幸福が伝染するように痛みは伝染するのか?


痛み

早分かり -

  • 最近の研究で、マウス間で匂いによって苦痛が伝わることがわかった。肉体的苦痛は幸福と同様に伝染するかもしれないことを示唆している。薬を減らしている薬物禁断や鎮痛薬の研究を行う科学者にとってこの発見は重要な意味を持つ。
  • 人間同士では、幸福は感染のように広がります。

    明るく楽しい隣人がいたり、幸福な友人が周りにいると、自身の幸福度が、それぞれ34%と25%増大することがわかっている。

  • 感謝の気持ちを持ち、愛情深い強い絆の人間関係を持つことでより幸福の度合いは高くなる。愛情深い人間関係を築く能力は、人生に対する満足感を予測できる唯一の要素である。
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Dr. Mercolaより

最近の研究で、マウス間で匂いによって苦痛が伝わることがわかりました。このことは、肉体的苦痛は幸福と同様に伝染するかもしれないことを示唆しています。つまり、痛みは伝染するのです。

研究者が、人間同士で同様のことが起こるかどうかは示唆されていませんが、この発見は、薬物禁断(痛みへの忍耐力が低下する)や、様々な薬剤の中でも特に鎮痛薬の研究を行う科学者にとって、この発見は重要な意味を持っています。STAT Newsは次の様に報じています。

「研究者は現在、過去の研究でマウスの痛みについて見落としがなかったか考えています。比較の対象となっている別のマウスに、痛みが伝染していた可能性があります。

そうであれば、薬物禁断から鎮痛薬に至るまで、研究に影響があった可能性があります。

『これは、ほとんどの研究者が考慮に入れていない点です。』と述べるのは、トロント大学ミシサガ校で疼痛研究を行うLoren Martin博士(この研究には不参加)です。

この実験の結果は実験室のマウスだけのことではありません。もしもですが、同じことが人にもあてはまるなら、疼痛研究を行う医師達は、患者だけでなく家族やルームメイトにも話を聞いてみるべきです。Martin博士は尋ねます。『慢性の痛みのある患者との生活で影響を感じていませんか?』

感情や社会的なきっかけが苦痛の感じ方に影響する可能性

イェール大学で疼痛研究を行うRobert Kerns博士(元退役軍人省、疼痛研究部門長)は、この実験結果は、感情や社会的要因が 痛みの感じ方に影響するという、これまでにも既に受け入れられている考えを実証するものであると述べています。Kerns博士は次の様に述べています。

「誰かが痛みを訴えている場合に、その痛みが本物ではない、心理的なものだと決めてしまうことには問題があります。痛みをもたらす生物学上の原因を解明し理解するための技術が開発されていないだけなのです。

臨床医にとって、患者が痛みを感じていることを理解し、生物医学の限界を認めることが非常に重要です。

さらに、Prevent Diseaseは、次のように報じています。

「『人間も匂いに反応しているのかどうかはわかりません。ですが、気づいていない匂いに反応して行動を変えることを示す実験結果があります。』と、共著者でチームのリーダーのAndrey Ryabinin博士は述べています。

『しかし、眼からの情報は人にとって非常に重要で、慢性の痛みを抱える患者が痛がる様子を見れば、私達はすぐに反応します。』

彼らが、慢性の痛みのある患者と一緒に暮らす人は、自分も慢性の痛みを発症するリスクがあり、この研究は重要な意味を持っていると彼は言います。

『他人の状況を敏感に感じ取るがどうかとも密接に関係しています。』とアトランタ、エモリー大学で共感の研究を行うFrans de Waal博士は述べています。他人の状況に共感する性質は、新しい状況に順応し、反応するために非常に重要なことであると彼は付け加えています。」

幸福感とは最も喜ばしい伝染である

人間同士で、何らかの方法で痛みが伝染するというのは興味深い考えです。研究者達が、幸福についても人々の間で感染のように広がると結論づけているのでなおさらです。

ある幸福についての研究者によると、幸福という感情は、ソーシャルネットワークを通して人から人へ伝わっていきます。

明るく楽しい人と生活すると、自身の幸福度が、25%増大し、効果が1年間は継続することがある研究でわかりました。少女ポリアンナがお隣さんなら、幸福度はさらに34%増大するでしょう。

幸福の感染は、幸福な人と元々交流のある人の配偶者や友人へと、どんどん広がっていきます。

驚いたことに、友人の友人の幸福によって得られる影響は、5,000ドルの昇級を受けるより強いことがわかりました。ハーバード大学の医療社会学者で共著者のNicholas A. Christakis博士は述べています。

「あなたの感情の状態は自身の選択と行動と経験に依存すると思っていませんか。

ですが、あなたに直接関係のない他の人々の選択と行動と経験にも依存しているのです。幸福は伝染します。

幸福とは?

