古代の猛者の強さの秘密—ターキッシュゲットアップ

ターキッシュゲットアップ(TGU)

早分かり -

  • ケトルベル1個を使ったターキッシュゲットアップ(TGU)は、全身の筋力、安定性、バランス、コーディネーションを高めるのに適したエクササイズです。
  • 動作のステップバイステップの手順と、よくある間違いについてご紹介します。
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Dr. Mercolaより

ケトルベルを使うとダイナミックな全身運動が可能です。一種類のワークアウトで心血管系トレーニング、抵抗トレーニング、可動域向上効果が得られます。高強度インターバルトレーニング(HIIT)でケトルベルを使うと、1分あたりのカロリー消費量が他のエクササイズと比べて高くなります。

ケトルベルを持っておこなうと良い古くからあるエクササイズの一つに、ターキッシュゲットアップがあります。ゲットアップは、床に横になった状態から立ち上がるまでの一連の動作を、頭上にケトルベルなどのウェイトを上げたままでおこないます。

トルコ周辺の地域に住んでいた古代のレスラー達が、厳しい戦いをくぐり抜けるために考案したと言われています。

古い時代の猛者が、弟子入りに来た修行者に、「50 kgの重りを持ってターキッシュゲットアップをできるようになるまで現れるな、 本当の修行は それからだ。」と追い返していたという言い伝えもあります。

歴史はともかく、ゲットアップは、適切におこなえば非常に効果の高いエクササイズです。その効果は数えきれません。また、必要な道具は少なく、 ケトルベルだけです。

私自身は、1ヶ月に数回、約15 kgのウェイトを持ってやっています。やると本当に息が上がります。最大の効果と安全性のために、ターキッシュゲットアップの正しい手順を確認しましょう。

ターキッシュゲットアップの効果

ターキッシュゲットアップには、一連の動作の中に複数の3面方向の動作が盛り込まれています。ウェイトを頭上に持つことでエクササイズの最中に体幹をしっかり保つ必要があり、胴体をまっすぐに保ちながら、体を曲げたりよじったりランジの姿勢をとるなど、常時エネルギーを燃焼します。

ターキッシュゲットアップは、筋力強化の他にも、全身の安定性、身体意識、バランス、コーディネーションを向上させます。これほど多くの効果のあるアクササイズは多くありません。Breaking MuscleやStrong Firstなどのウェブサイトによると、ターキッシュゲットアップには、次のような多くの効果があるそうです。

上半身の安定性を高める 下半身の安定性を高める 左右の交差性(右脳が左半身を動かす)を高める
右腕と左足、左腕と右足の連携が生まれる 四肢をそれぞれに動かすことができる 体幹と四肢の反射時での安定性が増す
バランス調整の働きを持つ前庭系を刺激する バランス調整の働きを持つ視覚系を刺激する バランス調整の働きを持つ体性感覚系を刺激する
前後の体重移動の感覚を発達させる 上体、体幹、股関節の筋力を強化させる 空間認識能力を高める
解放運動連鎖、閉鎖運動連鎖での肩の安定性が増す 胸郭を広げ、動きやすくする 股関節と脚の可動性と柔軟性を高める
回旋、線形安定性を高める ランジ、スクワット時の様々な脚の動きが安定する 初めに体を回転させてからベルを地面から上げ、ブリッジになる際に片足の股関節の安定性を高める

ターキッシュゲットアップの13の手順(やや難)

STEP 1:開始位置

仰向けに寝転び、ケトルベルを右肩の横に置きます。

STEP 2:ベルを持ち上げる

上半身を回転させて右側に向け、右腕の肘を体に付けてケトルベルを右手で持ちます。体は仰向けの位置に戻して、ケトルベルを胸の位置で持ちます。左腕は45度の方向に伸ばして広げておきます。

左足はまっすぐに伸ばして、右ひざを曲げて足の裏を床につけて立てます。右腕でケトルベルをゆっくりとまっすぐ上に上げます。関節でしっかりと支えてください。視線はケトルベルを常に見ておいてくださいこのエクササイズの間ずっと視線はケトルベルに置くようにします。

STEP 3:肘をつく

右足をしっかり踏ん張って、体を左に向けて左肘で支えます。右手はケトルベルを高く上げたままです。肘で支えながら、腹筋運動を途中までやっているようなイメージです。体重は左のお尻に乗っています。

STEP 4:手のひらで体を支える

肘立てが安定したら、左手で体重を支える態勢になります。この時、左手、右足、左のお尻の3点で体を支えています。

STEP 5:ハイブリッジ

腕をまっすぐ上に保ったまま、殿筋に力を入れて、お尻を床から上げていきます。目線はケトルベルのほうです。この時、全体重は左の手のひらと、右足の2点で支えられています。お尻は床から離れています。

STEP 6:左足を移動させる

お尻を高く上げた状態で、左足を後ろに引いて移動させ、膝を地面につけます。左ひざは床に、右ひざは立てて脚同士は90度になっているはずです。片方の膝は前を向けき、もう片方の膝は床についた手のすぐそばです。首は上に向けて、常にベルを見ておいてください。

STEP 7:上に持ち上げる

左手を床から離して、上体を地面からまっすぐに起こします。床についているほうの脚を外側に動かしてランジの体勢で両足が平行になるようにします。

STEP 8:立ち上がる

左足の関節から右足へ体重を移動させて、ランジの姿勢から立ち上がります。ケトルベルをまっすぐ頭上に保ちながら、体幹を引き締めて立ち上がります。両足を揃えます。しっかり呼吸しましょう。半分まで来ています。

