Dr. Mercolaより
切り傷や擦り傷をしてしまうことは、家の内外でよくあることです。こうした皮膚の開口部は、バクテリアが繁殖したり、感染症になったりするきっかけになります。傷をきれいにする第一歩は、望ましくないバクテリアを洗い流して、開口部が治ることを助長する環境を作り出すことです。
たいていの人は、石けんと水または過酸化水素に手を伸ばし、ばんそうこうを貼る前にその部位をきれいにします。その部位の回復を促進するために、組織を破壊しない最も効果がある洗浄方法を使いたいと思うことでしょう。こうした物質の一つは、他のものを使うより絶対良いのです。
過酸化水素は、消毒剤として1920年以来使われています。バクテリアを殺すのに有効だからです。消毒剤とは、バクテリアのような病気を引き起こす微生物の成長を抑える物質です。
子供のときに切り傷や擦り傷をすると、おそらく母親が過酸化水素の茶色いビンに手を伸ばしたことでしょう。
母親がそれを傷口につけたとき、痛かったことを覚えているかもしれません。その痛みまたは不快感は、切り傷や擦り傷にある痛み受容体を過酸化物が活性化させた結果です。それは、その部位のバクテリアを殺したのです。普通使われる消毒用アルコール(イソプロピル)よりずっと安全かつ効果があり、ヨードよりよごれが少ないです。
傷の治癒は、それが紙で切ったものでも、外科手術の後の大きな切開あとでも、身体が開始する通常のプロセスです。どんな場合でも、切り傷、擦り傷、外傷などは、十分な酸素があるときに、速くかつきれいに治ります。
過酸化水素の化学組成は、H2O2です。水の組成はH2Oですから、水より酸素分子が一つ余分にあります。過酸化水素を切り傷や擦り傷につけると、その部位から泡がブクブクと立つのに気づくでしょう。それは、過酸化水素が酸素分子を一つ放出して、水になるからです。
過酸化水素は、バクテリアに対して効き目があるのは、それが電子を集めて細胞膜を破壊するからです。バクテリア内にはカタラーゼと言う酵素があって、過酸化水素がこの酵素に反応して、酸素分子を一つ放出するときに、泡を見ることになるのです。
過酸化水素は、とても優れた消毒剤ですが、健康な細胞と傷口にあるバクテリアとの区別ができません。過酸化物は、健康な細胞膜からも電子を集め、それを殺し、細胞内のカタラーゼと反応し、同じように泡を生成します。
身体は、糖または炭水化物を代謝して低濃度の過酸化水素を実際に生成し、外傷の治癒を促進します。
細胞は、細胞内で生成される過酸化水素を不活性化するカタラーゼを持っていますが、外部から切り傷に加えた過酸化水素には無力です。
外部の過酸化水素による細胞への過剰な酸化的損傷は、治癒を遅らせ、傷あとの形成リスクを高めます。インスリンが細胞内の糖分を代謝した後、細胞はカタラーゼを使って身体が作る過酸化水素を不活性化して、酸素と水にします。
インスリン、代謝された糖分、酸素供給、身体が作る過酸化水素の間の連鎖が、おそらく、インスリン抵抗性糖尿病を持つ個人の治癒がゆっくりである一つの理由かもしれません。
今日、ほとんどの臨床医がどんな種類の消毒液でも、切り傷や外傷をきれいにするのに使うことを推奨しませんが、それは、過酸化水素の過酸化水素が推奨されないのと同じ理由です。消毒剤は、健康な細胞を破壊することが多く、治癒を遅らせ、傷あとの形成リスクを増します。
しかし、強力かつ効果がある消毒剤が必要ならば、ヨードや消毒アルコール(イソプロピル)よりずっと安全な過酸化物質をまず選びます。私は、過酸化物質のスプレービンをいつも旅行に持っていきます。それが、服のしみを取るのにも有効だからです。特に、スープが関連したしみの場合は効きます。
抗菌石けんの特許は、David PoshiとPeter Divoneが1984年に初めて出願しましたが、Dialの棒状石けんことが初めて1940年代にそういう主張をしたのです。Dialは、公告に「抗菌」とは謳いませんでしたが、バクテリアや細菌を殺すことで、身体を「スーパークリーン」にするとは宣伝しました。
Dialは、化学品であるヘキサクロロフェンを使いました。それは抗菌剤でしたが、今日、乳児の脳に障害を起こすことが分かっています。1970年、Dialの会社は、石けんから化学品を除去するように命令を受けました。
