Dr. Mercolaより
腰痛は、アメリカでは最も一般的な疼痛であり、活動を妨げる大きな原因となっています。疼痛で仕事に支障が出たり、医師の診察の理由で呼吸器についで最も多い疾患のひとつでもあります。
成人のおよそ80パーセントが一生のうち一度は腰痛に苦しむだろうということが示唆されています。
腰痛は負担が大きく、金銭および痛みの管理の両面に及びます。また、腰痛治療では直接医療費で少なくとも毎年500億ドルかかると推計されています。
多くの人々が、腰痛は自然に消散するだろうと思いこんでいますが、これは誤りです。2003年以来の統計では、腰痛の患者の62パーセントが最初の痛みから12か月経過しても疼痛が続いていることが実証されました。
慢性腰痛は、さらに鎮痛剤中毒の主原因ともなりえます。こうした中毒は過剰服用に結びつき死に至るおそれもあります。
腰痛治療と予防には、よい方法があります。体の使い方は、疼痛を含めて、体にさまざまな影響があります。腰痛は辛く、身体の衰弱にもつながりますが、治療と予防が同時にできる手段があります。
年齢
年を取るとともに、脊椎に異常が発生することがあります。一部の場合では、こうした異常は、背中の普段の動作や、脊椎を支える筋肉の力に影響を受けていると考えられています。
30歳から60歳の間の人々は、脊柱の腰椎に問題を持つ可能性が高まります。また、60歳より上の人々は、骨関節炎からの疼痛の可能性が高まります。
体重
肥満は、腰を含む関節に負担をかけてしまいます。また体重過多に関連した炎症性の要因は、さらに疼痛を悪化させてしまいます。
腰椎は、体重の負荷を分散する役割を果たしています。体重超過は腰椎の変形や損傷に結びつくおそれがあります。腰(すなわち腰椎)は肥満に対して最も脆弱な部分です。
座る時間が長い生活
運動不足は心臓発作や心筋梗塞の危険を増大させますが、さらに悪影響があります。身体が硬くなることで、脊椎を支えるために必要な筋肉が弱まってしまうのです。定期的なストレッチおよび筋力トレーニングを行うことで、腰痛の軽減や予防につながります。
座るときや立つときの姿勢
座っているとき姿勢は、腰の通常の弯曲を変形させ、脊柱の腰椎に対する負担が増大し、坐骨が変形するおそれがあります。いずれも、腰痛の原因を引き起こすものです。座っているとき、立っているときの両方の姿勢が良くない場合、腰への負担の増加につながり、腰痛を引き起こすことがあります。
喫煙
喫煙は、体の組織に贈られる酸素の量を減少させてしまいます。これは脊椎に悪影響を及ぼし、腰痛の危険を増大させてしまいます。研究では、喫煙者はたばこを吸わない人に比べ、腰痛になるリスクが1.5~2.5倍大きくなっていることが実証されました。
妊娠
妊婦の方は、重心が変わり、赤ん坊の体重の増加とともに、腰痛の危険も高くなります。
仕事やスポーツによる負担
繰り返しものを持ち上げたり、かがんだり、身体がねじれること、長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしが続くことで、使い過ぎ、あるいは機能的な姿勢の悪さから腰痛の危険が増大し、腰にかかる力や負荷を増加させることがあります。
既往歴、家族の病歴
腰痛を引き起こすその他の要因としては、変形性関節症、脊椎変形、脊椎分離症、骨粗鬆症および椎間板に起因する疾病の既往症などがあります。家族に腰痛歴がある人は、さらに腰痛の危険が増加することがあります。
これらの危険因子の多くは、腰の使い方を変えるためのストレッチや、筋力トレーニングで大きく改善できることがあります。こうした運動は、神経筋のつながりも改善します。しかしながら、ほとんどの健康問題と同じく、治療が必要になる前に病気を予防するほうがはるかに簡単です。
