運動すると体内はこう変わる

ワークアウト

早分かり -

  • 運動により、インスリン/レプチン受容体の感受性を高め、グルコース、インスリン、レプチンの値を正常に導く効果がある。
  • インスリン/レプチン受容体の感受性の改善効果は、全身の健康と慢性病予防の観点から、運動がもたらす効果の中で最も重要な要素である。
  • 運動により、神経細胞の分裂が促されると細胞間の連携が高まり、損傷に強くなるため、脳の働きも高まっていく。
  • 運動により、性的機能の向上、遺伝子発現の変化、肌に透明感が出る、気分が良くなり寝付きが良くなるなどの喜ばしい副作用が起こる。
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Dr. Mercolaより

運動の注目すべき効果は、インスリン/レプチン受容体の感受性を高め、グルコース、インスリン、レプチンの値を正常に導くと言う点です。インスリン/レプチン受容体の感受性の改善効果は、全身の健康と慢性病予防の観点から、運動がもたらす効果の中で最も重要な要素です。

しかし、運動による効果はそれだけではありません。 直接的にも間接的にも様々な効果があるのです。思いも寄らない副作用がありますが、どんな方にも喜ばしい内容です。前述の記事による例を挙げると、運動による副作用には次の様なものがあります。

運動すると体内にどんな変化が?

Huffington Post2 の特集記事によると、運動時に、文字どおりつま先から頭までに起こる数々の生物学上の効果を紹介しています。どのような変化があるのでしょうか。

  • 筋肉。収縮したり運動のために、グルコースとATPが必要です。より多くのATPを産生するには、酸素が必要なため呼吸数が増加し、心臓の拍動により筋肉に送られる血流がまします。
  • 酸素が不足すると、代わりに乳酸が発生します。また、筋肉にできた小さな亀裂が治ると、筋肉がさらに発達して行きます。

  • 。筋肉により多くの酸素が必要になり(安静時の15倍の酸素が必要となる)、呼吸数が増加します。肺周辺の筋肉が最速で動いている状態を、VO2 max(最大酸素摂取量)と呼びます。VO2 maxの値が高いほど、運動能力が高いと言うことです。
  • 心臓。運動に伴い、酸素を含む血液をより多く筋肉に届けるために、心拍数は増加します。運動能力が高いほど、心臓の機能も高く、長時間のハードな運動が可能となります。心臓の機能が高まると副作用として安静時 の心拍数が低下します。新しい血管が形成され、血圧も下がります。
  • 。血流が増加すると直ちに脳にも良い効果をもたらします。運動をした後は集中力が増します。さらに、定期的に運動すると脳細胞の最長が促されます。海馬にできた新しい脳細胞は、記憶や学習能力を高めます。
  • さらに、エンドルフィン、セロトニン、ドーパミン、グルタミン酸、GABAなどの数々の神経伝達物質が分泌されます。気分の変化をもたらす物質としてみなさんもご存じではないでしょうか。運動は、うつの予防、治療効果が最も高いとされています。

  • 関節や骨には、運動により、体重の5-6倍の負荷がかかると言われます。成人と共に最大骨量に達した骨は、年齢と共に少しずつ減りますが、運動により、歳をとっても骨量を維持することが可能です。
  • 骨粗鬆症に最も効果の高い運動にウェイトトレーニングが挙げられます。骨は多孔性で柔らかい組織ですから、歳と共に密度が減り、もろくなります。運動不足であればなおさらです。

脳の健康と運動は直接関係している

Lifehacker.com に紹介された関連記事は、運動によって起こる脳の変化に特化しています。気分を良くする効果のあるセロトニンなどの神経伝達物質が運動中に分泌されることは先ほどご紹介しましたが、脳に良い効果はこれだけではありません。

「運動を始めると、脳は運動が続く時間をストレスと認識します。血圧の上昇を、敵と戦っている、もしくは全力で逃げようとしていると捉えるのです。身体と脳をストレスから保護するために、BDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質が放出されます。BDNFは、記憶のニューロンを保護/修復し、リセットスイッチのような機能を果たします。運動の後に安らぎやすっきり感が得られるのはこのためです。」 とLeo Widrich氏は記述しています。

同時に、別のストレスに関係する化学物質である、エンドルフィンを放出します。MK McGovern氏によると、エンドルフィンは、運動による痛みや不快感を和らげる効果があると述べています。また、定期的に運動する一に良く見られる幸福感にも関わりが深いとしています。

科学者グループは運動の効能と脳の健康の関連性について長年研究を重ねてきました。最新の研究では、 これらの要素は絶対的な関係にあることが示されています。運動が脳を形成し、萎縮を抑えるだけでなく、認知能力を高めることが証明されています。

運動により、神経細胞の分裂が促されると細胞間の連携が高まり、損傷に強くなるため、脳の働きが高まっていきます。複数の機構が作用しているのですが、仕組みがわかってきているものがあります。

BDNFの若返り効果がその一つです。BDNFは脳幹細胞を活性化し、ニューロンへ変化させます。神経系の健康を促すその他の化学物質も分泌されるようになります。運動はさらに、次に示すような脳を保護する機能があります。

  • 神経を保護する化学物質の産生
  • ニューロンの成長と残存
  • 心臓病、血管の病気のリスク低下
  • 脳内に存在する損傷タンパク質を無害化し、アルツハイマー病の発症を遅らせる。

断食と運動で脳が若返る

断食と運動により、脳や筋肉の若返りと再生を促す遺伝子や成長因子が活性化することを示す証拠が見つかっています。先ほど紹介したBDNFや、筋肉制御因子のMRFなどがこのような成長因子にあたります。

