食肉加工品が男性の生殖機能に与える影響

食肉加工品

早分かり -

  • 食肉加工品を食べる量が少ない男性は、多く食べる男性と比較して体外受精(IVF)の受精率が29%高い。
  • 鶏肉を多く食べている(かつ食肉加工品はあまり食べておらず全体的に食生活は健康的)男性では、あまり鶏肉を食べない男性と比較して受精率が13%高い。
  • 別の研究でも、食肉加工品を多く食べている人では早期死亡リスクが44%高くなることが示されている。
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Dr. Mercolaより

肉は健康に良い食品ですが、それはオーガニックの牧草で育った牧畜の肉の場合です。牧畜の飼育方法(餌、飼育環境、屋外に出されているかなど)により、健康に良い食肉になるのか病気の原因となる食肉になるのか大きく別れてしまいます。

飼育環境の他にも、食肉の加工法も健康に良い食品となるかどうかの大きな要因となります。平飼いの鶏肉を煮だしたスープは非常に栄養がありますが、集中家畜飼養施設(CAFO)で育てられた鶏の肉を加工したランチョンミートやホットドッグは明らかに栄養価が劣ります。

食肉の健康度をランキングすると、食肉加工品は常に下位にランクされます。食べるにしても少量にした方が良いでしょう。食肉加工品が健康に与えるリスクを挙げるときりがありませんが、最新の研究では、男性の生殖機能に与える影響が示唆されています。

食肉加工品が男性の生殖機能に影響する

配偶者と体外受精(IVF)を行った141人の男性を対象とした研究では肉全体の消費量と体外受精(IVF)の成功率に関連性は見られませんでした。

しかし、食肉加工品(ソーセージ、ベーコン、缶詰肉)を食べる量が少ない男性は、多く食べる男性と比較して体外受精(IVF)の受精率が28%高いことがわかりました。

鶏肉を多く食べている(かつ食肉加工品はあまり食べておらず全体的に食生活は健康的)男性では、あまり鶏肉を食べない男性と比較して受精率が13%高いという結果が出ています。

食肉加工品が受精率に影響する仕組みははっきりしておらず、この研究では、原因と結果が示されていません。Lenox Hill Hospital(ニューヨーク)の泌尿器専門医であるElizabeth Kavaler博士はWebMDで次のように述べています。

「問題はおそらく肉自体ではなく、ベーコンをよく食べる男性が食品を選ぶ時の好みにあると思われます。健康的な食事をしている人物は、ライフスタイル自体が健康的であると考えられ、それが受精率に影響してるのではないでしょうか。

鶏肉を食べる男性がベーコンを好む男性より不妊治療の結果が良かったのは、鶏肉を食べる男性がベーコンを好む男性より健康に良いライフスタイルを送っているためだと研究の結果が示しています。」

食肉加工品は健康に悪影響を及ぼす、とする多くの研究がありますが、その影響の中に不妊が含まれていても何もおかしくはないのです。

食肉加工品に含まれる3つの発がん性物質

食肉加工品とは、燻製、塩漬、その他の保存料で加工保存された肉類のことです。ベーコン、ハム、パストラミ、サラミ、ペパロニ、ホットドッグ、ソーセージ類、ハンバーガー(塩や化学薬品で保存されている場合)などが該当します。

ここで問題となるのは硝酸塩です。硝酸塩は保存料、着色料、香料として肉の加工に使われます。肉の加工に使われる硝酸塩は、発がん性物質であるニトロソアミンに変化します。

USDAがアスコルビン酸(ビタミンC)かエリトルビン酸をベーコンのキュア液に添加するように求めているのは、ニトロソアミンの発生を防ぐためです。

食肉加工品の多くが該当するのですが、高温で調理された肉は、20種類を越えるヘテロサイクリックアミン(HCA)を含みます。これらの物質はガンとの関連が指摘されています。

HCAについて言うと、焦げた部分に多く含まれます。肉を焦がさない様に、また焦げた肉を食べないよう注意されるのはこのためです。

肉を高温で調理するとニトロソアミンも発生します。ウェルダンや焦げたベーコンはそうでないベーコンに比べてニトロソアミンを多く含んでいます。

最低限度、ウェルダンや焦げているホットドッグ、ベーコン、ソーセージは避けましょう。食肉加工品の多くが調理の過程で燻製されています。燻製の過程で発がん性があると言われる多環芳香族炭化水素が食品に吸収されます。

食肉加工品を食べるとどんな健康リスクが?

