鍼治療―抗ガン剤の副作用を和らげる効果が?

鍼治療

早分かり -

  • 乳ガンの治療でエストロゲンを減少させる薬剤を服用している女性の更年期症状に鍼が高い効果を示した。
  • 伝統的な鍼治療と偽鍼治療を受けた患者のどちらにも症状の軽減が見られた。
  • プラシーボ効果の可能性とも、シャム鍼によるわずかな刺激で生理学的な効果が現れたとも考えられる。
  • 鍼治療は、慢性病、吐き気、高血圧など、あらゆる症状に安全に対処できる方法として長い歴史を持っている。
  • 皮膚に鍼を刺す方法も、指圧による刺激も同様の効果があるとされる。
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Dr. Mercolaより

慢性の痛み、高血圧、吐き気などの症状で、毎年、多くの人が鍼治療を受けます。鍼は、アメリカでは従来の医学に替わる治療として考えられており、世界的に、最古の治療法の一つでもあります。

中国、日本、韓国をはじめとするアジア諸国では、様々な症状に対処する方法として、鍼は数千年 の歴史を持っており、その効果はまやかしではありません。

鍼治療が安全に様々な不快症状を 和らげることができる ことを、その歴史が証明しています。興味深いことに、鍼治療だけでなく、偽鍼治療でも同様の効果が得られることを示す研究報告がなされました。

鍼治療でガン患者の更年期症状を軽減

アロマターゼ阻害薬による治療を受けている乳ガン患者においても、鍼の効果が確認されたことが発表されました。乳ガンの治療には、エストロゲンを減少させる薬剤が用いられ、筋肉痛、ホットフラッシュ、発汗などの更年期症状が発生します。

この研究は、アロマターゼ阻害薬による治療を受けている約50人の乳ガンの患者を対象としました。8週間にわたり、毎週の鍼治療または偽鍼治療(経穴でない部位、鍼を刺入しない)を実施しました。

その結果、どちらの治療法でも、症状の改善があり、特にホットフラッシュの改善効果が見られました。伝統的な鍼治療とシャム鍼による治療を受けた患者の両方に改善効果があったのです。

これは、プラシーボ効果の可能性と、シャム鍼によるわずかな刺激で生理学的な効果が現れたとも考えられます。いずれにせよ、改善効果があるのであれば、どちらでもいいですね。研究の筆頭著者であるTing Bao医師は述べています。

「鍼は、数千年の歴史を持つ医療処置です。リスクはほとんどなく高い効果が得られます。」

鍼の作用機序

鍼治療の記録は、2500年以上前にさかのぼります。人体には、経絡(気血の流れる通路)で結ばれた2000以上のツボ(経穴)があるとするのが基本的な考え方です。気(エネルギー)がこの経絡を流れており、流れが遮られると、身体の不調や慢性病へと発展するのです。

治療は、細い金属製の治療針(3-15本)を、経穴に刺入して行われ、医師、鍼灸医師が施術します。痛みはほとんどなく、患者が多くが、施術後には、元気が出た、リラックスできたと感じるようです。

鍼治療は多くの慢性症状に効果があることが知られており、中枢神経系への刺激により、天然の化学物質が分泌され、体の調子、痛み、生理的機能の変化をもたらすと考えられています。鍼治療による身体への影響には次のようなものがあります。

  • 電磁信号の流れを刺激し、免疫細胞や鎮痛作用のある物質を分泌する。
  • オピオイドの分泌を促し、痛みを和らげ、眠気を起こす。
  • 視床下部、脳下垂体を刺激し、体調を整える。
  • 神経伝達物質、神経ホルモンを分泌させ、脳内の化学組成を整える。

鍼治療適応疾患30種と今後研究が必要な疾患60種

鍼治療は、慢性の痛みの治療に良く用いられます。数多い研究の中で、ある分析によると、慢性の痛みには、薬による治療より、鍼治療による痛み軽減効果の方が高いと結論づけました。

鍼を用いない治療での28%に対し、鍼治療を受けた被験者の約50%に痛みの軽減が確認されました。

また、慢性の痛みに対する効果は、30以上ある鍼治療の効果のうちの一つ でしかありません。WHOが、鍼治療について臨床実験を含む分析を行った結果、次の症状への効果が認められました。

