Dr. Mercolaより
暑い日にかじる氷は美味しいですが、無性に氷が食べたいのは別の理由があるかもしれません。氷をガリガリと食べてしまうのは異食症、つまり栄養が含まれないものを食べる症状の一種です。
異食症は子供に多く見られますが、氷をガリガリと食べる症状は様々な年齢で見られます。栄養のないものを食べたがる症状は何らかの栄養不足と関連している場合が多いです。
氷を食べる行為は、鉄不足や貧血の可能性があります。氷食症の判断基準は、症状が一か月以上続いているかどうかです。中毒状態の人は、常に氷を求めて、冷凍庫の霜まで食べてしまいます。
氷が食べたいという欲求は、鉄不足の表れかもしれませんし、栄養面の不足と行動が複雑に作用しあって発生します。多くの例では、鉄分を補充するだけで症状が治まります。
しかし、鉄は、体内濃度が高すぎても低すぎても健康に害を及ぼすため、補充には慎重な管理が求められます。
氷を食べることと 鉄不足の関連性を示すことを目的としたある研究では、鉄欠乏性貧血の患者81名の行動を調査し、氷食症が異食症の一例であることを発見しました。
氷食症がある被験者の16%は、鉄分の補充により、ヘモグロビンの値が回復しないうちに急速に症状の改善が見られました。
異食症は数世紀以上前から存在する症状ですが、多くの若い医師たちが、栄養が含まれないものを食べる症状と栄養不足の関連性に気が付いていません。
ある症例研究では、患者も、担当医師も 異食 行動と鉄不足の関連性の重要さに気が付いていませんでした。
研究者グループは、異食行動は血液不足と鉄不足の症状かもしれないため異食行動のある患者では、医師はすぐに慢性の血液不足の可能性を疑うべきとしています。 貧血 は、赤血球が通常より少なく、細胞に届けられる体内の酸素が少なくなって発症します。
酸素がなければ、身体機能がとどこおります。しかし、血液の減少が少しずつ起こった場合、身体機能の変化に気づかず、赤血球の濃度が危険値に達してしまうのです。これが機能性貧血です。
氷をたくさん食べたところで害は無さそうですが、この症状は危険です。
副作用は、たばこや薬剤、 アルコールなどの化学物質への中毒ほど危険ではありませんが、歯にはよくありませんし、貧血の治療を怠ると心臓に負担がかかります。
氷を食べたいがあまり、かき氷機を会社用と自宅用に購入してしまう人もいます。しかし、クラッシュアイスや、かき氷機の氷を食べられないと、一般的な角氷を食べてしまうので、ますます歯によくありません。
中毒症状ですから、氷への欲求は、たばこを吸わずにいられない喫煙者と同じです。角氷を食べると、歯が欠けたり、歯茎を傷つけたり、エナメル質への傷や、詰め物を傷つけてしまう可能性もあります。あごの筋肉も傷めてしまい、一時的に顎関節症になってしまうかもしれません。
鉄分が不足すると氷を食べたくなる理由には、いくつかの説があります。鉄不足による消化器官の症状には、舌の痛み、 口の渇き, 、味覚の変化、飲み込みにくさや痛みがあります。
これらの症状は冷たい氷をかんだりなめたりすることで腫れや不快症状が和らぎます。しかし、研究の結果、鉄不足で氷を食べ過ぎると、認知機能を高める神経機能に変化を及ぼすことがわかりました。
鉄不足や貧血には、認知機能に影響する倦怠感やだるさなどの症状もあります。研究者たちは、氷を食べると、脳の血管系に届けられる酸素の量が増加するような変化があるのではないかと仮説をたてました。
こうして血液と酸素が増して、注意力や処理スピードが向上するのです。
この研究では、氷を食べると鉄不足の人では 処理スピードが増加し、健康な人では変化がなかったことを示しました。
さらに、鉄不足の人に、水を飲んでもらった場合と氷を食べた場合の試験結果の比較もしています。研究者たちは、脳への血流が増加する反射を飛び込みの反射と関連付けています。
研究の著者である、ペンシルバニア大学臨床心理学者Melissa Hunt医師は反射について次のように述べています。
「くじらやイルカの飛び込む様子について考えてください。水が冷たいので、血管が収縮し、血液が内臓や脳に流れます。これは一種の退化ですが、人類も飛び込み反射があるのです。
この反射は、冷たい水が顔に触れることで起こります。脳への血流が増え、認知機能の向上につながります。Hunt医師は、被験者の氷を食べたい欲求が活力を得たいからなのか、単に食べたいだけなのかについては聴取していません。
