーズ氏はアロマテラピーとPTSDの関連性を確認する研究がさらに必要であると注意を喚起しています。ベッカーズ氏は次のように言っています:
「人々がアロマテラピーに依存するよう励ますつもりはありません。PTSDは深刻な問題であり、いいフィーリングを得るために何かを嗅げば済むように人が考えるべきではないからです。」
PTSDの一助とするためにオレンジのエセンシャルオイルのみに頼るのはまだ早いと思い、私も同感です。自分の状態についてプロの意見をまだ求めたことがない方は、診断が確かであることを確認する一助にはなるでしょう(但し、オレンジのエセンシャルオイルも同時に試しても害悪はありませんが)。
この点を念頭に置いて、食習慣やライフスタイルの選択に関連していることが、心的外傷後不安やストレスを体験している可能性の度合い軽減に寄与する可能性があるか否かを見るため、食習慣やライフスタイルの選択を見直すために時間を費やすことにも意味があります。
精神衛生を考慮したとき、精神衛生上のどんなタイプの懸念でもあれば、これに完全に対処したいと希望する以上、食習慣とライフスタイルを、最適化すべき基本要因として認識することは重要です。その懸念事項には不安と鬱が含まれます。肉体と精神(マインド)は密接に相互連関しているので、精神衛生を司る主要器官が脳だとお考えかと思いますが、これより重要な役割を担っているとは言わないまでも、腸が同様に重要な役割を担っています。
私の考えでは今日の抗うつ剤は精神衛生面の問題に対処することが憐れなほどできずにいます。抗うつ剤や抗不安在の副作用のほうが、元の悩みよりはるかに悪いことが頻繁に起きており、無感情から性的不能やいらいらし易さ、さらに不眠症まで広範囲に及びます。
こうした強力な薬剤は殺人や自殺のリスクさえもたらす可能性があります! 抗うつ剤は慢性的な長期的鬱状態を悪化させる可能性があるので、絶対不可欠でない限り、回避したほうがよく、概して、「最後の手段」としてのみ使用すべきです。
精神衛生のために処方薬をすでに服用している方の場合、当然担当医師の助言や監督を伴いながら、薬剤を止めることができるようになるまで、薬剤を取りつつ以上説明した切替を行うことはできます。
✓ 本物を食べる
有機栽培の自然に成長した自然食品を食べる取組を行うことは、加工食品、砂糖(特に果糖)、穀物や遺伝子操作(GE)食品を減らすことを選択することも意味します。
多くの砂糖やデンプン系炭水化物を取ると、インスリン分泌が過剰になり、低血糖症を引き起こす可能性があります。低血糖症になると、興奮、怒り、不安、鬱、不安発作を引き起こすレベルまで脳がグルタミン酸を分泌します。砂糖も体内に炎症を起こします。
加工食品には通常、多量の砂糖が含有されており、これがオメガ6脂肪酸を破壊し、その他多くの化学添加物が脳の機能や精神状態に影響します。アスパルテームとMSGは私が最も回避したい二つの物質です。グルテン感作は鬱の共通した隠れた原因なので、グルテン非含有の食事を取ることを検討すべきです。
✓ 発酵食品の消費を増やす
炎症を減らすことは、精神衛生に取り組む際に必須であるため、腸内細菌叢の最適化は欠かせません。健康な腸内細菌叢を促進するためには、漬物やケフィール、キムチ、納豆等プロバイオティクス食品をもっと取ることです。これらの食品のいずれも入手できない場合、プロバイオティクスサプリメントを毎日取ることを検討しましょう。
✓ 適正量のビタミンB12を取る
数種類のビタミンB欠乏症は精神神経系障害の症状を発症させる場合があります。このため、ビタミンB系は精神病の中でも不安、注意力散漫障害、鬱や分裂症の処置において貴重な補助になります。ビタミンB1、B2、B6、B8、B9、特にB12に注目するようお勧めします。4人に1人はビタミンB12欠乏であると考えられています。
✓ ビタミンDレベルを最適化する
ビタミンDは気分のために極めて重要です。季節性感情障害は日光不足に関連する一種の鬱病です。従って紫外線に当たりビタミンD濃度を最適化することに意義があります。