PoshiとDivoneが彼らの化学品、トリクロサンをバクテリアに対して試験し、特許を得ると、Dialが初めてそれを製品に添加して、「接触により細菌を殺す」と主張しました。
今日、抗菌石けんは、山ほどの研究がトリクロサンは、否定的な健康問題を起こすと実証しているにもかかわらず、トリクロサンを含んでいます。
抗菌石けんの会社は、大掛かりな公告キャンペーンを行って、石けんが環境をより安全なものにして、病気に対して余分な防御層を提供すると主張しています。
2013年12月、40年の研究を経て、FDA(米国食品医薬品局)は、トリクロサンの安全性を再検討すると発表した。そのさい、トリクロサンが実験動物のホルモンレベルに干渉し、薬物抵抗性を持つバクテリアの成長を促進する可能性があると示唆する研究を引用しました。
FDAが抗菌石けんがバクテリアの薬物抵抗性を増すかもしれないと発表したのは、2013年12月16日でした。そのわずか3日前、Colleen Rogers博士、FDAの主導的微生物学者は、別の声明を発表し、抗菌石けんはバクテリアに効果がないと示しました。
「実際には、市販されている抗菌石けん製品は、普通の石けんと水で洗浄するよりも、病気を予防するのに有効であるという証拠は現在ありません。」
いずれにせよ、トリクロサンやその他の抗菌物質について、有利または不利の裁定をFDAが数十年にわたり遅らせてきたことに対するNRDC(国家資源防衛審議会)の訴訟を受けて、FDAによる決定が2016年9月に出る予定です。
トリクロサンは、防腐剤であり、切り傷や擦り傷をきれいにすることには推奨されていません。なぜなら、それは治癒を長引かせ、傷あとの形成リスクを増加させるからです。しかし、抗菌石けんを家で使いたくないと思う理由が他にもあります。
2015年6月、欧州連合における化学品の使用の監視を担当する機関が、トリクロサンは、それを使うリスクが認められる利点よりも大きいので、衛生製品から徐々に除外すると発表しました。 抗菌石けん作るために使われる化学物質と次に挙げる事項と関係があると、研究が示しました。
内分泌ホルモンの途絶
ガンのリスクの増加
均衡のとれた生態系のために必要な水生菌や藻類の抑制
抗生物質への耐性
ピーナッツアレルギーや花粉症の増加
筋肉の収縮や活動への干渉
脂溶性製品の生物濃縮。それは、食物連鎖の上位の組織において高いレベルで発現します。
甲状腺機能の妨害
甲状腺ホルモン遺伝子の発現の妨害
マウスでの肝腫瘍の増加
切り傷や擦り傷、外傷をきれいにする最も良い方法は、安全な刺激の少ない石けんと大量の水です。トリクロサン、トリクロカーボン、香料を含まない石けんを選んでください。切り傷を洗う前に、手を洗ってください。手から外傷へバクテリアが移動する可能性を減らす効果があります。
外傷を洗浄している間、少しの出血が起こる場合があります。洗浄が終わったら、圧力を直接かけて止血して、可能ならば、その部位を心臓より高く保ちます。そうすることで、その部位の血流を減らし、止血に効果があります。
外傷を5~10分水でゆすいでください。そうすることで、ほこりやごみをその部位から取り除くことができます。お湯よりも冷水の方が気持ちが良いでしょうが、どちらを使っても構いません。台所にスクレーパーがあれば、外傷をきれいにするのに役立てても構いません。
5~10分よくすすいでほこりやごみを取り除いたら、その部位を刺激の少ない石けんと清潔な布またはガーゼで洗います。少し圧力をかけてください。強くこすると、その部位を破壊して、治癒を長引かせるとともに、その部位の洗浄に何らメリットがありません。その部位を布、ガーゼを覆い、湿って清潔な状態を保ちます。湿り気を保ち、かさぶたができない外傷の方が、治りが良く、傷あとが残らない可能性が高いのです。
銀が持つ抗菌性能は、紀元前400年から知られています。そして、銀は、20世紀初めまで外傷管理において抗菌剤として普通に使われていました。近代科学は、銀の持つ抗菌作用を認めています。銀は、抗生物質への耐性があるバクテリアにも有効であることさえも示されています。
試験によって、銀がバクテリアの細胞膜の構造を不安定化し、多孔質にして、バクテリア内部に侵入できるうようにして、内部からバクテリアを殺すのです。
