猫の嘔吐と聞いて変わったトピックだと思われますか?いいえ、実は、猫は良く吐く動物です。それも、日常的に吐くのです。
病気で吐く場合もありますので、トラブルをいち早く発見して獣医師に相談できるように、猫が吐く基本的な理由についてご説明します。
猫が吐く理由は色々あります。「うちの猫はなぜしょっちゅう吐くの?」という疑問には、どの猫にもあてはまるシンプルな答えは見つからないことを知っておいてください。
フードの品質が悪かったり、レンダリングされたものは、吐く原因となります。「レンダリング」とは、キャットフードに含まれるタンパク質の品質が、人間が食べても良い品質ではないということです。鳥の羽毛やくちばし、獣皮、ひづめ、眼球、頭部など、食肉処理場から出た廃棄物が使われています。このような廃棄物は、タンパク源とされていますが、ペットにとっては消化吸収が困難なため、吐いてしまうのです。
キャットフードにアレルギーを起こす猫もいます。長期間、何度も繰り返し吐く場合はアレルギーが原因の場合が多いです。猫ちゃんに変わった様子がなく、平均的な体重で、元気があるのに、時折吐くという場合は、アレルギーを疑いましょう。
フードに対するアレルギーは、同じエサを与え続けることで起こります。これを聞くと、猫の「いいなり」の飼い主さんは、「うちの子は、他のフードは食べてくれない。」と思うはずです。同じフードばかりを与えられる猫ちゃんが多いのは納得です。飼い主の皆さんが何もわかっていないのではなく、猫の方が他のフードを受け付けないのです。
私の医院を訪れる猫ちゃんの多くは、魚肉や家禽類の肉を好んでいます。この2種類のタンパク質に偏っており、他のタンパク源を与えても見向きもしません。
猫ちゃんに、他の栄養源を食べてもらうためには、ちょっとした仕掛けが必要です。猫ちゃんに、普段と違うエサを食べてもらう方法はこちらの動画をご覧ください。
日常的に吐く場合は、食事に問題がある可能性が高いため、早く食事の改善を実施しましょう。たとえ人間が食べてもよい品質のものであっても、いつも同じタンパク源を与えると、消化管の炎症やアレルギーの発症につながります。タンパク源の品質の他、こまめに変えることも重要なのです。
猫ちゃんの食事を、まず人間が食べてもよい品質のものに変更し、それからローフードへと変えていくことをお勧めします。アレルギーを避けるために、3ヶ月おきにタンパク源を変えていきましょう。
おやつも見直しが必要です。普段与えているエサは高品質なのに、粗悪なおやつをあげている飼い主さんが多いのです。
おやつの成分表示を確認しましょう。プロピレングリコール、FD & C赤色4号、化学染料、乳化剤、界面活性剤の他、読めない、知らない物質が記載されていれば、猫ちゃんに与えない方が賢明です。
これらの添加物、保存料いりのジャンクフードは、消化管の炎症による嘔吐原因となります。
もう一つ、注意しなければならないのは乳製品です。ほ乳類なので、ミルクがあれば飲みますが、同じ種(猫には猫の)のミルクでなければなりません。胃腸のトラブルは、違う動物のミルク(授乳期に)を飲むことで起こります。
猫は、牛乳に含まれる糖を消化する酵素は持っていません。猫のすい臓からは、牛の乳に含まれるラクトースを消化するためのラクターゼは分泌されません。その結果どうなるでしょう。吐き気などの、消化管の症状が現れます。
食べるのが早すぎることも吐き気の原因の一つです。猫は四足動物です、食道は水平に保たれています。食べたものが、食道の下側の括約筋にぶつかり、食べた数分後に、未消化の食べ物が逆流してくることがあります。このような逆流は、早食いしないようにすると収まります。
多頭飼いのお宅で、決まった時間に、猫それぞれに、エサを与える場合(この方法がおすすめです)、エサを他の猫にとられないように競争が起こります。
少なくとも1頭は、エサを与えるたびに自分の分をすごいスピードで食べ終えて、他の猫のエサを狙う個体がいるのではないでしょうか。
もしも該当する場合は、他の猫が食事をしている様子がわからない程度にエサ場を離しましょう。別の部屋にできたら理想的です。離すだけでは、早食いの猫ちゃんはすぐに他の猫ちゃんのエサをねらうようになります。
それぞれの猫が20分間は邪魔されずにゆっくりとエサを食べられるようにしてあげて、最後に食器を片付けましょう。この方法で、早食いをしてしまう猫ちゃんも食べるのがゆっくりになり(太らなくなり)、食べるのが遅い猫ちゃんたちも落ち着いて食事ができます。
一頭飼いの猫ちゃんが早食いしてしまう場合は、量を少なく、回数を多くして、逆流を防ぎましょう。
決まった時間ごとにエサを与えている場合、たとえば、朝6時と夜8時とすると、エサの時間が近くなると(エサの時間よりずいぶん前でも)エサを要求するようになります。
エサの時間が近いことをわかっていて、朝5時に起こされることはないですか?
