犬のかゆみと匂いはカンジダ感染が原因かも

(解説は英語のみ)
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Dr. Beckerより

こちらのビデオでは、Karen Becker医師が、しつこく嫌な匂いのする、犬のカンジダ感染症についてお話します。カンジダ菌の増えすぎを判断し、急激な発症の治療や再発予防法について知りましょう。

今日は、犬のカンジダ感染についてお話します。カンジダは、出芽により増殖する胞子を形成する真菌です。

人も犬も、体内に一定数のカンジダを常在菌として持っています。犬にとって通常の健康な状態のフローラは、もともと存在している黄色ブドウ球菌、カンジダ菌などで構成されています。免疫系のバランスが取れていれば、フローラも健康なレベルを保つことが可能です。

カンジダ感染はどのように起こるか

免疫系のスペクトルでは、バランスが中心に来ます。大事なワンちゃんの免疫系も、バランスが取れていることが望まれます。

免疫機能が低下すると、バランスが失われ、カンジダ菌が増殖してしまいます。スペクトルの反対側は、アレルギーがある場合などの免疫機能の過剰反応です。これもまた、カンジダ菌の増殖につながります。

伝統的な獣医がアレルギーのある犬を診察するとします。免疫の過剰反応の症状を確認すると、ステロイド剤を処方して免疫反応を抑えてしまうというのが典型的な処置でしょう。(症状は改善するかもしれませんが、アレルギーの根本的な解決にはなりません。)

犬の体内フローラのバランスを整えている免疫機能が薬によって抑えられてしまうため、カンジダ菌が増殖してしまいます。

アレルギーのある犬に二次的な皮膚感染が見られる場合は、獣医は抗生物質を処方することでしょう。抗生物質はご存じのとおり、良い菌も悪い菌も一掃してしまいます。適度になりつつあるカンジダ菌も攻撃されてしまうため、抗生物質は良くない状況をさらに悪化させてしまうこともあります。

アレルギーのある犬がカンジダ菌に感染してしまうと、やがてカンジダ菌にもアレルギーを発症することも考えられます。皮内反応検査でも、自分の体内フローラに対してアレルギー反応を示す犬がいます。

こうなると、全身にアレルギー反応が出てしまうため非常に対応が難しくなります。このような症状のワンちゃんは、鼻の先からしっぽの先まで真っ赤に炎症を起こしてしまっていることが多いです。

免疫機能が低下していたり薬で抑えた状態の犬も、免疫反応が過剰、つまりアレルギーのある犬も、カンジダ症を発症しやすいのです。

犬のカンジダ症の兆候と症状

獣医によるカンジダ症の診断は、細胞検査(綿棒で組織を取り顕微鏡で確認)か、培養検査(皮膚をぬぐった綿棒から、ペトリ皿で細胞を培養)で確定します。

また、飼い主さんでも、ワンちゃんの匂いでカンジダ感染を判断することができます。カンジダ菌の匂いには特徴があります。カビの生えたパン、チーズポップコーン、コーンチップなどと表現されることが多いです。事実、カンジダ菌に感染した犬の足の匂いを「Frito Feet」と呼ぶ人もいるほどです。強烈で、カビ臭く、不快な匂いです。

カンジダ感染の匂いは通常の犬の匂いではありません。健康な犬には、「犬の匂い」(と言われている悪い匂い)はしません。飼っているワンちゃんの足や耳がカビ臭いと感じたら、それはカンジダ感染かもしれません。

もう一つ、特徴的な点は、掻くことです。カンジダ症は強いかゆみがあります。足にカンジダ感染がある場合、かゆくてじっとしていられないはずです。耳の場合も同じです。やたらとお尻を床にこすりつけることもあります。

ワンちゃんが始終どこかを掻いているようであれば要注意です。細菌であれ、カンジダ感染であれ、飼い主さんのケアが必要です。

カンジダ菌をやっつけるためのステップ1:食生活

飼っているワンちゃんにカンジダ感染がある場合にするべきことがいくつかあります。

第一に、食事を変えましょう。犬の場合、片耳だけのように、一箇所だけがカンジダ菌に感染するということはめったにありません。もしも、一部だけの感染であれば、その部分だけを処置して、あとは免疫の力でフローラのバランスが整うのを待つのも一つの方法かもしれません。

