Dr. Mercolaより
食生活は体重に大きな影響を与えますが、運動もまた重要な要素であることに変わりありません。健康を保つための大きな力となるのは結局の所、運動です。運動は体に様々な影響を与えます.
効果を一点だけに絞るというのは事実上不可能です。
最新の研究では、運動中に放出される 脂肪燃焼ホルモンの働きについて示されています。イリシン(FNDC5)というこのホルモンは、脂肪を燃焼し続けて、体に脂肪を蓄積させません。Epoch Timesは次の様に報じています。
「イリシンは、白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変えるのに重要な働きをする遺伝子やタンパク質の活性を促すと見られています。脂肪燃焼細胞が使うエネルギーの量を大幅に増加させるので脂肪燃焼作用が高まることもわかっています。
実験の結果、イリシンには脂肪細胞の形成を20-60%抑える作用があることがわかっています。通常は、体内で産生されるイリシンの量はごくわずかです。産生量を増やすには運動が鍵となります。
イリシンをマイオカイン(サイトカイン、筋肉から放出される伝達物質)として分類している過去の研究では、イリシンには次に示すような健康効果があることが示唆されいます。
テロメアが短くなると、免疫機能の低下、糖尿病、神経変性疾患、アテローム性病変やDNAの損傷など様々な病気のリスク要因となる。
イリシンは、10代の女性の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のマーカーとして早期診断に役立つ可能性もあります。医師による病状の診断が簡単になり、早期発見、治療につながります。
PCOSは、生殖年齢にある女性(思春期から更年期)の多くに見られる内分泌系、代謝の疾患です。生殖年齢にある女性の約10-20%が罹患している症状です。
主な症状は卵巣にあらわれますが、これらの異常の原因は全身的なものであり、実は代謝の異常によるものです。PCOSの診断基準は次のとおりです。
理由を問わず、正常な排卵を妨げ、「多嚢胞性」卵巣を引き起こすホルモンの異常により、アンドロゲンの分泌が増えます。一方、アンドロゲンの分泌が増加することで正常な排卵がさらに妨げられます。
肥満がアンドロゲン過剰に関係していることを示唆するエビデンスがあります。肥満女性では、副腎に異常がなくてもアンドロゲンの分泌が増加するのです。
当ウェブサイトにPCOSに関する記事を寄稿していただいたJohn Lee博士は、子宮が生体異物(エストロゲン作用を持つ環境汚染物質)にさらされることが要因ではないかと考えています。
Annual European Society for Pediatric Endocrinology Meeting(世界産科婦人科学会議)で発表されたギリシャ人研究チームによる研究によると、PCOSと診断された23人の10代の若い女性のホルモンの状態を、17人の同年齢、同じBody Mass Index(BMI)の健康な女性と比較しています。
PCOSに罹患している女性では、イリシンの値が非常に高く、テストステロン(PCOSのマーカー)の値が高いこととの関連性が指摘されました。イリシンの役割に関しての研究が進み、治療内容の改善や選択肢が増えることが望まれています。
治療効果が期待できる重要な対策として、炭水化物の正味の摂取量(炭水化物の全体量から繊維質を除いた量)を減らす方法があります。体重を減少させインスリンの感受性を高めることができるためです。PCOSの主な問題点はインスリン抵抗性なので、余分な糖分や穀物の摂取を控えれば、病状のコントロールに役立ちます。
PCOSの問題の根底にあるのは、インスリン受容体の感受性が著しく低下しているせいだと私は考えています。食事を控え、栄養的ケトーシス状態にすることで感受性が回復すれば問題は解消されるはずです。
ビタミンDの濃度を適切に保つことも、重要なステップです。プロゲステロンの作用が期待できます。詳細については、Lee博士のPCOSに関する記事をご覧ください。
この記事の本題に戻りましょう。イリシンは、運動による体重減少に重要な役割を持つと考えられます。前述のとおり、この効果において重要なのは、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に変換され、そのおかげで脂肪が蓄積されずに燃焼されるようになるという点です。