腰は体幹と密接なつながりを持っています。これは、腰を支えるためには、腹筋を鍛える必要があることを意味します。さらに、筋肉を柔軟に保つことで、神経痛やねんざを防ぐことができます。
背中と筋肉組織が健康的であればあるほど、腰痛の予防につながり、また腰痛から速く回復することができます。
腰は、肩と骨盤の間のつながり、さらには大腿四頭筋とハムストリング(膝腱部分)までの相互接続に影響を受けています。これらの脚の上部の大きな筋肉はあなたの骨盤に、そして腰につながっています。
ハムストリング(膝腱部分)あるいは大腿四頭筋が硬くなると、骨盤に引く力がかかってしまい、より腰痛の危険を増加させてしまいます。
予防プログラムの系統的調査およびメタ分析により、1年以上腰痛の発作を抑える効果がある最も良い方法は、運動することであると実証されました。腰痛バンドや矯正器では軽減効果がありませんでした
これらの要因は両方とも、筋肉を衰弱させてしまい、疼痛増大に結びつく傾向がありました。筋力トレーニングあるいは筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせることで、定期的に運動した場合、1年で腰痛が起こる可能性を抑えることができたのです。
ここでご紹介するストレッチとエクササイズを、少しずつ始めてみてください。疼痛がある場合は、軽い運動を短時間だけ行ってください。筋肉を伸ばし強くするためには、エクササイズの間に適切な姿勢を維持することが大切です。
腰痛を改善するための運動は、毎日短時間でも効果があります。ただし疼痛や不快な痛みが軽減しても、エクササイズを続けることが重要です。上記のビデオでは、エリック・グッドマン博士と私が、腰痛や痛みの軽減のために特別に開発した「ファンデーション トレーニング」というエクササイズを実演しています。さらに、下記のリンクで非常に有効な標準ストレッチのリストをご紹介しています。
ハムストリング(膝腱部分)のストレッチ
立った姿勢でのストレッチは最も一般的なものですが、腰には多くの負荷がかかってしまいます。そこで、かわりに椅子あるいは壁を使ったストレッチを行います。着席ストレッチでは、まず堅い椅子に腰掛けてください。片方の脚を伸ばしてから、手がつま先に触れるまで下へゆっくりのばしてください。
もう片方の脚で、反対側を伸ばしてください。壁ストレッチでは、壁か背の高い椅子に背中とおしりをつけるようにして行います。壁または椅子に足を押しつけ、膝をできるだけまっすぐにのばしてください。進歩してきたら、着席した姿勢から、つま先にもっと近いところに触れるようになります。また床で膝をもっとまっすぐに伸ばせるようになります。ストレッチは少しずつ徐々に行い、激しく押して筋肉を緊張させないことが大切です。
おしりのストレッチ
殿筋と腰は相互につながっています。仰向けになり、両方の膝をまげて、床に腰をつけ、筋肉を伸ばし緩めましょう。床に片方の足をつけたまま、ゆっくりと片方の膝を胸に引き付けてください。20秒したら、もう片方の脚で繰り返してください。毎日1回、両方の脚を2度ずつ伸ばしてください。
梨状筋ストレッチ
梨状筋は、おしりの中の深い場所にある小さい筋です。これが痙攣することで、尻、脚まで疼痛を引き起こし坐骨神経を刺激します。この筋肉は股関節を安定させ、ももの上部を身体から持ち上げ回転させます。これは、脚と股関節部のほとんどすべての移動に関係します。
平らな床に仰向けになり、床に足をつけ膝を曲げてください。左膝に右踝を置いてください。左大腿をつかんで、胸の方へ脚を引いてください。15~20秒そのままにしてください。はなしてもう片方で繰り返してください。
股関節屈筋ストレッチ