前足、後ろ足、両耳、または全身など、感染が一部だけではない場合(ほとんどの場合がそうですが)、食事を変える必要があります。

食事は健康の基礎です。栄養の与え方次第で、免疫機能によりカンジダ菌を無害な状態に保つこともできれば、増殖を助け、感染症を招く結果にもなるのです。

そこで、私がお勧めしたいのは「抗カンジダ食」です。抗カンジダ食の良い点は、抗炎症作用があると共に犬に適した食事である点です。

カンジダ菌は糖をエネルギー源としています。炭水化物は分解されると糖になります。人間の医師も獣医師もカンジダ感染では糖質を制限することを勧めます。

糖質とは、ペットのおやつやペットフードに含まれる白糖のことだけを指しているわけではありません。カンジダ菌の増殖につながる、気づかれていない糖分があります。例えば、ハチミツです。ハチミツはペットにとって、良い点もありますが、カンジダ菌のえさにもなります。ワンちゃんがカンジダに感染している場合は、ペットフードや、おやつの成分表示をしっかり確認して、ハチミツ、高フルクトースのコーンシロップ、ジャガイモ、サツマイモなどを含む製品は避けましょう。

カンジダ感染が酷い場合は、完全に糖分を除去することをお勧めします。GI値の低い野菜を与えましょう。糖質フリーダイエットでは、ジャガイモ、コーン、麦、米など、炭水化物を除去します。これは、非常に重要なポイントです。「カンジダ菌の治療は簡単で食事の改善など必要ない」と言えたら楽なのですが、そんなことはありません。あなたのワンちゃんは、体内フローラのバランスを一定に維持できる健康に良い食事を必要としています。

二つ目にお勧めしたいのは、抗菌作用のある食品を食事に加えることです。例えば、少量のニンニクやオレガノです。これらの食品には抗菌作用、抗カンジダ作用があり、カンジダ菌の量を抑える効果があります。

耳の感染のケア

抗カンジダ食、抗菌食に加えて、三つ目に必ず取り入れてもらいたいカンジダ対策は、体の消毒です。

犬のカンジダ感染に対する、獣医の典型的な処置は、クリーム、軟膏、ローションのようなものを、感染している部位に塗布することです。この処置の問題点は、カンジダ菌が死滅したあとに層が重なってできていくことです。死んだカンジダ菌の層を取り除いて皮膚を消毒しなければ、その上にいくら軟膏をぬっても問題は悪化するばかりです。

感染部位を消毒することが重要です。 そして、消毒ができる錠剤もクリームもありません。こればかりは、飼い主さんの仕事です。

耳に感染があるならば、毎日消毒する必要があります。耳垢が多くて、毎日きれいにする人がいれば、そうでない人がいるように、犬にも個体差があります。ほとんど耳のお手入れが要らないワンちゃんもいれば、毎日のケアが必要な子もいるのです。

頻度は、ワンちゃんの耳の状態によりけりです。夏場に割と分泌物の多いラブラドールなら、夏場だけでも毎日のケアが必要です。

耳の様子を見て、きれいで、分泌物や匂いがなければ、その日はお手入れをしなくても大丈夫でしょう。お手入れの回数は耳の分泌物の量によって決めましょう。分泌物をそのまま放っておいても、魔法の様に消えることはありません。そのままにしておくと、ただの耳垢が、爆発的なカンジダの増殖につながってしまいます。

ワンちゃんの耳のお手入れは、市販のローションやウィッチへーゼルで湿らせたコットンを使いましょう。必要なだけ、コットンを取り替えて、耳の分泌物を綺麗に取り除いて下さい。ワンちゃんの耳のケアに、綿棒は使わないようにしましょう。

