Dr. Mercolaより
寝る前の読書や、夜中過ぎてからのメールでガンのリスクが増加するとは考えないかもしれません。でもその可能性があるのです。人工の光を浴びることで、メラトニンという重要なホルモンが分泌されにくくなってしまうのです。
メラトニンには、ガンの予防、免疫系の強化、細胞の老化を遅くするなどの役割があります。これまでに100を越える様々な疾患の前臨床研究の対象となってきました。私たちの身体にとって「夜のヒーロー」であるこのホルモンにとって一番の強敵が光です。
前世紀から今世紀、昼と夜の区別なく常に光が存在するようになりました。より生産性の高い、24時間眠らない世界を作り出そうとする終わりのない実験をしているかのようです。
現代技術によって発生した光による公害は人体だけでなく地球上の様々な生命体に多大な影響を及ぼし始めています、
20万年以上前は、ヒトもその他の動物も、環境要因を利用して器官を発達させてきました。地球の周期に従った体内時計がそうです。
人工の光は体内時計やメラトニンの生成を妨害し、健康にも悪い影響を及ぼします。Russel Reiter医師も上述の講演で、「光はあなたを死においやることもできます。」と述べています。
ヒトをはじめとする哺乳類は、脳の視床下部にある視交叉上核(SCN)に体内時計を持っています。光と暗闇の信号により、視交叉上核(SCN)が松果体にメラトニンを生成するように命令を出します。
目から入った光は視神経を通り、視交叉上核(SCN)に到達します。視交叉上核は光と暗闇の周期に敏感に反応する器官です。
夜、照明を点灯するとすぐに、明暗についての誤った情報が脳に送られます。脳にとって光は、日中であるという解釈しかありません。これにより、体内時計が、メラトニンの分泌を止める命令を松果体に送るのです。 照明を点灯している時間が1時間であろうと数分であろうと同じです。照明を消しても、メラトニンの分泌が再開されることはありません。
ヒトは、炎の明かりと共に進化してきました。黄色やオレンジ色、赤色といった波長は、白や青の波長と異なり、メラトニンの分泌に影響しません。事 実、メラトニンの生成を阻害する光の波長は、460-480 nmの範囲のみです。メラトニンの生成が阻害されないように、日が落ちたら、照明を暖色系のワット数の低い電球に変えると良いのです。Reiter医師 は、5ワットの電球を使った岩塩ランプが丁度良い明るさであると述べています。
メラトニンというホルモンは免疫系にとって様々な健康効果があります。メラトニンは強力な抗酸化物質でフリーラジカルの活動を抑え、炎症の悪化を防ぎます。事実、メラトニンは、免疫系にとって不可欠であり、不足すると胸腺が萎縮していきます。また、メラトニンには脳の老化を防ぐ働きもあるのです。
眠気を誘引し、総体的な体調の良さや満足感を与えるだけでなく、メラトニンには、非常に多くの抗ガン作用もあります。メラトニンは様々なタイプのガ ン細胞の増殖を抑え、ガン細胞を細胞死に導きます。また、腫瘍の急激な増殖には欠かせない血流(血管新生)も遮断します。メラトニンは、ガンの化学療法の 副作用を抑え、効果を増強します。
査読付論文として発表されたある研究では、メラトニンは、生殖器官のガンの予防効果が特に高いとしています。ガン細胞を含む全身の細胞にメラトニン の受容体があります。メラトニンが夜間に分泌されると細胞の分割が抑制されるのです。乳ガン細胞の増殖を抑えることができるのは、細胞の成長を促すエスト ロゲンの働きを阻害する効果によることが分かっています。
事実、メラトニンには生殖ホルモンを鎮静させる効果があるため、卵巣ガン、子宮体ガン、乳ガン、前立腺ガン、睾丸ガンなど、性ホルモンが引き金となるガンの予防につながっている理由の説明がつきます。GreenMedInfoでは、乳ガンに対するメラトニンの効果がどのような物かを示す20の研究結果を紹介しています。
メラトニンの抗ガン作用はこれだけではありません。ガン細胞を細胞死へ導くだけでなく、メラトニンは免疫系の働きを刺激するインターロイキン-2(突然変異してガンに変性する細胞を特定し攻撃する)などの生成を促します。メラトニンには、このように2段階の効果があるのです。現在までに、最も多くのメラトニン研究がなされてきたのは、乳ガンに関係する内容です。中でも功績のある研究を紹介します。
神経膠芽腫は、極めて進行が速い脳腫瘍で、 予後が非常に悪く、効果的な治療法はありません。そのようなガンにもメラトニンは効果を示すかもしれないのです。ある臨床実験で、膠芽腫の患者に、放射線 治療とメラトニンによる治療、または放射線治療のみをおこないました。放射線治療のみの患者は生存率ゼロでしたが、メラトニンを処方された患者の1年生存 率は23%でした。
別の研究では、メラトニンにより、前立腺ガンの増殖が抑えられたことがわかっています。肺ガン、膵臓ガン、直腸ガンやそのほかのガンでも同様の結果が得られています。Life Extension Magazine(延命)誌に掲載されたある記事では、メラトニンを治療に取り入れた場合の1年生存率の大きな改善 についてまとめた表が紹介されています。メラトニンを様々なガン治療に用いた場合の体系的な評価をまとめた著者によると、
「メラトニンの投与量とガンの種類に関係なく効果は同じだった。ひどい副作用の報告はなかった。死亡率の劇的な減少、副作用の少なさ、費用面などを考慮した場合に、メラトニンはガン治療にとって大きな可能性を秘めています。」と述べています。
この研究結果が考慮され、WHOは2007年に、シフト制の仕事には発がん性がある場合があると認定しました。この結果、夜勤のある仕事は、トリクロロエチレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)などの 有毒物質への暴露 と同じ健康リスクカテゴリに分類されます。このことからも、メラトニンがヒトの健康にとって重要でないはずはないのです。
安眠を妨害する環境要因は主に、明るさと温度の2つです。次に示す方法で、睡眠環境を整え、メラトニンの生成を促しましょう。
最新の研究では、 炎症が 多い、免疫機能の低下、ガンのリスクの増加など、メラトニンの不足による様々な不利益が示されています。メラトニンの自然な分泌の妨げとなるのは、人工の 光をわずかでも浴びてしまうことです。複数の研究で、夜勤の労働者が、ガンのリスク、特に乳ガンのリスクが高い事を示しています。
メラトニンの補充は良い方法かもしれませんが、自分で分泌できる方が更に効果が高く費用もかからずに済みます。体内から自然に、多すぎず少なすぎな い最も適切な量を分泌できるようになり、常に最量を保てるように調整し続けることができるようになることが理想です。上述の方法では、メラトニンの分泌量 を増やすことができなければ、サプリメントを検討しましょう。サプリメントを摂っても、上述の項目を続けてください。
メラトニンは、就眠を助けるだけでなく、深い眠りを促し、不眠や日中の疲れが起こりにくくなるという研究報告がなされています。はじめは、ごく少量(0.25-0.5 mg)でかまいません。少しずつ量を調整しましょう。量が多いと(3 mg)、 余計に 目がさえてしまうことがあります。量の調整には注意が必要です。
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