STEP 9:元に戻るランジ

ランジの姿勢に戻ります。ケトルベルを上げたままで、左ひざを床につけます。

STEP 10:左足の移動と股関節

左足が右足と直角になるように移動させます。股関節を曲げて左手を膝の前あたりで床につけます。

STEP 11:左足を移動させる

左足を前に出してかかとを床につけてまっすぐ伸ばします。この時体重は左手にかかっています。

STEP 12:肘をつく

ゆっくりと体勢をコントロールしながらお尻を床につけて、左腕の前腕を床に付けます。

STEP 13:完了、繰り返す

ゆっくりと体幹を倒して仰向けになります。ケトルベルに視線を保ち、体の上に上げた状態です。ゆっくりとケトルベルをお腹の上にのせます。上半身を回転させて右側を下にしてケトルベルを床に戻します。これで、ターキッシュゲットアップの一連の動作が完成しました。

ゲットアップの効果をさらに高めるコツ

ターキッシュゲットアップは難易度が高く、様々な動きが含まれています。動きを覚えるまでは、軽めのウェイト(またはウェイト無し)でもかまいません。例えば、体の動かし方が身につくまでは、ウェイトの代わりに靴を片方持っても良いでしょう。

Amy Rushlow氏は、こうアドバイスしています。「初めてのこの動作をすると、ふらふらしますので驚かないでください。」初心者の方は、最大で5-7 kgくらいのウェイトを選びましょう。中級の方で9 kg、11-14 kgは上級者向けです。はじめから、重すぎるウェイトを使うと、 怪我のリスクが高くなります。

体勢を変える毎に停止して一呼吸してください。頭の中で、フォームや、関節や体幹が使えているかを確認しながらすすめてください。一連の動作の手順が途中でわからなくなったら、無理して怪我しないように、一旦 ストップ しましょう。

このエクササイズの効果は、ウェイトの重さは関係ありません。一連の動作のクオリティが大切です。回数は12-15回繰り返すと良いです。または、ウォームアップにするなら、片側1-3回ずつが適しています。1回の動作は45-60秒くらいが適当です。急ぎすぎないでください。

7つの良くある間違いと修正案

間違いその1:ケトルベルの持ち方が悪い

ダンベル、バーベルと異なり、ケトルベルは順手で握ります。手首は 若干 反らせた状態です。ケトルベルの重心の位置をとらえるために必要な持ち方です。手首の後にぶら下がるような形ですから、手首が反った状態になり、怪我やバランスが崩れる原因となります。

順手に持つことで重心が骨に近い位置に来てしっかりと安全にケトルを支えることができます。サンドバッグをパンチする時の拳を思い出してください。固めに、強すぎない程度に握りましょう。

間違いその2:肘が曲がっている

危険な間違いの代表的なものです。ケトルベルを支える肘がまっすぐになっていないことがあります。肘が少しでも曲がった状態だと、体の構造をうまく利用できず、筋力だけでケトルを支えることになります。ターキッシュゲットアップの正しいフォームでは、ウェイトは構造体によって受動的に(骨格によって)支えられています。

肘が曲がると肩の安定性が悪くなり、怪我の原因となります。

腕が曲がっていると、三頭筋に負荷がかかります。筋肉が疲労して、予期せぬ時にケトルベルを落としてしまう事故が起こる可能性があります。もしも落としそうになったら、止めようとせず、手を離してそのまま落としてください。腕をまっすぐにするのが難しい場合は、まず二頭筋の ストレッチ が必要かもしれません。

ゲットアップの途中、腕をまっすぐにキープできない場合は、腕をまっすぐに維持できるパートだけを練習しましょう。ゲットアップを部分的におこなうことも立派なエクササイズです。

間違いその3:下に来る腕の位置が悪い
ウェイトを持たない方の腕は、動作の開始時には、体から45度の位置に置きましょう。
間違いその4:立ち上がる動作が遅い
立ち上がる動作の始めの時点で緊張感やテンポ良い動きがない。
間違いその5:軸がぶれている
体重を支える点が3点から2点(逆順では2点から3点)に変わる時、体がぶれてふらふらしている。股関節を使って、後に引いた方の膝に体重移動すると、床を支える方の手の動作がしやすくなります。
間違いその7:体内にスペースがない
体のアライメントが整うと、胴体と四肢、頭の間に適度なスペースが生まれるはずです。スペースがなければ、受動的な停止状態に頼るようになり、緊張感や、停止して何かを支えていると言うことがなくなってしまいます。
間違いその6:肩や他の関節を柔らかくさせる

肩はしっかり組み込まれていなければなりません。上腕骨が上腕骨窩にしっかり収まっていれば、動作のコントロールが可能で、関節や筋肉の怪我予防にもつながります。

肩甲骨をズボンの後のポケットに入れるつもりで動かしてください。この「すくめない」姿勢が広背筋に効果があり、ケトルベルを乗せたり、床に手をついて体重を支えるための「棚」として機能します。

「すくめない」動作が効かない場合は筋肉の固さが原因かもしれません。特に肩甲骨周囲の、胸筋、広背筋、三頭筋、二頭筋など、周辺の筋肉を柔軟にしましょう。これは、他の関節にも該当します。肩は、反対側の股関節に筋膜でつながれています。

肩のどちらか、または両肩をすくめれば、バランスが崩れて股関節が硬くなります。これでは、起き上がる時に腹筋が使えなかったり、ランジの姿勢で体を持ち上げたりできなくなってしまいます。このような間違いが重なると、膝や背骨など痛めやすい部位に余計な負荷がかかります。関節は、屈曲ではなく伸展気味にしましょう。肘や膝は反りすぎないように気を付けてください。

間違いその7:体幹の前面が使えていない
このエクササイズは、肋骨を締めて体幹を固定しておこないましょう。