Dr. Mercolaより
旅行にかかる時間が2時間であっても12時間であっても、新しい寝床での最初の夜の睡眠はくつろげるものではありません。旅行中あなたがかかえる問題は時差ぼけに関係するものもありますが、その他の原因も考えられます。
Current Biologyに掲載された研究によると、睡眠障害の第1夜効果(FNE)は通常と異なる寝床で眠る場合におこる典型的な睡眠障害とみなされることが多いのですが、実際は半球間非対称性の結果であるということです。
別の言い方をすると、不慣れな環境を睡眠中に監視するために、あなたの脳の片側がもう片方よりも緊張する、ということです。神経画像処理技術が発達した結果得られたこうした発見で、あなたがホテルや親戚宅に泊まる初日に必要な休息が取れない理由がわかります。
あなたの脳はあなたの体の中でもっとも複雑な臓器で、体の機能のすべてを制御し、監視する役割をしています。あなたの脳は通常左脳、右脳と呼ばれ る、二つの均等な部分で出来ています。医療用語では、「脳」ではなく、「半球」と呼びます。あなたの脳の右半球はあなたの体の左側を、左半球は右側を制御 しています。
健康な脳にはふつうおよそ2千億の神経細胞と数百兆個のシナプスと呼ばれる接合部があります。情報を伝達する電子信号はシナプスで伝達されます。
最近になってようやくこうしたシナプスを調査する技術、その機能を確定して分類する方法が利用できるようになりました。活動状態にあるシナプスの数と能力は、あなたの年齢や目覚めているか、睡眠中であるかによって変動します。
通常、あなたの左半球と右半球で情報は異なる方法で処理されます。しかし、全体像と細かい部分を把握できるよううまく機能して情報を伝えるには二つの半球が協働しなければなりません。
左脳派は分析好きでよく話し、右脳派は物静かで直観的な人が多く、左脳派は論理的で右脳派は創造的といわれます。
脳の片側がもう片方よりも優れているというわけではなく、どんな状況でもバランスが取れた評価をするには両方が必要なのです。
睡眠中は私たちの体も脳も「オフ」の状態、不活発で受動的な状態だと考えられたこともありました。しかし現在では脳が有害な毒素を処分する仕事のほとんどを睡眠中にしてくれることが分かっています。
この清掃作業によってあなたが年をとってアルツハイマーや痴呆になる危険が減少するのです。睡眠中のあなたの脳は特徴的な活動サイクルを通して質の高い、安らかな睡眠に影響を与えています。
最も特徴的な二つのサイクルが、急速眼球運動(レム)と非急速眼球運動(ノンレム)睡眠サイクルです。睡眠の専門家の多くが私たちはレム睡眠中により頻繁に鮮やかな夢を見ると信じています。
あなたのレム、ノンレム睡眠のパターンは夜の間、はっきりしています。最初のレム/ノンレム睡眠サイクルの長さの平均は70~100分で、2回目以降は90分~120分です。
科学者の間ではまだこのサイクルのパターンの原因が解明されていません。この通常の睡眠パターンは以下の異なる要因で影響を受ける可能性があります。:
最近2-3日間のあなたの眠りがあなたの睡眠パターンに重大な影響を与えます。最近の睡眠の質が高く、安らかなものであればあるほど、そのパターン は続く可能性が高まります。頻繁に睡眠を妨害されるとあなたの睡眠ステージは再配分され、休息の質が落ちてしまう可能性があります。
旅行中にあなたの睡眠の質に影響するもう一つの要因は時差ぼけです。時差ぼけは時間帯を横切って旅行した結果に生じる、疲労や不眠などの一時的な状態です。時差ぼけ症候群とか、ジェット機病とも呼ばれますが、時差ぼけはあなたの体の「生物時計」の機能障害です。
あなたの体内時計は、概日リズムとも呼ばれますが、あなたの体温やホルモンのレベルの変化、日光を受ける時間その他の生体状態などによって統合調整されています。
他の時間帯に旅するとき、それが隣の時間帯であっても、あなたの体内リズムの調整には時間がかかり、体内時計の設定は数日間、元のままです。
若ければ若いほど、異なる時間帯になれるのが簡単で夜も安らかに眠れます。
西から東への旅行によりうける影響は、東から西への旅行の場合克服しにくいものです。あなたは時間帯の変化によって身体、感情的な症状、睡眠不足以外にもその他、便秘、イライラ、脱水症状や不安、吐き気などに悩まされるかもしれません
あなたの脳の左右のはたらき、あなたの脳がどのようなサイクルを経験するか、その他あなたの旅行中の不眠に影響する要因すべては混ざりあい、異なる環境下での睡眠が旅行中の初めての夜にあなたの脳に影響を与えるのです。
Current Biologyに発表された研究によると人間は鳥類や海に住む哺乳類に似たところがあり、今までと異なる、慣れない環境下では、私たちの脳の半分は、残りの半分より休まないらしいのです。 つまり、あなたの左半球があなたを保護している間にあなたの体の他の部分と右半球が休んでいるということです。
研究者たちはブラウン大学の学生35人にこの研究への協力を依頼し、モニターに体を接続したまま、睡眠研究室で就寝してもらいました。研究の結果、二つの異なる脳半球の睡眠サイクルに一定の不均衡が認められました。