幸福 が伝染するということを知ると、なるべくたくさんの人と共有したくなりますね。実際は、幸福とは何なのかについての捉え方はたくさんあります。マサチューセッツ総合病院、精神科の助教授であるNancy Etcoff博士は次の様に述べています。

「私達は、快楽の状態、認識の状態、または一般的な人生観という少なくとも3つ方法で幸福を捉えています。

幸福とは、楽観的である、喜びを感じる、楽し、安心、または感謝の気持ちなどの考え方であり、また、単に心の在り方であるとも言えます。」

最も幸福感をもたらす要素にどんなものがあるかを調査すると、感謝の気持ちがトップです。例えば、外見の美しさやお金によって得られる幸福感には限界があります。ハーバード大学は、述べています。

「結局は、自分が持っているものに感謝する気持ちが一番幸福をもたらすものかもしれません。

宝くじの当選者、対麻痺の患者、四肢麻痺の人の感情面での豊かさを比較した古い研究では、現状の幸福感は、ほとんど同じで、最初の思いがけない利益やショックが過ぎ去ると、変化に慣れて、そもそもの快楽の状態に戻りました。」

他人と、強い絆の健全な関係を持つことがおそらく幸福のためには最も重要な要素です。愛情深い人間関係を築く能力は、人生に対する満足感を予測できる唯一の要素であることを示す研究報告もあります。

幸福感が健康を増進する

研究者グループはまた、幸福感が身体に エピジェネティックな影響 をもたらすことも示しています。炎症を起こす遺伝子の発現が少なく、抗ウィルス、抗体反応を示しました。従って、本質的には、幸福と喜びを広めると、より良い健康状態を広めていることにもなるのです。

興味深いことに、不幸も伝染するとはいえ、幸福の「伝染性」は不幸の伝染よりもはるかに強力です。周りに、苦しんでいる人がいるならば、どうすべきか考えてみてください。また、悲観主義も健康に大きく影響します。

ある研究によると、悲観的な考え方では、平均寿命から14年命を縮めてしまい、65歳に到達する前に死亡する確率が25%にまで上昇します。

感謝の気持ちを持つことは、健康に良い効果がたくさんあります。ストレスにうまく対処できる能力、不安が和らぐ、睡眠が改善する、心臓が健康になるなどです。

数々の研究で、感謝の気持ちにより、全身の器官系へ、次の様な測定可能な効果を引き起こすことを示しました。

  • 情緒に影響する神経伝達物質(セロトニン、ノルエピネフリン)や認知機能、快楽に関する神経伝達物質(ドーパミン)
  • 性ホルモン(テストステロン)
  • 社会的行動を促すホルモン(オキシトシン)
  • 血圧、心拍数や脳波の波形
  • 血糖値

幸福度を増す習慣

幸福は時に見つけにくいものですが、楽しみ、喜び、満足感を得やすくなる方法があります。いつも幸福な人というのは、いつも悲しい気持ちで疲れ切った人にはない習慣を持っています。恨みを持たない、人に親切にする、大きな夢を持つ、小さなことにくよくよしないなどです。

