薬に優る睡眠療法(睡眠セラピー)のメリット

睡眠療法

早分かり -

  • 米国内科学会(ACP)は、慢性不眠症の管理に関する新しいガイドラインを発表しました
  • ACPは、不眠症に対する認知行動療法(CBT-1)として知られる心理療法の一形態を推薦しました。これは、人々が睡眠に関する自分の考えや行動を変えるのを助けるものです
  • CBT-Iは、時に重大なリスクを伴う不眠症薬とは対照的に、最小の副作用でほとんどの人の不眠症を和らげました
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Dr. Mercolaより

睡眠不足はあなたの健康に有害です。また、慢性不眠症の場合は、死に至ることもあります。慢性不眠症の人は、正常な睡眠をする人に比べて、すべての原因について死亡リスクが3倍高いのです。

睡眠はまた、メラトニンを含む重要なホルモンレベルに複雑に結びついており、メラトニンの生成は睡眠不足により妨げられます。これは極めて大きな問題です。というのも、メラトニンが広範囲のガン細胞型の増殖を阻害するとともに、ガン細胞のアポトーシス(自己破壊)を引き起こすからです。

睡眠の欠如はまた、飢餓ホルモンのグレリンを増加させるとともに、脂肪調節ホルモンのレプチンレベルを低下させます。結果として、飢えと食欲の増加が起こるので、過食と体重増加が容易に起こります。

慢性不眠症がもたらす厳しい身体的リスクに加えて精神的、感情的な犠牲を考慮すると、あなたは、少しでもよく眠るために、進んで何か、睡眠薬でも試したいと思うかも知れません。しかし、専門家は、不眠症を緩和できる安全な選択肢があることを示しています。それは心理療法です。

心理療法は慢性不眠症を緩和し、薬物より安全です

米国内科学会(ACP)は、慢性不眠症の管理に関する新しいガイドラインを発表しました。アンビエントやルネスタのような睡眠薬は、心理療法に席を譲るべきです。なぜなら、心理療法も薬も睡眠を改善しますが、心理療法は、リスクがはるかに小さく、コストも小さいからです。

特に、ACPは、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)として知られる心理療法の一形態を推薦しました。これは、人々が睡眠に関する自分の考えや行動を変えるのを助けるものです。CBT-I治療計画は、個々人のニーズに合わせて調整されます。 
この治療法は、ほとんどの人について睡眠の質と長さを改善することが示されました。この新しいガイドラインは、ACPの不眠症治療につて2件の委託審査後に発表されました。1件は、投薬に焦点を当てたもので、もう1つは心理的および行動的治療に関するものでした。

CBT-Iはあきらかに正しかったのです。なぜなら、時に重大なリスクを伴う不眠症薬とは対照的に、睡眠療法は、最小の副作用でほとんどの人の不眠症を和らげましたからです。米国睡眠医学アカデミー(AASM)も、不眠症の第一線治療法として心理療法を推奨しています。

不眠症はよくある症状で、重大な問題を引き起こします

あなたの睡眠の困難な状態が実際に慢性不眠症であるかどうか疑問に思っているなら、慢性不眠症は、睡眠の量または質に不満がある場合と定義されます。それは、睡眠に入れないか、維持するのが困難で早朝に覚醒して睡眠に戻ることができない症状を伴います。

慢性不眠症に分類されるのは、その症状が、あなたが正常に機能する上で重大な苦痛または障害を引き起すことが必須で、しかも、それが少なくとも一週間に3回以上で3ヶ月間続く場合です。

米国成人の10%は不眠症であり、毎年630億ドル以上の生産が失われています。残念なことに、多くの人が睡眠を助ける薬に頼っています。それは良くてもリスキーであり、最悪の場合は実に危険です。

2004年から2015年9月までに公表された無作為、対照臨床試験の系統的レビューの後、ACPは次のように結論づけました。

「不眠症の認知行動療法は、慢性不眠症疾患の有効な治療法であり、初期診療で実施、処方するができます。

CBT-Iは、慢性不眠症疾患の成人および高齢者の一般的な集団治療に有効であるというエビデンスが示されました。

CBT-Iと薬理学的治療法を直接比較するには十分なエビデンスがありません。しかし、CBT-Iは非侵襲性であるため有害事象は少なくなる一方、薬理学的療法は重篤な有害事象と関連する可能性があります。