ブラウン大学の認知、言語、心理科学科の教授である佐々木由佳博士によると「左半球と右半球の睡眠の度合いは異なっているようだ」ということです。
旅一日目の夜、左半球は最初からずっとより緊張した状態ですが、研究に参加したどの被験者においてもこの影響は二日目の夜には消えていました。
研究者たちは音とEKG測定によってこのことを確かめました。学生たちの脳が睡眠中に聴かされていたものと違う高さの音に反応することを発見したのです。
研究では、左耳より右耳で音を聞かせたほうが学生たちの起きるのが早いこともわかりました。あなたの右耳は左脳で、左耳は右脳で制御されています。
こうした発見は人間が寝ている間片方の脳だけ休ませることができるという学説を初めて実証するものです。
モバイルアプリは情報を集めたりするのに、エンドユーザーとって便利なツールです。2014年、ミシガン大学の数学者が発表したEntrainとい うアプリは、旅行者が別の時間帯に早くなれるのを助け、睡眠習慣のデーターを収集するものです。ユーザーが特定の個人情報と旅行の内容を入力すると、アプ リが時差ぼけから回復するのに一番良い方法を教えてくれます。
モバイルアプリのユーザーは研究者にデーターを送ることに同意するよう求められました。アプリは旅行者から膨大な情報を集め、集めた情報をより良い回復時のために役立たせることを目的としていました。
研究データーは世界100か国の5000人のユーザーから集められました。研究者は睡眠パターンに関連したこまかい情報に興味深い点を発見しました。女性は男性より30分長めに寝る傾向があることです。日光に当たる時間の長い人のほうがより早く、より安らかに眠ります。
この研究のもう一つの特徴は、非常に少ない財源で短期間に多くの人からデーターを集めることができたという点です。データーを回収するために電話を使って大勢の個人にお願いすることなく、研究者たちは人の手助けをしながら、瞬時にデーターを手にすることができました。
旅行中に適切な睡眠をとりながら、時差ぼけと半球間非対称両方の両方の影響を減らすのは困難です。これらはまったく避けることはできませんが、いくつかの予防措置をとることで安らかに休息をとるための能力に与える影響は減らすことはできます。
水分補給をすることは目的地まで飛行機に乗る場合でも、車でドライブする場合にも大切です。脳が睡眠を制御する機能は水分が十分である場合にもっともよく働きます。あなたの脳は水分が不足するとうまく機能しなくなり、睡眠をとったり、特定の認知機能を果たすことが難しくなります。
異なる環境で眠ることであなたの脳は緊張しやすくなります。頭をいつもの手触り、香りの物の上に置くことでより安らかに眠れる場合があります。
大きなストレスがかかると、あなたの睡眠の量は減り、質が落ちてしまいます。旅行中は、あなたの睡眠はすでに乱されています。ヨガやストレッチ、深呼吸、感情解放テクニック (EFT)などのストレスを減らすテクニックを繰り返し練習しましょう。
顔に照明が当たらないほうがより安らかに深く眠ることができます。部屋を暗くするブラインドがないホテルの部屋に泊まるときは睡眠マスクを持参しましょう。慣れない環境で初めて使うことを避けるため、家でもマスクをつけて眠る練習をしましょう。
電子機器からのブルーライトはあなたの脳を刺激し、熟睡するのに必要なメラトニンも抑制します。少なくとも寝床につく90分前には電子機器のスイッ チを切りましょう。睡眠前にリラックスするために読書をした後、灯りを起きて消さなくてよいように、本と読書灯を持参しましょう。
暖かいシャワーでくつろいで熟睡するための準備をします。部屋が暑いと寝付きにくいので、室内温度は21度以下に設定します。
家から物を持っていくとくつろげる環境を作ることができます。自宅でホワイトノイズや海の音を聴きなれている場合は、ホテルに持って行って使いましょう。枕のようにあなたの左半球が静かに休むのを助けてくれます。
運動はあなたを鍛え、耐久性を向上してくれるので、眠れなかったときには必要です。でも、質の良い睡眠の助けにならない場合があるので、眠る前に目覚めてしまうような運動は避けましょう。ただし、非常に夜遅く運動することが良い眠りにつながる人もいます。
カフェインもアルコールもあなたの睡眠パターンを妨げ、次の日に疲れが取れない原因となる場合があります。午後2時以降にカフェインの入った飲み物をとるのをやめて 旅行中はアルコールの摂取をさけましょう。アルコールには抑制作用があり、眠るために十分な疲れを感じさせてくれますが、夜中に目を覚ます回数を増やすため、安静に休むことができなくなります。
日光にさらされるほどよく眠れます。日光にさらされると体のメラトニン分泌が調整されます。メラトニンはあなたの睡眠サイクルを整えるものです。同様に、眠る前に明るい光をあびると睡眠サイクルが崩れます。
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