これらの成長因子が信号となり、脳幹細胞は新しいニューロンに、衛星細胞は新しい筋肉細胞に変化します。興味深いことに、BDNFは筋神経系で発現し、神経運動の劣化を防ぎます。神経運動は、筋肉の最も重要な役割です。神経運動が機能しなければ、筋肉は点火できないエンジンと同じです。神経運動が劣化していくことは加齢によって筋肉の萎縮が進行していく過程なのです。

BDNFは筋肉 脳に密接に関わっており、この関わりこそが、脳の組織に運動が大きな効果をもたらす理由の大部分を説明づけています。BDNFは、年齢による筋肉の衰えを防ぎ若返らせる効果がありますが、脳についても同様の効果があります。

このことはまた、 運動しながらの断食 で、脳、神経運動や筋繊維の生物学的な若さを維持することができる理由を説明づけています。 は、BDNFの働きを抑制します。糖分を控えた食事と運動の組み合わせが記憶能力を守り、うつを遠ざけることができるのはこのためです。

運動時の脳の状態について

運動によってBDNFやエンドルフィンという2種類の因子が活性化されると、気分は明るく、体調が良くなり、認知能力も高まります。Lifehackerでも述べられているとおり、これらの物質はモルヒネやヘロインと同じ作用と中毒性がありますが、有害な副作用はありません。有害どころかその逆です。ところで、気分を常に明るく、記憶力を長期にわたって保つには、どれだけの運動が必要なのでしょうか。

2012年に Neuroscience誌に掲載された研究によると、毎日を明るく生産的に過ごすための秘訣は、定期的な運動を長く続けることである、と述べられています。一週間に1-2度しっかり運動するよりも、少しずつ毎日続ける方が効果が高いようです。

「試験前日まで一月連続で運動をしていた被験者は、主に座った状態が多く普段は運動をしていないが試験日の朝のみ運動した被験者に比べて記憶力試験で良い成績を収めている。」と著者はつけ加えています。

この理由については、目で確かめていただきたいと思います。こちらの画像をご覧下さい。20分のウォーキングで、座っていた場合よりも脳が活性化しているのがわかります。


一つだけ注意点があります。研究者グループは、運動をしても全ての人の脳に同じ効果があるとは限らないことを突き止めました。ヨーロッパ系の白人の30%に、運動後のBDNFの産生を妨げるBDNF遺伝子の多様体が見られます。このBDNF遺伝子の多様体を持つ人では、持たない人と比べて、定期的に運動をしていても記憶力の改善は見られませんでした。とはいえ、個人差はあれ、定期的な運動を継続することで記憶力や他の脳の機能を高めることは、研究の結果から明らかです。

包括的なフィットネスプログラムを

真に健康な肉体のために理想的な方法は、様々な運動を幅広く取り入れた、変化に富み、包括的なフィットネスプログラムを継続することです。運動していて楽に感じるようになったら、強度を上げるか別の運動を追加して、常に体に新たな負荷をかけるようにします。

さらに、ある最新の研究について知り、 運動しない ことの重要性について、私自身、新たな発見がありました。健康の秘訣は、「一日中活動的に過ごすこと」ですが、運動選手の様に一日に何時間も運動する必要はありません。一日のうちにいつでもいいので、体を動かしてストレッチをするタイミングがあれば、体を動かすことが大切です。

回数が多ければなお良いです。立ち上がる、高い棚に置いた物に手を伸ばす、草むしり、部屋から部屋への移動、皿を洗うことも運動に含まれます。つまり、身体と重力の相互作用によって健康効果をもたらす元は、 物理的な移動とその期間なのです。次のような運動も含めることをお勧めします。

  • インターバルトレーニング(無酸素)。インターバルトレーニングとは、短時間の高強度トレーニングと回復時間を交互に繰り返す方法です。
  • 筋肉トレーニング。筋肉トレーニングを1セット盛り込んで、日頃のエクササイズをより完成度の高いプログラムにしましょう。
  • 10分おきに立ち上がること。意外に知られていない事実ですが、専門家の推奨する量を遥かに超える運動を普段からしている人でも座ったまま過ごす時間が長いと若年死に至る可能性があるのです。個人的には、座り作業の時にはタイマーを10分にセットして、タイマーが鳴る度に、片足スクワット、ジャンプスクワット、ランジを1回ずつするようにしています。コツは、運動ではない日常活動を含めて一日中動き続けることです。
  • 体幹エクササイズ。背中、腹部、骨盤の周囲には29のコアマッスルが存在します。全身の動きの基礎となる筋肉群で、しっかり強化して、背中を保護し背骨や身体の各部位の怪我を防ぎ、バランスや安定性につなげましょう。
  • Foundation Trainingは、Eric Goodman医師によって開発されました。様々なエクササイズで構成される、「Modern Moveologyプログラム」の第一ステップです。Foundation Trainingの中でも、姿勢を正す運動は重要です。日常動作での体の支え方だけでなく、怪我のリスクなく安全に高強度トレーニングを行えるように体をトレーニングすることができます。

    ピラティス、ヨガなどは、コアマッスルを鍛えるのに適しています。方法はパーソナルトレーナーについて学ぶ必要があります。

  • ストレッチ。私が気に入っているストレッチは、Aaron Mattes氏考案の、Active Isolated Stretching(AIS)です。AISでは、ストレッチした状態を保つのは2秒間だけです。身体の生理的な修復機能で体液循環を促し、筋肉や関節の柔軟性を高めます。このテクニックは身体の修復や日常動作への準備運動としての効果があります。