ミトコンドリアと健康


ミトコンドリアと若さ

早分かり -

  • ミトコンドリアは細胞内の小さな器官で、もともとは細菌に由来すると考えられている多くの細胞にミトコンドリアが数千単位で含まれており、細胞の体積の15-50%に達する身体のエネルギーの90%をミトコンドリアが産生している
  • ミトコンドリアの健康への影響は、特にガンにおいて多大であり、ミトコンドリアの代謝活動を最適化すればガンの治療に効果がある
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Dr. Mercolaより

ミトコンドリアを知らない方、いませんか?健康を握る鍵といっても過言ではありません。生物医学が専門のRhonda Patrick博士は、ミトコンドリアの代謝活動や代謝異常とガンの相互作用について研究しました。

研究の一部は病気の初期に見られるバイオマーカーの特定です。例えば、DNAの損傷はガンの初期に見られるバイオマーカーです。さらに、DNAの損傷を回復させる効果のある微量栄養素の特定を試みています。

また、細菌の私が力を入れて研究しているミトコンドリアの機能と代謝についての調査もしています。Lee Know医師の著書、「Life - The Epic Story of Our Mitochondria」(生命—ミトコンドリアの壮大な物語)は、このインタビューを聞いてミトコンドリアのことを知りたいと思った方には最適な入門書です。

ミトコンドリアの健康への影響は、特にガンにおいて多大であり、ミトコンドリアの代謝活動を最適化すればガンの治療に効果があると私は考え始めています。

ミトコンドリアの代謝活動を最適化する重要性

ミトコンドリアは細胞内の小器官で、もともとは細菌に由来すると考えられています。赤血球と皮膚細胞にはほとんど含まれず、生殖細胞は100,000個、多くの他の細胞には2,000個のミトコンドリアが存在します。ミトコンドリアはまた、身体のエネルギー源でもあります。

体内の器官が適切に機能するにはエネルギーが必要で、そのエネルギーをミトコンドリアが産生しているのです。

ミトコンドリアの機能は体内で起こる活動の心臓部であり、ミトコンドリアにとって必要な栄養素や前駆体を適度に摂取し、ミトコンドリアの機能が最適化されて機能不全を予防できれば、健康や病気予防に大きく役立ちます。

例えば、ガン細胞の普遍的な特徴として、正しく機能するミトコンドリアの数が著しく減少することによる深刻な機能不全があります。
化学博士であるOtto Warburg医師は、Albert Einsteinの旧友でした。Warburg医師は専門家の間では、20世紀の偉大な生化学者として著名です。

ガン細胞のエネルギー源がグルコースであることを発見、1931年にノーベル賞を受賞しました。「Warburg効果」と呼ばれる現象ですが、悲しいことに、今日までほとんどの専門家に実質無視され続けてきたのです。

ケトン食療法でミトコンドリアの健康を改善すれば、多くのガン、特に3-ブロモピルビン酸などのグルコース発酵毒が関わるガンに効果があると私は強く信じています。

ミトコンドリアのエネルギー産生とは?

ミトコンドリアがエネルギー産生には、呼吸によって得られる空気中の酸素と摂取する食物に含まれる脂肪、グルコースが必要です。

呼吸と摂食、これら二つの活動が、酸化的リン酸化と呼ばれるプロセスで連携して機能します。これこそがATPとしてエネルギーを産生する際にミトコンドリアが利用する工程です。

ミトコンドリアには電子伝達鎖があり、分解した食物から得た電子を呼吸で得た酸素と結合して最終的に水に変換します。

この工程で、プロトンはミトコンドリア内膜から押し出され、ADP(アデノシン二リン酸)からATP(アデノシン三リン酸)を再合成します。ATPは全身でエネルギーを運搬しています。