World Cancer Research Fund(世界ガン研究基金、WCRF)が実施した2007年の研究では、一日1本のソーセージで大腸ガンのリスクが著しく上昇することがわかりました。特に、一日に約50 gの食肉加工品(ソーセージなら1本、ベーコンなら3スライスくらい)でガンの可能性が20%上がると発表されました。

他の研究でも、食肉加工品により、大腸ガン、膀胱ガン、胃ガン、膵臓ガンのリスクが上昇することがわかりました。American Institute for Cancer Research (米国ガン研究機構、AICR)は次のように発表しています。

「研究によると、少量であっても、コールドカット、ベーコン、ソーセージ、ホットドッグを定期的に食べると、結腸直腸ガンのリスクが増加することがわかっており、米国ガン研究機構は、特別な場合を除き食肉加工品を控えるよう勧めています。

食肉加工品の消費量が高いほど、リスクも増加します。食肉加工品を全く食べない場合と、毎日100 g(大きめのホットドッグくらい)食べた場合では、結腸直腸ガンのリスクが36%増加します。

Harvard School of Public Health(ハーバード公衆衛生大学院、HSPH)が実施した研究によると、食肉加工品を食べると、心臓病では42%、2型糖尿病では19%リスクが増加します。食肉加工品を食べない人ではこのような結果は見られませんでした。

リスクが増加する原因は食肉加工品です。しかもその量は、一日にハム類を1-2スライス、ホットドッグなら1本ほどの量です。およそ45万人を対象とした大規模研究では、食肉加工品を多く食べている人では、早期死亡リスクが44%高くなることを示しました。

食肉加工品を食べない人では早期死亡リスクは3%で、食肉加工品を一日に約30 g以下に抑えるよう研究者グループは勧めており、さらに次の様に述べています。

「食肉加工品の摂取と心血管系疾患、ガン、その他の死因には深い関連性があります。」

硝酸塩無使用の食肉加工品なら安全?野菜に含まれる硝酸塩も危険?

硝酸塩と亜硝酸塩を混同しているケースが多い様です。

硝酸塩は、ビート、セロリ、レタス、ホウレンソウ、その他の葉野菜など、様々な野菜に含まれています。硝酸塩を摂取すると、そのうちのわずかな量が体内で亜硝酸塩に変化します。

亜硝酸塩と硝酸塩は本質的に身体に有害な成分ではありません。一酸化窒素(NO)の前駆物質で、血圧を下げ、炎症を鎮める効果があります。

亜硝酸ナトリウムは、ホットドッグなどの食肉加工品の色合いを保つために使われる合成保存料です。問題となるのは、高温での調理です。亜硝酸塩が食肉加工品に含まれるアミンと結合して、発がん性のあるニトロソアミンが発生します。

食肉加工品は、野菜と比較してアミンを多く含んでおり、高温で調理されるため、ニトロソアミンを発生しやすい経口にあります。前述のとおり、ビタミンCはニトロソアミンの発生を抑えます。野菜はビタミンC、ベータカロチン、その他の抗酸化物質を含んでいるため、野菜に含まれる硝酸塩が問題となることはありありません。

University of Minnesota Extension(ミネソタ・エクステンション大学)によると、体内の亜硝酸塩の90%が野菜由来であり、食肉加工品由来の亜硝酸塩は10%のみです。

天然、オーガニックであると宣伝されている硝酸塩無使用のホットドッグに含まれる亜硝酸塩の量は少なくはない、つまり、普通のホットドッグより多い場合もあるということです。天然、オーガニックという言葉を使っている企業は、使用する保存料もオーガニックのもの(セロリ粉、セロリ塩、セロリ汁など硝酸塩を多く含み、菌のスターターカルチャーでもある)にする必要があります。

セロリ塩に元来含まれる硝酸塩が亜硝酸塩に変化し、肉を保存処理できます。

全ての肉を避けなくても良い

食肉加工品は控えた方が良いですが、オーガニックの牧草で育った家畜の肉は健康的な食生活に適しています。牧草で育った牛の肉は、共役リノール酸(CLA)やその他の健康に良い脂肪分を多く含んでいます。オメガ-3脂肪酸とオメガ-6脂肪酸の比率のバランスも良いことが知られています。