以下のリストは、心理学者による、幸福感を高めるために必要な項目です。

幸福になることを目指す
幸せになるための第一歩は自分で選ぶことです。あなたは、幸せになる必要があり、なって当然だと思うことです。(本当に皆が幸福になるべきです。)楽しくしようという気持ちだけでも大きな差が生まれるという研究結果が出ています。
何をすると自分が楽しいかを知る
最近楽しい(子供の頃の何の不安もない楽しい気持ち)と感じたのがいつか思い出せない場合、どうすれば楽しいと感じるのかすら忘れてしまっている場合があります。何を楽しいと思えるか時間をかけて考えましょう(家族などのわかりやすいものではなく、小さなことや趣味や、興味のあることなどが良いでしょう)。
幸福になることを最優先に
空き時間ができたら、楽しいことをして過ごしていますか?日頃行き届いてない家事や、終わっていない仕事などをやっていませんか?後者の場合、「少々病的な状態」であると、幸福に関する研究を行うRobert Biswas-Diener博士は述べています。
楽しいひとときを心ゆくまで
楽しいひとときを持つことのできている人は、どんな出来事が起こって日でも、より幸福感が高い傾向にあります。楽しいひとときがどんな時なのか楽しめていない場合は、どんな時に幸福を感じたか、その時に楽しめたかどうかについて日記をつけると良いでしょう。

 

日々の生活の中にどんなに多くの幸せが隠れていたのかに気づいて驚くかもしれません。 コーヒーの香り、柔らかいベッドの感触、一日の始まりを告げる朝日など、楽しめることがたくさんあります。

不要かつ楽しくない誘惑に時間を奪わせない
一日には決まった時間しかありません。不要な非生産的な誘惑に時間を奪われないようにしましょう。メール、ツイッター、Eメールなどは生きることの本当の喜びを遠ざけます。必要名場合は、ソーシャルメディアは完全に絶ちましょう。
Facebookの友達のウォールを見て幸せになれると思いますか?考えて見てください。ある研究は、Facebookを見る時間が長くなるほど、瞬間ごとの幸福感は減少し、満足感が減ることを示唆しています。
思考の一つ一つをポジティブに
ポジティブなことを考えてにっこりするだけで幸せで元気な気分になることができます。( 無理に笑顔 を作ると逆に気分が沈みます。)本物の笑顔では、目の周囲の筋肉が運動し、脳の活動に影響を与え、気持ちが高まります。
ものではなく思い出を大切に
ある研究は、ものを所有することよりも何かを経験する方が幸福感を得やすいと示唆しています。新しいものを手に入れた喜びは薄れますが、経験によって得られた感動はその時だけでなく後になっても変わりません。
運の悪い日に備えておく
運悪く気分が沈む様な出来事が起こった日には、元気を取り戻すための対策を用意しておきましょう。仲のいい友人に電話する、コメディを見る、ジョギングするなど、何が効果的かは自分が一番よくわかっているはずです。
目的意識を持つ
幸福は、何も楽しいことだけではありません。目的意識を持つことも含まれます。「eudaimonic well-being(人生の意味に関わる幸福)」というアリストテレスの言葉は、目的意識や、人生の意義、自己実現のための活動によってもたらされる幸福感を表しています。仕事でも、ボランティア活動でも、お料理のクラスからでも得られる感覚です。
知らない人とでもコミュニケーションを
幸福感を得るには、有意義な交際関係を築くことが重要です。しかし、多くの人が「social snacking(つまみ食い的な人付き合い)」をしており、幸福であると報告しています。Social snacking(つまみ食い的な人付き合い)とは、日常の、ちょっとした人との交流のことで、知らない人とのコミュニケーションも含みます。
日常から離れる
日々の軋轢から離れ、充電の時間を取ることも重要です。週末だけの外出でも気晴らしになります。なるべく遠くへ出かけると良い思い出作りになりますね。このような出来事が良い記憶となり、幸福感となるのです。専門家によると、理想的には、近場でもかまわないので2週間は休暇を取ると良いそうです。
屋外で過ごす
明るい気持ちでいるためには、明るい太陽の光を浴びることが大切です。定期的に日光を浴びると、高揚感や活力のもととなるエンドルフィンが放出されます。定期的に日光を浴びると血中の ビタミンD 濃度を調整することも可能です。ビタミンD不足は、 季節的情動障害(SAD)や慢性のうつとの関連が指摘されています。
人に親切にする
週に3-5回は人に親切にするようにすると、不思議なことに、幸福な気持ちになれるのです。誰かを褒めたり、列で順番を譲ったり、コーヒーをごちそうするなど、ちょっとした親切が伝染し、みんなが幸せな気持ちになれるのです。