しかし、この工程は、細胞にダメージを及ぼす活性酸素種(ROS)や、核DNAへ変換されるミトコンドリアDNA といった副産物を生み出してしまいます。

つまり、代償があるということです。エネルギーを生み出す過程の中で、生成されるROSから受けるダメージにより身体は老化していきます。身体の老化の速度は、ミトコンドリアが正しく機能しているか、適切な食事でダメージをどれだけ最小限に抑えられるかに大きく左右されます。

ガンにおけるミトコンドリアの役割

ガン細胞があると、ATP産生の副産物として発生する活性酸素種が、細胞の自滅の過程であるアポトーシスを導く信号を送ります。

毎日新しいガン細胞が作られているため、これは良いことです。ダメージを受けた細胞を殺すことで、不要な細胞を排除し、健康な細胞と入れ替えることができます。

しかしガン細胞は、この細胞自滅の働きに耐性をもち、防御機能があると、Warburg医師は明確に説明しており、さらに、ガンを代謝性疾患として広範囲な研究を進めてきたThomas Seyfried氏も同様の説明をしています。

Patrick博士は、述べています。

「化学療法剤の機序の一つは、活性酸素種を作り出すことです。活性酸素種は、細胞を傷つけガン細胞を死滅させます。
この理由は、ガン細胞というのはミトコンドリアを使っていないので、活性酸素種も合成できません。突然ミトコンドリアの働きを活性化させて活性酸素種を爆発的に合成するとガン細は細胞死に向かって予定されているのと同じです。あとは死のみです。

夜遅い時間の食事を避けることの効果

私はだいぶ前からインターミッテントファスティングのファンです。それにはいくつか理由があり、長寿や健康のため、そしてガンの予防と治療効果も得られるかもしれないのです。その仕組みは絶食がミトコンドリアに与える効果と関係があります。

既にお話しましたが、このようなミトコンドリアが関係する電子の移動による大きな副作用は電子伝達系から電子が漏れて酸素と反応し、フリーラジカルである超酸化物を形成してしまうことです。

スーパーオキシドアニオンは、酸素分子が一電子還元されたもので、活性酸素の前駆物質であり、酸化の連鎖反応を媒介します。このような酸素のフリーラジカルは、細胞膜の脂質、タンパク質の受容体、酵素、DNAを攻撃し、ミトコンドリアを破壊します。

フリーラジカルには身体に良いものもあり、細胞が適切に機能するためには必要なものです。問題となるのは、フリーラジカルが大量に産生される場合です。これは、多くの人に起こっていることで、様々な病気、特にガンの原因となります。この問題の解決策は、二つあります:

  • 抗酸化物質を増やす
  • ミトコンドリア内のフリーラジカルの発生を抑える。

ミトコンドリア内に産生されるフリーラジカルを減らすには、過剰な栄養を摂らないことです。カロリー制限 は一貫して多くの治療効果があり、これには議論の余地がありません。食べても良い時間帯を設け、自動的に摂取カロリーを制限できるので、インターミッテントファスティングは効果的なのです。

特に、就寝中は代謝が最も低い時間帯なので、寝る前の数時間は食べないようにするとより効果的です。

少々複雑に聞こえるかもしれませんが、つまり、寝ている時はカロリーの消費が最も少ないため、寝る前に食べるのは避けた方が良いということです。この時間帯に過剰な燃料を蓄えると、過剰なフリーラジカルが産生され、細胞にダメージとなり、老化を加速、そして慢性疾患のリスクを増してしまうのです。

ミトコンドリア機能改善のための絶食方法

Patrick医師は説明しています。

絶食により、エネルギー産生の材料が脂質と蓄積脂肪だけになると、細胞は結果的にミトコンドリアを使うしか無くなるのです。

身体中で脂肪からエネルギーを産生する仕組みはミトコンドリアにしかありません。そして絶食するとミトコンドリアを活性化するのに役立つのです。

また彼女はまた、インターミッテントファスティングやケトン食療、ミトコンドリアを活性化させる特定の薬剤がガン細胞を死滅させる仕組みにおいてミトコンドリアの活性が多大な役割を果たしていると考えています。