動物をモデルにして計算した場合、50 gの褐色脂肪(ボランティアの参加者の平均値以下)では1日の摂取カロリーの約20%の燃焼が可能であり、褐色細胞が多いほど、大きな効果が期待できます。
褐色脂肪の量が多い人が存在し、褐色脂肪の活性と代謝量による健康の度合いには直接の関連が見られることがわかりました。一例をご紹介しましょう。
新生児は、体温維持のために褐色脂肪の蓄えがありますが、大人になると褐色脂肪の蓄えはなくなります。褐色脂肪は、主に首の血管の周囲(体を温める目的)や、内臓脂肪組織に白色脂肪に混じるように分布しています。蓄えがなくても心配はいりません。褐色脂肪は増やすことができます。
運動に加えて、褐色脂肪は寒冷療法によって活性化することができます。氷水での入浴や冷水シャワーなどで体を低温にさらす方法です。
興味深いことに、褐色脂肪の働きは脂肪というより筋肉に似ており、脂肪燃焼作用の説明がつきます。
Bruce Spiegelman博士は褐色脂肪についての数々の研究を発表しており、その中のある研究では、褐色脂肪の産生を促す「メインスイッチ」にあたるものを紹介しています。スイッチの役割をする分子は、PRDM16として知られており、成長中の細胞が褐色脂肪になるか筋幹細胞になるかを決定づけます。
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞は、起源が全く異なるのです。褐色脂肪は、より筋肉に近いといえます。ハーバード大学医学部付属ジョスリン糖尿病センターの研究グループは、さらに別の褐色脂肪のトリガーを発見しました。BMP-7という骨形成タンパク質で骨の成長に係わっている成分です。このBMP-7が褐色脂肪の成長因子として機能します。
前述のとおり、イリシンはマイオカイン(筋肉由来の化学伝達物質、)の一種であるタンパク質です。マイオカインは抗炎症作用が高く、研究の結果、メタボリックシンドロームやガンに対抗する重要な役割を果たすことを示しています。
食事は、あらゆる組織に栄養分を届けるための最も大きな要素です。糖分/フルクトース、穀物、炭水化物の正味量が多い食品、トランス脂肪酸、加工食品全般などの炎症性の食品を食べると、炎症性のサイトカインが生成されます。
残念ですが、食生活の乱れが原因となって起こった問題は、単純に運動をすれば解決できるわけではありません。どれだけ運動しても、食生活の乱れから発生したサイトカインが原因である炎症をとどめる量のマイオカインを生成することはできません。
それでも、健康的な脂肪燃焼を促す食事との組合せでマイオカインの働きを最も高くするには、スーパースロー筋肉トレーニングのような高強度トレーニングが必要です。定期的な高強度インターバルトレーニング(HIIT)も効果がありますが、マイオカインの効果をより高めるには、スーパースロー筋肉トレーニングが最適です。(どちらのトレーニングでも、体力アップやアンチエイジング効果のある人成長ホルモン(HGH)の分泌を促します。)
高強度筋力トレーニングは、心血管系への効果など、HIITと同じ効果が得られ、さらに筋肉疲労が急速に深層に達するという利点があります。筋肉疲労がきっかけとなり、収縮性のある組織の合成が促され、抗炎症効果のあるマイオカインをはじめ、関連する代謝成分が生成されます。高強度筋力トレーニングの詳細については、過去の記事のスーパースローウェイトトレーニングをご覧ください。
減量して、より良い健康状態を目指すなら、運動が一番の方法です。ですが、運動すれば何を食べても良いというわけではありません。脂肪を燃やす一番良い方法は、食事に配慮することです。食べるタイミングが大切です。体重やインスリン/レプチン耐性で悩んでいるなら、インターミッテントファスティングを強くお勧めします。
食事の内容について、脂肪燃焼に大切な2点は、炭水化物の正味量を減らすこと、体に良い脂肪を摂ることです。体内での代謝が、体に蓄積された脂肪を燃やす代謝に変わります。食事の改善点の詳細は最新の 栄養摂取プログラムをご確認ください。
日頃の食事で、炭水化物、タンパク質、脂肪の割合を正確に計上するのは大変です。適切な状態を保つために、栄養の記録を取りましょう。私のお勧めは、cronometer.com/Mercolaです。あらかじめ栄養的ケトーシス用に設定されています。
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