銀を含むハイドロファイバー製の包帯は、外傷部における好空性、嫌気性、抗生物質への耐性がある微生物を含む幅広い範囲の微生物の増殖に対して効果がある保護を提供することが示されています。銀のナノ粒子を感熱性ゲルに統合したものを試験した結果、黄色ブドウ球菌に対して効果があることが分かりました。
2010年の研究は、 コロイド銀が薬に耐性がある黄色ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌を効果的に殺したことを発見しました。緑膿菌は、病院や免疫系が弱った人でよく見受けられるものです。切り傷や擦り傷から薬に耐性がある感染源に接触するリスクを考慮すると、高品位の銀を一ビン薬品棚に確保して、切り傷や擦り傷、その他の局所的外傷を負ったときに使うことは合理的なように見えます。
1. ハチミツ — ハチミツは感染症と戦うために20世紀まで使われました。しかしながら、食料品店で見つけるグレードAのプロセス済ハチミツは、高果糖のシロップにしかすぎず、実際には、感染のリスクを増加させます。その代わりに、生のマヌカハチミツを使ってください。このハチミツは、マヌカの花に集まるハチが作るもので、ある種のバクテリアに対して抗菌作用がより高いのです。
2. ココナッツオイル — ココナッツのバージンオイルは、2つのメリットがあります。お肌の湿り気を保つことと、線維芽細胞の増殖および外傷の治癒の改善です。傷の部位に一日二回ココナッツのバージンオイルだけを使ってください。
3. DuoDERM — DuoDERMとは、ハイドロコロイド包帯のブランドです。この包帯で外傷を覆い、バクテリアから保護し、保湿を継続して治りを早めます。DuoDERMはまた、傷を保護すると同時に、その部位の痛みを和らげます。
4. 喫煙の回避 — 喫煙を回避する。外傷の治癒には、血液の供給を良くすることが必要です。喫煙は、血管収縮を通じて皮膚への血流を減らすとともに、肌の健康と治りに必要なビタミンAの吸収も減少させます。
5. 栄養 — 治りを早め、全体的な健康状態を改善するために毎日できるいくつかの選択肢があります。
ベータカロチンまたはビタミンA — ビタミンAやベータカロチンを多く含む食品は、オレンジ色のことが多いです。例えば、さつまいも、ニンジン、冬カボチャです。妊娠中、授乳中、妊娠を計画している場合は、ビタミンAのサプリメントは摂らないでください。
ビタミンC — あなたの身体は、ビタミンCを使ってコラーゲンを作り、新しい組織を形成します。ビタミンCは水溶性です。一日3,000ミリグラム(mg)まで摂ることができます。下痢が起こる場合は、量を減らします。 ビタミンCは、一定の投薬と相互作用します。例えば、化学療法、エストロゲン、ワルファリンなどです。投薬をしている場合は、既知の相互作用について薬剤師に尋ねてみましょう。ビタミンCが豊富な食品には、かんきつ類、濃い緑色の葉物野菜、ブロッコリー、ベリー類などがあります。
亜鉛 — 亜鉛は、外傷の治癒を刺激し、亜鉛ロゼンジ(トローチ)として経口サプリメントの形で使うか、またはクリームの形で、外傷部に直接つけることができます。開いている傷口には決してつけないでください。また、サプリメントとして長期に摂らないでください。亜鉛が豊富な食品は、カボチャの種、カキ、子牛の肉、ビーフ、カシューナッツ、マッシュルームなどです。
ビタミンB群 — これは、外傷の治癒を早め、皮膚の健康を改善します。ビタミンBが豊富に含まれる食品は、ほうれん草、ブロッコリー、子牛の肝臓、レンズマメ、パセリ、ピーマンなどです。
ブロメライン — パイナップルで見つかったこの酵素は、腫れやあざを軽減し、治癒を早めます。
L-アルギニン — これは、外科手術後に治癒を改善するために使われます。アルギニンが豊富に含まれる食品は、チョコレート、ピーナッツ、チキン、ビーフ、ラム、牛乳、チーズなどです。
切り傷からの出血が止まりそうもないとき
傷がとても大きいか深いとき
取り除けないチリやごみがあるとき
動脈への損傷や骨まで達する傷の場合
動物やヒトに噛まれた傷の場合
傷が感染しているように見えるとき。例えば、緑や黄色の膿がある、外傷の周りの赤い部分が拡大している、傷の周りの皮膚が「しわ」状に見える、傷の周りの部位がその周りの皮膚よりずっと暖かい場合、赤い線が何本もその部位から出ている場合
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