股関節屈筋は、骨盤、脚および腹を接続する一群の筋肉です。これらは、体で最も強力な筋肉のひとつで、(股関節部を曲げて脚の動きを制御します。長時間座りっぱなしだったり、競泳を長期にわたり行うことは、股関節屈筋が硬くなり、いずれも腰への影響があります。
股関節屈筋ストレッチでは、床に膝をついてはじめます。椅子あるいは他のしっかりとした家具につかまり、片方の脚を後ろにしてわずかに椅子の方に傾いてください。臀部ブリッジストレッチは、股関節屈筋ストレッチだけではなく、殿筋と腹部を動かします。
仰向けになり、膝をまげ、足を床に着けて腰幅に開きます。背中を平たく床に着け、床からお尻を持ち上げながら息を吐きます。息を吐ききったら、お尻の筋肉を締めてください。息を吸いながら、開始位置へ戻ってください。
大腿四頭筋ストレッチ
大腿四頭筋がかたくなると骨盤と腰の傾斜に影響が及びます。一般的なストレッチでは、踵がお尻に触れるまで膝を曲げることを要求します。しかしながら、このようなストレッチでは、膝関節に対する負荷を増加させてしまいます。かわりに、膝を曲げずに、大腿四頭筋を伸ばしてストレッチを行いましょう。
椅子、ベッドかテーブルの隣りに立って、右脚を後ろに伸ばします。しっかりと椅子につかまり、転ばないようにしてください。体を直立させ、左のおしり(股関節部)を左の踵の上にのせ、脚を前に出してください。お尻の筋肉を締めて、右の脚が右のおしり(股関節部)にそって伸びていることを想像してください。ここでおしり(股関節部)と大腿四頭筋の両方に緊張を感じます。もう片方脚でもこれを繰り返してください。
腰のストレッチ
腰に負荷や力をかけずに、背中と腰の部分の筋肉を伸ばし緩めることが目標です。あおむけになり、おしりをできるだけ壁に近づけます。脚をまっすぐに上げて、壁に近づけてください。腰を床に押しつけてリラックスしてください。
プランキング
腹筋と背筋を鍛えることで、腰を守正しい姿勢で立ち座りできるよう支えます。板は肩、腹筋、背筋、尻の筋肉および脚の大きな筋肉を強くします。
うつぶせになります。肘をついて身体を起こし、肘が肩の下にくるようにります。体をつま先の上で引き上げて、腕立て伏せに似たポジションをとります。ただし肘をついてください。3分そのままにしてください。この目標達成プログラムについては私の記事「30日間のプランクチャレンジ」を参照してください。
隔膜呼吸
すべての腰痛が同じ原因からとは限りません。しかしながら、股関節部、骨盤、肋骨郭および中核筋肉を正しい姿勢に保つことで、体を正しく使い、かつ腰痛を抑えることを助けます。横隔膜呼吸法は、背中を安定させて、かつ必要な牽引力を頸椎かけるよい方法です。
あおむけになり椅子の上に踵をのせてください。股関節部と膝が90度の角度になるようにしてください。最初は、ちょうどよい高さの椅子の椅子が見つかるまで、いろいろな椅子で試してみてください。脚の間に枕を置いてください。
腰を使わずに、床からお尻を数センチ持ち上げ、尻の筋肉と腹筋を刺激してください。このブリッジ姿勢から、肋骨下部が肺を満たすために外へ回転するのを感じて、鼻から深く息を吸ってください。体幹を使って完全に息を吐き、内側に肋骨を回転させてください。5つかぞえるまで息を吸って、7つかぞえるまで息を吐いて、3つかぞえて休んでください。ブリッジ姿勢を維持し、5回繰り返してから休んでください。もう1回繰り返してください。
膝腱および大腿四頭筋フォームローリング
膝腱と大腿四頭筋にフォームローリングを行うことで、筋肉を緩め、深部組織マッサージおよび速い癒合につなげます。これらの筋肉は腰痛の一因ともなります。筋力トレーニングとストレッチ体操を行った後に、毎日、膝腱と大腿四頭筋をフォームローラーにのせて、1~3回程度回転させてください。
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