外国の人とコミュニケーションを取ろうと思ったら、まず笑ってみてください。コミュニケーションの方法として世界共通であることからもわかるように、笑いは、人類にとって重要な意味を持っています。
人類がまだ言葉を持たなかった時から、母子は遊びの中で笑い声に反応し合ってコミュニケーションを取ったり、絆を深める役割もありました。現代でも、周囲に笑っている人がいると、脳が反応して思わず笑顔や笑いが出てしまうのです。
笑いは、多くの場合、不随意な反応で、自由にコントロールできるものではできるものではありません。笑いは、呼吸のパターンや、表情、腕や脚の筋肉にいたるまで、脳からの信号が作用して起こると考えられています。
笑いには、健康に与える効果の他にも多くの不思議な点があり、これは、人類(またはその他の種)に見られる最も素晴らしく不思議な身体的反応です。
神経科医で漫談家でもあるSophie Scott教授は、これからご紹介する笑いに関する驚くべき事実を発見しました。
ネズミはくすぐられると笑います。一緒に遊ぶほどますます多く笑うようになります。心理学者のJack Panksepp氏が初めてネズミが笑う様子を発見したのは1990年代です。ネズミの笑い声は非常に高い音域であったため、聞き取るために特殊な機械が必要でした。
「笑ってる時には周りに誰かがいることが多いはずです。」と笑いの研究家であるRobert Provine医師は述べています。人が笑ってまう決定打は、別の人間がいることであって、ジョークや面白い映画のせいではありません。
.Provine医師と研究チームは、自然な環境下で人がどのような時に笑うのかについて1200人を観察した結果、ジョークを聞いて起こる笑いは全体の10-20%であることがわかりました。笑いは、一人でいる時よりも人との接触がある時に30倍多く発生します。
大抵の場合笑いが起こったのは、平凡なコメントや少しユーモアのある発言の後であり、このことは、人が笑うきっかけとして重要なのは内容よりも人間そのものであることがわかります。
Scott教授の研究では、脳は本当の笑いと作り笑いを聞き分けることがわかっています。作り笑いや愛想笑いを聞くと、他者の気持ちを推測する機能を持つ内側前頭前皮質が活発に反応します。
つまり、相手がなぜ作り笑いをしているのかを解釈しようとしているということです。
「あなたが笑えばみんなも笑う」という表現がありますが、そのとおりです。笑いは、伝染するのです。笑い声は脳の運動前野に働きかけます。この部位は、聞こえてきた声に反応して一緒に笑えるように顔の筋肉を動かします。
慣れ親しんでいることもユーモアや笑いにとって重要な要素です。研究の結果、有名なコメディアンのジョークのほうが、あまり有名でないコメディアンより面白いと感じていることがわかっています。
笑うと、エネルギーの燃焼や心拍が10-20%も上昇します。10-15分間笑う、10-40カロリー燃焼するということになります。理論的にはすばらしい方法に思えると思いますが、カロリー燃焼効果が現れるまで、1時間はしっかりと笑う要があります。
やっかいなテーマについて話し合う際に、なるべく笑顔や笑いを交えて話したカップルは話の後すぐに気持ちを切り替えることができ、関係が円満であるという研究報告がなされています。また、交際期間も長くなる傾向にあります。
笑いには独特のパターンがあります。文の途中で笑いが起こることはほとんどありません。笑いが起こるのは、文の終わった後の次の発話までの間であることから、言語が重要であるということがわかります。
コメディアンは、笑いが盛り上がり、引いていくという自然な流れを利用して、発話の後に一呼吸置いて観客が笑うタイミングを作ります。
Provine医師の研究によると、男女間の会話において女性は男性より126%多く笑っていることがわかりました。男性はこの場合、笑うよりも笑わせる側のほうを好むようです。
Provine医師は、交際相手募集コーナーで3700人以上の記事を調べ、笑いやユーモアのセンスを相手に求める女性は62%多く、男性の場合は、ユーモアのセンスがあると自己紹介をする場合が多いことを発見しました。
全員を笑わせるジョークは存在しないのですが、Scott教授の研究室で誰でも絶対に笑ってしまう効果のあるものは、笑っていけない状況下で笑いをこらえている人を収めた動画です。
カリフォルニア州ロマリンダ大学の研究者グループは、健康における笑いの効果について調べました。20人の成人高齢者を、面白いビデオを鑑賞するグループと、だまって20分座っているという2つのグループに分けました。実験の前後には短期記憶のテストを実施しました。
ビデオを見たグループでは、テストの結果に43.6%の大幅な改善が見られ、座っていたグループでは20%の改善にとどまりました。また、ビデオを見たグループではストレスホルモンであるコルチゾールの体内濃度が低いこともわかっています。この研究者グループは、笑いは、年配層において老化による記憶力の低下を楽しく抑えることができるツールであると述べています。
「研究の結果、ユーモアは、臨床効果やリハビリ効果が期待でき、高齢者の総体的な健康を支援するプログラムに取り入れることが可能であることを示唆しています。生活の質(心身、精神、社会的、経済的な面など)を保つためには、学習能力や遅延想起などが重要です。高齢になると、年齢による記憶力の低下があるかもしれません。しかし、現代では、医療専門家によるポジティブで楽しいユーモアセラピーで記憶力を改善することが可能です。
笑いには、他にどのような効果があるのでしょうか。ある研究では、笑いは、ストレスホルモンを減少させ、免疫機能を高め、気分を楽にさせるなどの効果があることがわかりました。笑いは、生理学的、心理的、社会的、精神的な面や、生活の質への効果が大きいことがわかっています。笑いヨガ、笑いパーティなどグループでの笑いを提供する機会が世界中で非常に注目されるようになりました。笑いセラピーの効果を次にご紹介します。
子供はよく笑います。大人はというと、日々の生活に追われて、ついつい笑うことを忘れがちです。可能であれば、毎日の習慣として笑いを取り入れましょう。自分なりの笑える何かを見つければよいのです。誰かが周りにいるほうが笑いは生まれやすいですから、友人、家族、同僚と過ごす時間でちょっとしたユーモアを交えるようにしましょう。
定期的な運動や野菜を食べることと併せて、一日に15-20分間の笑いを取り入れることを推奨している専門家もいるくらいです。笑いを毎日「摂って」いない方、こちらのビデオをご覧ください。笑いは伝染しますよ。
https://youtu.be/HttF5HVYtlQ
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