足の感染のケア

カンジダ菌は、ワンちゃんの肉球の間、腋の下、脚の付け根、性器や肛門の周りなど、湿った、くぼみのある箇所に良く繁殖します。それらの部位を消毒することが重要です。

ワンちゃんの体で汗をかくのは鼻と肉球だけです。カンジダ菌が繁殖しやすい暑い時期には足の消毒が必要です。

ワンちゃんの体格によって、大きな衣装ケースのような物に水をたっぷり張ってもいいですし、小型犬であれば、キッチンや洗面台のシンクに足を浸けてあげても良いでしょう。大型犬の場合は、コーヒー缶やカップなどに足だけを浸けると良いでしょう。どの場合も、足を浸して、拭き取るようにして下さい。

スプレーやワイプでは不十分です。カンジダ菌は爪の間やくぼみのある所に住み着きます。足をしっかり浸さないと届かない所に菌がいます。

水を1ガロン、過酸化水素を1カップ、ホワイトビネガー(酢)を1-4カップの分量で作ったフットソークをお勧めします。一日に必要なだけ(何回でも)使ってかまいません。「清潔でじめじめしていない」状態を目指しましょう。
ワンちゃんの足をフットソーク(水/過酸化水素水/ホワイトビネガー)に浸した後は、すすぐ必要はありません。タオルドライして下さい。そのまま乾燥させることで、ワンちゃんの足に、抗菌効果をもたらし、舐めたり掻いたりすることが少なくなります。

抗カンジダ浴とリンス

皮膚にカンジダ感染がある場合は、天然成分の抗菌シャンプーで全身を消毒することをお勧めします。こちらも、必要に応じて何度でも大丈夫です。

ワンちゃんは定期的にお風呂に入れてはいけないというのは迷信です。これは、成分がコールタール由来のきついシャンプーが主流だった昔の話です。今では、様々な、安全性の高いシャンプーが手に入りますので、皮膚が乾燥しすぎたり、被毛を傷つけることもありません。

炭水化物と穀物はカンジダ菌のえさとなるため、オートミールを原料としたシャンプーはお勧めしません。オートミールは、犬の皮膚に存在するカンジダ菌のえさとなる穀物です。

例えば、ティーツリーオイルやハーブを使った抗菌シャンプーなどが良いでしょう。この記事で紹介した対策で、愛犬の体に発生するカンジダ菌をコントロールすることが可能です。

夏の時期は、シャンプーの後に週2-3回の抗菌リンスもお勧めします。水を1ガロン、酢またはレモンを1カップの分量です。ペパーミントオイルを20滴追加しても良いでしょう。全部使えばワンちゃんが良い匂いになることは間違いありません。
例えば、ティーツリーシャンプーで洗って、しっかりすすいだ後に、こちらで紹介した抗菌リンスで、カンジダ菌を減らしましょう。

リンスは、頭にかけたり、目に入らないように気を付けて下さい。首元から下に使いましょう。リンス液をかけて、皮膚に届くように毛にしっかり染みこませ、腋の下、足、脚の付け根、しっぽの周りなど菌が繁殖しやすい箇所に注意しながら塗り込んで下さい。そのまますすがずにタオルドライします。ワンちゃん自身がすっきりするだけでなく、カンジダ菌の増殖も抑えられます。

レモン汁も過酸化水素水も両方使う方への注意があります。黒い毛の場合、脱色してしまう可能性があります。黒い毛のワンちゃんは脱色を防ぐために、酢を使うと良いでしょう。

カンジダが再発してしまう場合

ほとんどの場合、カンジダ感染は季節的な物です。気温や湿度が上がる頃にカンジダ菌が増え、異臭がするようになります。これに該当する場合、夏の期間は消毒や食事に気を遣う必要があるでしょう。

カンジダ感染が、夏も冬も関係なく通年起こっている場合、免疫機能の低下を疑った方が良いかもしれません。

カンジダ菌などの日和見菌に感染するということは、免疫機能が適切に機能していない可能性があります。

そのため、カンジダ感染が治りにくい患畜さんには、免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA)を測定するテストを行います。カンジダ感染が長引く患畜さんは、この値が低いことが多いです。

ワンちゃんの免疫グロブリンの量が適正であれば、感染症にかかっても免疫力で対抗できますし、カンジダ菌などの日和見菌に感染することはありません。