食肉加工品や植物油を使った現代的な食品では、オメガ-3脂肪酸よりもオメガ-6脂肪酸が多くなります。1世紀前と比較すると、オメガ-6脂肪酸の摂取量は10万倍に達しており、健康にとって良いことではありません。加工植物油を健康的な動物性脂肪に替えることが健康への第一歩です。

USDA認定のオーガニック100%の製品であっても、使われている肉が牧草を食べて育った家畜の肉かどうかは保証がありません。オーガニック認定を受けることは農家にとって費用がかかるため、認定を受けていなくても実際の飼育法は高品質の牛肉に匹敵することもあります。牧草で飼育された肉を使った製品の方がオーガニックの製品より優れていると、私は考えています。

100%牧草飼育とラベルがあれば別ですが、スーパーに並ぶ肉は、ほとんど集中家畜飼養施設で飼育された牛の肉です。また、アメリカの商業施設で販売される肉の半分が 病原菌に汚染(抗生物質耐性菌を含む)されています。

牧草飼育の牛肉の場合、汚染率は低く、この安全性の高さは、飼育環境によるものと考えられます。これは、牛肉だけに限ったことではありません。鶏肉の場合はオーガニックで牧草飼育(平飼い認定)である、魚の場合は養殖魚ではなく漁で捕獲されたものが安全性が高いといえます。

自然な飼育方法で生産された肉を入手できる場所

100%牧草飼育とラベルがあれば別ですが、スーパーに並ぶ肉で、ラベルのないものは、ほとんど集中家畜飼養施設で生産された肉です。オーガニック、自然健康に意識の高い消費者と動物愛護運動家、遺伝子組み換え製品に反対する運動家のグループが食品表示に関する次の戦いに取り組んでおり、集中家畜飼養施設で生産された肉、卵、乳製品の表示義務を求めています。

集中家畜飼養施設で生産された食品の表示義務を求めるこのキャンペーンは、集中家畜飼養施設が環境や人体に与える影響、家畜の福祉についての啓蒙活動を行っています。多くの消費者に、不健康で持続不可能な農法で生産された牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品の表示義務を求める運動に参加するよう訴えています。

みなさんにできることは、集中家畜飼養施設で生産された製品をボイコットし、人道的で、環境にも優しい飼育法で生産された牧草飼育の肉、卵、乳製品を買うことです。

農場が近くにあれば、直接購入することもできます。ファーマーズマーケットや地域が支援する農業イベントなどでも牧草飼育の肉が手に入ります。

動物性タンパク質の必要量は思うほど多くない

良質なタンパク質は食生活に欠かせません。しかし、多く食べ過ぎないように気を付ける必要もありません。大抵の方が、必要量の3-5倍のタンパク質を摂っています。

タンパク質は健康に良い選択肢として捉えられています。炭水化物制限をしている場合は特にそうです。ですが、除脂肪体重約30 gに対して0.5 g以上のタンパク質が必要な人はごくまれです。

激しい運動をしている人、アスリート、妊婦の場合は、通常より25%多く採る必要がありますが、普通の人は一日に40-70 g以上必要な人はほとんどいません。

除脂肪体重は、体脂肪率を100から差し引いて求めます。体脂肪率が20%ならば、除脂肪体重は80%です。その数に体重をかけて除脂肪体重を求めましょう。ほとんどの人が、タンパク質の摂取量を一日35-75 gにすると良いでしょう。前述のとおり、妊婦さん、激しい運動をする人は、タンパク質を25%多く摂取してください。

上述の値より多くタンパク質を摂ってしまった場合、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)経路を活性化させてしまいます。筋肉がつきやすくなりますがガンのリスクも増加します。

mTOR遺伝子」が老化の進行を制御するため、長寿の鍵はこの遺伝子を抑制することであることを示す研究があります。

一般的に、健康的な食事について考えると、多くの人が低品質のタンパク質や炭水化物を摂っており、健康に良い脂肪分を摂っていないことがわかります。オーガニックの牧草飼育の肉は健康に良いのですが、やり過ぎは禁物です。