鉄不足の原因は、貧血がある場合も無い場合もあり、様々です。消化管のポリープ、経血の量が多い、出血性の胃潰瘍、 消化管のバイパス手術など鉄分の吸収が妨げられるような外科的措置などのせいで血液量が減少して発症する場合があります。
このような理由で、貧血の原因となっている症状と貧血自体による長期間のダメージにつながるのです。まず、血液減少の本来の原因を探る必要があります。細胞へ届けられる酸素量が低下すると、慢性の倦怠感、息苦しさ、めまい、心拍が早い、または不整脈などの症状が出ます。
長期の鉄不足による合併症や慢性の貧血は、心不全につながります。酸素を細胞に届けるためには、より多くの血液を送り込む必要があり、心拍数が上がったままになるためです。
子供たちも鉄欠乏性貧血のリスクがあります。妊娠中の場合、早産や 低体重の可能性があり、子供にとっては良い状態ではありません。慢性的に貧血のある子供では、発育不良や感染症にかかりやすいなどのリスクがあります。
対策をする前に、鉄不足かどうか確認することが大切です。 鉄分が多すぎると 少ない場合よりも体に害となります。どの栄養素もそうですが、正しく機能するための適量があるのです。
貧血には3つの根本的な原因があります。血液の不足、血球の産生の障害、血液細胞の破壊です。どの場合も貧血の診断だけでなく、血液の減少の原因を突き止めることが重要です。単に鉄分を補充しただけでは、症状が悪化してしまう場合もあります。
鉄分の不足、または摂り過ぎを確認するには、血清フェリチン検査という簡単な血液検査で可能です。鉄分を運ぶ分子を測定します。フェリチン濃度が低ければ鉄分も少ないということです。理想的な血清フェリチン濃度は、20-80 ng/mlです。最大許容濃度を300 ng/mlと定める研究所もありますが、それは高すぎると私は考えています。
鉄不足を診断するのに重要なもう一つの検査に、全血球計算(CBC)があります。血液細胞のサイズ、数、体積を測定する検査です。血清フェリチン濃度と合わせて、自己免疫による赤血球への攻撃や、酵素、ヘモグロビンの異常や血栓などが疑われる場合には、ほかの検査も実施します。
鉄分の量に応じて、食習慣で鉄分の不足を解消することもできます。食品から得られる鉄分は2種類、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄は、肉や魚介類に含まれます。
果物、野菜、ナッツ類など、植物に含まれる鉄分は非ヘム鉄です。植物系の食品に含まれる鉄分は、ヘム鉄ほど吸収が早くありませんが食事で得られる重要な栄養分です。ヘム鉄、非ヘム鉄にかかわらず、鉄分を含む食品を食べる際は、吸収を高めるためにビタミンCを多く含む食品も摂りましょう。
トマト、黄色や赤のパプリカ、柑橘系の果物、ケール、ブロッコリー、芽キャベツなどがビタミンCを多く含んでいます。さらに、鉄分の多い食品をご紹介しましょう。
鉄分を摂るために食事以外の方法が必要なら、鉄分が立ちない原因を確認したうえでサプリメントの利用も考えましょう。硫酸鉄ではなく、ビスグリシン酸鉄のサプリを選びましょう。最も一般的な処方量は325 mgの硫酸鉄を一日3回で摂る方法です。しかし、副作用のせいで、飲むのをやめてしまう患者も少なくありません。
鉄分補充の処方剤を複数比較すると、溶けるまでの時間や吸収されやすさなどに差があることがわかりました。処方剤の種類やサプリメントに使われている鉄の型が重要な要因です。
最新の研究では、鉄分を多く含んだミネラルウォーターの吸収性が、鉄分の処方剤と同等であるという結果が出ています。消化管への副作用が少ない、用量も少なくて済む、安価であることから、ビスグリシン酸鉄が優れています。
ビタミンDは、「erythropoiesis」と呼ばれる赤血球生成の過程に影響している可能性があります。550人以上の被験者の血液サンプルを調査したある研究では、ビタミンD不足と貧血のリスクの増加の関連性を示しています。
ビタミンDは、消化管の健康、うつ、脳の健康、代謝機能、ガンなど身体機能の様々な面に役立っているため不思議ではありません。ビタミンD濃度を調整するということは、全身の健康を整えるために、簡単にできて、効果的で安価な方法です。
国民の約50%が ビタミンD欠乏 や不足気味な状態であると推定されます。ビタミンDの調整は、日光を浴びることが最も理想的な方法です。治療効果がある濃度に達しているかを調べるには、検査しかありません。ビタミンDの濃度が変われば、病気の予防や健康促進に大きな差が出ます。
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