また、二度目になりますが、活性酸素種が爆発的に合成されると状況が一変し、ガン細胞を死滅させるのです。

ミトコンドリアに栄養を与える

栄養面では、Patrick 氏は、ミトコンドリア酵素が適切に機能するために必要な重要な補助因子として、以下の栄養素の重要性を強調しています。

  • コエンザイムQ10、ユビキノール(誘導体)
  • L-カルニチン。脂肪酸をミトコンドリアに運びます。
  • D-リボース。ATPの原料です。
  • マグネシウム。
  • オメガ-3脂肪酸
  • リボフラビン、チアミン、ビタミンB6などのビタミンB群。
  • α−リポ酸(ALA)

Patrick博士は、述べています。

「私は様々な理由から、自然食品からできるかぎりの微量栄養素を摂りたいと思っています。吸収を助ける繊維と一緒に摂る。各栄養素が、適切な比率で含まれている。過剰摂取はあり得ない。バランスが適切である。そして、おそらくまだ発見されていない栄養素も含まれている。

注意点としては、幅広い種類の食品を食べ、適切な微量栄養素を摂るようにしましょう。このような理由から、ビタミンB群のサプリメントを摂ると良いと思います。

私も同じ理由でビタミンB群を摂取しています。年を重ねればビタミンB群を充足させるのは簡単ではありません。細胞膜が固くなってくるせいです。このせいでビタミンB群が細胞内に取り込まれる方法が変わります。ビタミンB群は水溶性なので、脂肪中には蓄積できません。過剰摂取による副作用もありません。あったとして、いつもより尿が増える暗いです。ですが、それも良い効果だと思います。

運動でミトコンドリアの若さを保つ

運動は、ミトコンドリアの健康を促進し、ミトコンドリアの活動を促します。前述しましたが、ミトコンドリアの活動が活発になると、シグナル分子として機能する活性酸素種を合成するという副作用が起こります。

そのシグナルの一つが、ミトコンドリアの合成を伝えるシグナルです。運動すれば、身体がエネルギーを必要とするため、それに反応してミトコンドリアが合成されます。

老化は避けられません。ですが、身体年齢は実年齢とはかなり異なるものです。そして、身体年齢を左右するのがミトコンドリアの働きです。Patrick博士は、身体年齢の進行に個人差があることを示す最新の研究結果を引用しています。

研究者グループは、22歳時、23歳時、38歳時のテロメア長、DNAの損傷、LDLコレステロール、ブドウ糖の代謝、インスリン感受性など12以上の様々なバイオマーカーを測定しました。

「この結果わかったのは、38歳の人がバイオマーカーの状態によって、肉体的に10歳若く見えたり、10歳上に見えることもあると言うことでした。同じ年齢でも、肉体的な老化のスピードは違っていたのです。

実際、老化のスピードが違う人の写真を知らない人に見せて実年齢を推測してもらうと、面白いことに(これも本の中身ですが)、実年齢ではなく肉体年齢の方が答えとして多かったのです。」

実際の年齢とは関係なく、見た目の年齢は生物学的バイオマーカーに対応しており、それを決定づけるのはミトコンドリアが健康かどうかです。大切なことは、老化は避けられなくても、年の重ね方をコントロールすることは可能ですし自信にもつながります。重要なのは、ミトコンドリアの働きを良い状態に保つことです。

Patrick博士は、「若さ」というのは実年齢のことではなく、自分自身の感じ方であり、身体がしっかり機能しているかどうかであると述べています。

「認知機能や身体機能を最も良い状態に保つにはどうすれば良いのか知りたい。人生に若いと感じる年月を増やしたい。90歳を超えたい。元気に外に出て、20歳の時と同じようにサンディエゴでサーフィンを楽しみたいのです。他の人と同じような速さで衰えて生きたくはありません。衰えなんて蓋をして人生に若いと感じる年月をできるだけ長く保って生きる喜びを感じたいのです。」

+ 出典および参考資料