例えば、催眠薬は認知症や骨折で用いられる場合がありますが、米国食品医薬品局(FDA)は、そのような薬物が認知や行動の変化、運転障害、自動車事故、その他の悪影響を引き起こす可能性があると警告しています。

早死、アルツハイマー病、ガンに関連する不眠症治療薬

長期的な有効性と安全性が証明されていないにもかかわらず、高齢成人の最大43%までが不眠症(や不安症)のためにベンゾジアゼピン(バリウム、ザナックス、アチバン(ロラゼパム)など)をしばしば慢性的に使用しています。

国際ガイドラインでは、ベンゾジアゼピンは短期使用が推奨されています。なぜなら、中止が困難になる禁断症状を引き起こすからです。それにもかかわらず、多くの高齢者は、何年も服用を続けます。数週間という推奨は無視されます。

ベンゾジアゼピン類を3カ月以上服用した高齢成人は、服用しなかった人に比べ、アルツハイマー病のリスクが51%高くなりました。めまい、不安定な歩行や転倒を含む一般的な副作用を持つベンゾジアゼピンは、股関節骨折、思考や記憶喪失の障害を引き起こすことも知られています。

また、睡眠不足 の薬(ベンゾジアゼピンを含む)を受け取った人については、「予測通り、催眠薬を処方された患者は、何も処方されていない患者と比べて、死亡の危険性が大幅に上昇した」ことが示されました。

この関連付けは、患者の健康状態がすぐれないこと 並びに患者が年間18錠未満しか服用していないことも考慮してさえ、正しかったのです。

この研究は、そのような薬を服用している人は、特定ガンのリスクが高いだけでなく、服用していない人に比べて死亡する確率が4倍近く高いことが示唆しました。「睡眠薬のダークサイド」は、Daniel Kripke博士による電子書籍ですが、以下の説明がその中にあります。

「睡眠薬が多くの患者の早期死亡を引き起こしている可能性が高いようです。また、平均年間132錠以上の睡眠薬を服用した人は、新しいガンを発症する可能性が35%高くなります。

理論的には、患者の選択に混乱させる要素または偏りがあり得ます。そうした要素が睡眠薬を伴わない死亡の原因かもしれません。

私たちはそのような偏りの証拠はほとんど何も見つからなかったとしか言えません。しかし、睡眠薬が過剰な死亡やガンのわずかでも引き起こすとすれば、その使用は危険です。

ビタミンD不足により睡眠時無呼吸のリスクが増加

厳密にいうと、慢性不眠症は、他の睡眠障害、医学的疾患、精神障害に結び付けるべきではありませんが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群も睡眠を妨害することができます。閉塞性無呼吸は、鼻から始まり肺で終わる気道の閉塞を指します。

睡眠中に気道が頻繁に閉塞すると、10秒間も呼吸が困難になります。重度の障害のある人は、1時間に30回以上の閉塞があります。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、基本的に機械的な問題から生じます。

睡眠中に舌は、柔らかい口蓋に倒れこみ、柔らかい口蓋と口蓋垂は、あなたの喉の後ろに戻り、効果的に気道を閉鎖します。

止まった呼吸は、通常、大きなあえぎ、いびき、身体の持ち上がりなどで再開します。これらの動きは健全な睡眠を妨げます。それらはまた、重要な器官への酸素の流れを減少させ、不規則な心臓のリズムを引き起こす可能性があります。

閉塞性睡眠時無呼吸の場合、ビタミンDのレベルをチェックしてください。必要があれば、レベルを最適化します。Sleepという雑誌に掲載された最近の研究では、ビタミンDとOSAの重症度との間に有意な逆相関があることが分かりました。

つまり、ビタミンD値が低い人ほど重度の病気でした。さらに、ビタミンDのレベルは、OSA患者では、OSAでない患者と比較して有意に低かったのです。

電子機器を就寝前に使っていますか。スイッチを切ってください

あなたが不眠症に苦しんでいるなら、CBT-Iを試すことができますが、睡眠健全性や就寝時ルーチンを少し変えることもお勧めします。特に、テレビを見たり、コンピュータやタブレットを使用したりする場合です。携帯電話の画面でさえ問題です。その訳は、現代の睡眠に最大の苦境をもたらした原因の1つが、寝室に発光型電子デバイスを導入したことによるからです。

ある調査は、寝る前4時間のiPadの使用(5日連続)と、印刷本の読書とを比較しました。就寝前のiPad使用には、以下の重要な生物学的影響がありました。
眠気を誘発するホルモンであるメラトニンの分泌を減らす