エサを期待しながら待っている時間に、猫の胃には、塩酸、胃液、胆汁などあらゆる消化液が分泌されます。
この状態で、エサをあげる時間が7時になったとしましょう。これでは、6時から7時の間に、白い泡と、黄色い胆汁を吐くことになるでしょう。塩酸が胃を刺激するためです。消化する食べ物がないのに胃酸が分泌されてしまったので、炎症を避けるために、吐き出してしまうのです。
このような状況の時は、エサをあげる前に少し何か食べさせてあげましょう。いつものエサでもおやつでも結構です。食事の前に吐くことが多い場合、エサの少し前におやつをあげて、何か消化できるものを胃の中に入れてください。消化管の炎症や、エサの前の嘔吐を防ぎます。
すい臓でリパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼが十分に分泌されていない場合、慢性または急性の軽い膵炎かもしれません。
膵炎(膵臓の炎症)は猫に多い症状です。事実、膵炎は、断続的な嘔吐の原因かもしれないと獣医界でも考えられるようになってきました。 猫ちゃんの食事に消化酵素を与えることは保険のようなものです。いつも要る訳ではないですが、備えは必要です。猫ちゃんの膵臓が順調に酵素を分泌している場合でも、酵素を食事に追加して何の問題もありません。
膵臓の調子が悪く、酵素の量が足りない場合は、酵素を補うことで、消化を助けることができます。
毛玉が原因かどうか不明な場合、床に、円筒上の塊と液だまりがないか探してみてください。
長毛だったり、他の子の毛繕いをするのが好きな猫ちゃんが要る場合は、口に入る毛の量が減るように飼い主の努力が必要です。
飼い主さんが毛繕いをしてあげてください。他の猫の毛繕いをするのが好きな猫ちゃんがいる場合は、全部の猫の毛繕いをして、口に入る毛の量が少なくなるようにしてください。複数頭の猫の毛を飲んでも大丈夫な消化管の持ち主はいません。
毛玉のとおりをよくするために、繊維質の多い食事にしたり無鉱物油の毛玉ケア製品を使うのもよいでしょう。
ブラッシングやヘアカットは、飲み込む毛玉の量を劇的に減らすことができますので、猫にとっても楽です。
猫が突然吐いてしまう原因としてよくあるのが、中毒症状です。普段あまり吐くことのない猫が突然吐いた場合は、毒性のあるものを食べた可能性があります。
家庭内にあるもので猫に毒性のもあるものといえば植物です。植木を食べてしまう猫は、生ものからしが摂れない栄養素を補おうとしている可能性があります。
猫は本来、園芸植物を食べる動物ではありません。園芸植物を食べなくても、何かの栄養素が不足することはありません。必要なのは、生ものなのです。
猫用の草(イネ科)を用意してあげましょう。猫にとっては毒となる家庭用の園芸植物を食べてしまうことはなくなるでしょう。
そのほか、農薬、殺虫剤、清掃用の洗剤なども猫が誤って口にいれてしまいがちです。これらも、嘔吐の原因となります。
毒性のあるものを誤飲してしまった、またはその疑いがある場合は、1-888-426-4435、ASPCA Animal Poison Control Center(中毒管理センター)にすぐに連絡してください。
過敏性大腸症候群(IBS)、胃炎、腸炎、大腸炎、膵炎などに発展しかねない腸の疾患による嘔吐も考えられます。慢性の消化管の炎症がある猫は、断続的に吐くことが多く、消化管のリンパ腫に発展する場合があります。消化管のガンの場合も嘔吐が見られます。
甲状腺機能亢進症などの代謝異常で代謝が激しい場合も、嘔吐が見られます。
臓器不全、肝臓や腎臓などの解毒器官の機能不全も、嘔吐が見られます。
獣医や他の猫の飼い主から色々な話を聞いていると思いますが、猫にとって、吐くことは決して「正常」ではありません。嘔吐するということは、猫の体内に何かしらの不具合が起こっていることを示すサインです。
生物学的な機能の一環で吐く動物は唯一ハゲワシのみです。猫、またはその他の哺乳類は、日常的に吐くことはありません。
飼っている猫ちゃんが断続的に吐く場合は、獣医に相談してください。猫は吐いて当然という考えの獣医であれば、別の病院、たとえば統合医療やホリスティックの医院に行くことをお勧めします。
まず、甲状腺機能亢進などの大きな病気が嘔吐の原因でないことを突き止める必要があります。
次に、血液サンプルを、Texas A&M University、Gastrointestinal Laboratory(消化器病研究室)に送付し、消化管機能検査を行います。検査結果により、吸収不良、消化不良がないか、小腸の異常や他の原因がないかを判断します。
ここで最も気をつけてほしい点があります。獣医が、嘔吐の原因を探らないまま吐き気止めの薬を出すだけに終わらないように気をつけましょう。
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