年一回以上血液検査を行ってビタミンDの濃度をチェックし、血液1ミリリットル当たり約40~60ナノグラム(ng/ml)を通年維持していることを確認してください。最適な濃度範囲になるほど十分に日光に当たれない場合は、ビタミンD3サプリメントをマグネシウムとビタミンK2と合わせて服用することをお勧めします。
✓ 十分な動物性オメガ3脂肪を摂取する
脳の60%は脂肪なので、DHAという動物性オメガ3脂肪をEPAと併用することは適切な脳の機能と精神衛生のために不可欠です。アンチョビ、いわしや野生アラスカ鮭は優良な摂取源ですが、たいていの人は食事だけからは十分なオメガ3を得ていません。このことに該当する方は、オキアミ油等高品質のオメガ3栄養補助剤を取るようにしてください。
✓ 塩分の摂取量を評価する
信じられないかもしれませんが、ナトリウム不足はうつ病にそっくりの症状を発現させます。しかし工業塩(よくある食卓塩)は避け、ヒマラヤ塩等全天然の未処理塩を選ぶことです。この塩には80種類以上の微量栄養素が含まれています。
✓ 適切な毎日の体操
各種研究がエアロビクスと気分の改善に強い相関性を強調してきました。心(マインド)と肉体の連関が実に真実であることはますます受容されており、即ち、健全な肉体を維持することはまずうつ病発症リスクを大幅に下げます。
運動もドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニンの濃度を一気に高め、これが気分向上やストレスに対する抵抗力をつけるのに役立ちます。
✓ 十分な睡眠
可能な限り最良の食事や運動プログラムは可能ですが、高品質の睡眠を取らないと、鬱その他の疾患リスクに晒されます。鬱と睡眠は複雑に絡み合っており、鬱が不眠症の原因なのか、不眠症が鬱その他気分障害の原因になっているまたは寄与しているのかは区別がつかないことがよくあります。
この連関性に拘わらず、大部分の成人は一晩に7~9時間の高品質な睡眠を取らなければなりません。子供や十代の若者はさらに長く寝る必要があります。
✓ 感情解放テクニック(EFT)。
EFTは身体の反応を起こさせている生体電気短絡を修正することで不安や鬱の症状を軽減するために極めて効果があります。このテクニックは、ある事が正当化できる脅威であるか否かを判断するために役立つように構成されている脳内の部分である、扁桃体と海馬に照準を当てるので、不安やストレスの処置に特に効果があります。
次のビデオでは、EFT実践の専門家ジュリー・シフマンさんがパニック発作やその他の不安障害に対処するためのEFTの利用法を実演しています。PTSD等深刻な問題に関しては、EFTの検収を受け資格認定を受けたヘルスケアプロにこのプロセスを案内してもらうと最も効果が上がるでしょう。
オレンジのエセンシャルオイルがPSTD処置にメリットがあるかについて妥当性をさらに検証する研究が必要ですが、消化を改善し、便秘解消に効果があることは実証済みです。そのほかにも、2012年の研究によると、オレンジのエセンシャルオイルは人の大腸がん細胞の血管新生、転移や細胞死を阻害することが判明しているので、研究者らはレッドオレンジから取ったオイルが「がん予防の偉大な潜在力を提供する可能性」を主張するほどになりました。
オレンジのエセンシャルオイルは、担体のオイルに混ぜてクリームか軟膏として使用すると、乾燥した炎症を超したニキビになりやすい皮膚に栄養を与えるためにも効果があります。足のたこを和らげるのにも効果的に使用できます。
オレンジのエセンシャルオイルを使用する時は、直射日光を避けることが必要です。直射日光に当たると光毒性を起こす可能性があります。また、オレンジオイルを大量に飲みすぎると嘔吐や吐き気につながる可能性があります。皮膚に塗るときは、部位を問わず、オレンジ エセンシャルオイルを基材油やローションで薄めて使用するのがいちばんです。高濃度のオレンジオイルを使用すると皮膚炎や皮膚の炎症を引き起こすことがあるのでご注意ください。
妊娠中の方、てんかん性の方やその他の医療的問題をお持ちの方はオレンジ エセンシャルオイルを使用する前にプロのアロマセラピストにご相談ください。
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