  • 1時間以上の概日リズムが遅延する
  • 就寝前に眠気が少ないと感じる
  • 睡眠時間が8時間であっても、翌朝眠気があって、注意力が弱まる
  • レム睡眠時間が短縮する

携帯電話、タブレット、テレビやコンピュータなどの電子機器から放射される青色光があなたのメラトニンの生成を抑制するので、眠気が起こらないのです。あなたが気付いていないことは、たとえ眠気を感じていなくても、あなたは眠る必要があるということです。あなたは、体内時計を人工的に破壊したにすぎないのです。身体の生物学的ニーズは全く変わっていないのです。

私は以前 Dan Pardi氏と、修復的かつ健康促進的な睡眠を取る方法について話をしたことがあります。Pardi氏は、スタンフォード大学の行動科学部門、オランダのライデン大学の神経内分泌学部門で働く研究者です。夜の青い光を避けることに加えて、就寝前に歯を磨いたり、夜中にトイレを使用したりする場合は、照明を明るくすることに注意してください。

Pardi氏は、あなたのマスタークロックのリズムを「固定」するために、昼間の屋外光の暴露時間を少なくとも30〜60分にすることを推奨しています。屋外に行くのに理想的な時間は、正午前後ですが、朝一番の陽光を含め、昼間はいつでも有益です。午前中に屋外に出られない場合は、屋内の照明を点灯させてください。屋内の照明は、日の出と同じ明るさにすべきです。

太陽が沈んだら、その逆が適用されます。日没後は、できるだけ光を避けて身体がメラトニンを生成するようにします。メラトニンは、眠気をもたらします。

睡眠に問題がありますか

日常生活のルーチンや睡眠場所を少し調整することで、途切れることのない安らかな睡眠を確保することができます。まずは、次の変更を考慮してください。私のリストのNo.1は何でしょうか。これまで述べたように、電子デバイスのスイッチを切ることです。しかも、就寝よりずっと前に切って、寝室には持ち込まないことです。

  • 夕方からは、TVの視聴、パソコン、スマートフォン、タブレットの使用を止めます。就寝前の少なくとも1時間前には止めます。
  • 明るい日光を必ず浴びるようする。あなたの松果腺は、昼間の明るい日光への暴露と夜間の完全な暗闇のコントラストに反応してメラトニンを生成します。1日中暗闇にいる場合は、違いが判らないため、メラトニン生成に適していません。
  • 午前中に日光浴する。あなたの体内システムは明るい光でリセットされる必要があります。朝10~15分日を浴びれば、「その日が始まった」という強いメッセージが体内時計に送信され、後で弱い光信号で混乱する可能性が低くなります。
  • 完全な暗闇または、可能な限りそれに近い中で眠る。ラジオ付き時計からのわずかな光でさえ眠りを妨げるため、夜はラジオ付き時計を何かでカバーするか、すべて部屋の外に出してください。電子機器はベッドから最低90cmは離してください。カーテンや遮光のシェードを使用して窓を覆うか就寝時アイマスクを着用します。
  • 夜の道案内に光源が必要な場合は、低ワット数のイエロー、オレンジ、または赤のランプ電球を取り付る。これらの帯域幅内の光は、白や青の帯域幅のライトと異なりメラトニン分泌を止めません。塩のランプは、このためには便利です。
  • 寝室の温度は21 以下に保つ。多くの人が部屋(特に上階の寝室)を暖かくしすぎています。研究によると、睡眠に最適な室温は15~20 です。
  • 就寝時間の90~120分前に熱い風呂に入る。これにより身体の中心部の温度が上昇し、風呂から出ると急激に低下するため、眠る準備ができたという信号を体に送ることになります。
  • 大きな音がするアラーム時計は使わない。毎朝、揺り起こされるのは、とてもストレスを感じるでしょう。常に十分な睡眠を取っている場合、あなたは自然に目を覚ますので、アラームを必要としないでしょう。
  • 寝室内の磁場(EMF)に注意する。EMFは松果腺とメラトニンの生成を阻害し、他の負の生物学的影響ももたらします。もし、あなたの家の様々な場所のEMFを測定したい場合にはガウスメーターがひつようです。できればすべての電気を消すスイッチを寝室に付けましょう。時計が必要であれば、電池で動くものにします。