放射線療法、化学療法の副作用 アレルギー性鼻炎(花粉症を含む) 胆道仙痛
うつ症状(神経症、脳卒中発作後に起こるうつ状態) 細菌性赤痢 月経困難症(初期)
上腹部痛(消化性潰瘍、急性/慢性胃炎、胃痙攣) 顔面痛(頭蓋下顎障害を含む) 頭痛
高血圧(本態性) 低血圧(初期) 陣痛誘発
膝の痛み 白血球減少症 腰痛
胎児の位置異常 つわり めまい、吐き気
首の痛み 歯科系の痛み(歯の痛み、側頭下顎機能異常を含む) 関節周囲炎の痛み
手術後の痛み 腎疝痛 慢性関節リウマチ
座骨神経痛 捻挫 脳卒中
テニス肘


さらに、鍼治療は、月経前症候群(PMS)、中毒症状、百日咳などを含む次の病気や症状にも効果があると考えられていますが、詳しい研究が必要です。

腹痛(急性胃腸炎、胃腸痙攣) にきび アルコール依存症、解毒治療 ベル麻痺
気管支喘息 ガンの痛み 心臓神経症 胆嚢炎(慢性、急性増悪)
胆石症 競争ストレス症候群 頭部、脳の損傷(閉鎖性) 真性糖尿病(インスリン非依存性)
耳痛 流行性出血熱 鼻血(単純性、全身性/局所疾患なし) 眼の痛み(結膜下注射による)
女性の不妊症 顔面痙攣 女性の尿道症候群 線維筋痛症、筋膜炎
胃運動障害 痛風による関節炎 B型肝炎患者の諸症状 帯状疱疹(ヒト(α)ヘルペスウイルス3)
高脂血症 卵巣機能低下症 不眠症 陣痛
乳汁分泌、不足 男性の性的機能不全(一過性) メニエール症 神経痛(帯状疱疹発症後)
神経皮膚炎 肥満 アヘン、コカイン、ヘロイン依存症 骨関節炎
内視鏡検査による痛み 閉塞性血管炎の痛み 多嚢胞性卵巣症候群 小児の抜管後呼吸困難
術後回復期 月経前症候群 前立腺炎(慢性) 掻痒
神経根/仮性神経根痛症候群 レイノー症候群(初期) 再発性尿路感染症 反射性交感神経萎縮症
尿閉(外傷) 統合失調症 唾液過多(薬物による誘発) シェーグレン症候群
咽喉カタル(扁桃炎を含む) 脊柱痛 斜頚 顎関節症
ティーチェ病 タバコ依存 ツレット症候群 潰瘍性大腸炎、
尿路結石 血管性認知症 百日咳

鍼の種類―体質にあったものを選ぼう

伝統的な鍼治療では、鍼灸針を使用します(acupunctureという言葉が表すとおりです)が、電気、レーザー、指圧などにより経穴を刺激する方法もあります。

「acupuncture」という用語は、効果の似ているこれらの全ての方法を差しています。より自然で、古くからの方法を試したい気持ちはあっても鍼を刺すのが怖い方は鍼を使わずに同じ効果が得られる方法が他にもあるということです。

ある研究で、放射線治療による吐き気に苦しむガン患者を、伝統的な鍼治療(皮膚に鍼を刺入する)を受けるグループと、先のとがっていない鍼で経穴を刺激するグループに分けて、鍼治療を実施しました。興味深いことに、グループの95%の患者において吐き気が軽減し、67%の患者では、よく眠れる、気持ちが明るくなる、痛みが減ったなどの改善が見られました。

私がお勧めする鍼を使わない心理的な鍼治療は、 感情解放テクニック(EFT)です。EFTは伝統な鍼治療と同じ経絡という考え方を持っています。鍼を使わず、治療の専門家がいなくても、お金をかけずに心身の病気に対処できます。

嫌な出来事、やめたくてもやめられないこと、痛みなど、抱えている様々な問題を頭に描きながら指先でタッピングしながら肯定的な言葉を発して、頭部や胸の経穴に気を送ります。指でのタッピングと、肯定的な言葉の組み合わせが、体内エネルギーを狂わせる感情のよどみを取り除きます。そして、健康と病気の治癒のためには重要なポイントとなる心身のバランスを取り戻します。

EFTは自分でもできますが、問題が複雑で思うように効果が現れない場合は、EFTの専門家に相談してみましょう。伝統的な鍼治療に挑戦するのもいいですね。施術者のスキルで効果がまったく違いますので、資格を持った専門家に相談しましょう。