腰痛予防と治療―4種の体幹トレーニングとその効果

ヨガ

早分かり -

  • ピラティスは、体の本来の機能を呼び覚まし、体幹の強化、体の柔軟性としなやかさを向上させるのに役立つと言われているが、研究者グループは、ピラティスは、一般的な腰の機能や痛みの改善には、ほとんど効果がないことを示唆している
  • ヨガは体幹を鍛えるのに最適で、腹筋を強化し、引き締める効果も大きい。また、自然な腰痛緩和法としても広く普及している
  • Foundation Trainingも、背筋や体幹のアライメント強化に適しており、ヨガ同様、専用の道具など一切使わず、どこでもできるトレーニングである
  • また、ゴーカレー法は、悪い姿勢が原因で起きる体の痛みに根本から対処する。立つ、座る、動くといった人間の基本動作を、本来あるべき動きに戻していくメソッドである
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Dr. Mercolaより

慢性疾患にかからないために、食生活と同様に運動も重要な要素の一つです。しかもその方法は多種多様で、どんなライフスタイルにも取り入れることができます。

ピラティス、ヨガは、それぞれ体幹を鍛える以上の効果がある運動として知られています。Foundation Training もまた、体幹の筋肉を強化するのみならず、腰痛の原因となる姿勢の歪みに対処する運動としてお勧めです。

ゴーカレー法は、姿勢を正しく保つことに主眼をおいているため、ジムの中でも外でも、日常のすべての動作に反映できるという点でメリットがあります。姿勢が改善されれば、体を動かすだけで治療効果がある運動になり得るのです。

The New York Timesに掲載された、ピラティスとヨガの違いについての特集記事を、ここで簡単に見ていきましょう。

その後で、Foundation Trainingとゴーカレー法の利点や、体幹強化、腰痛緩和、健康増進においてFoundation Trainingが最も優れている点や、フィットネス以上の効果についてお話します。運動時の怪我のリスクも減少します。

ここで紹介する4種の運動法はすべて体幹を安定させる効果があります。このうち、Foundation Training とゴーカレー法は、ほとんどの痛みの原因となっている、基本的な姿勢の歪みを正していくので、腰痛予防や治療の効果が高いとされています。

ピラティスは体幹強化に適しているが、腰痛対策としては不十分

体幹を鍛えるタイプのフィットネスプログラムであるピラティスは、その創始者である、Joseph Pilates氏の名前から命名されました。ピラティスのバランスを求められるピラティスの動作は、体の本来の機能を呼び起こし、体幹の強、体の柔軟性としなやかさを向上させます。「動作の回数より質が大事なのです。」と、Joseph Pilatesは述べています。

ピラティスは床にマットをしいて、または、より強度を増すために専用のツールを使っておこないます。難易度を自由に変えられるため、さまざまな体力の人に応用が利くのが特徴です。

体幹を強化するにはうってつけのエクササイズです。大学の研究者グループによる筋電図を使った測定では、ピラティスの動作であるロールアップ、ダブルレッグストレッチを10回繰り返した結果、運動の効果が深層筋にまで及んでいることがわかりました。

しかし、腰痛予防や治療となると、ピラティスの効果はあまり期待できません。2012年に実施された、原因不明の慢性腰痛を持つ患者を対照にしたピラティスの効果を再評価する研究において、腰椎を安定させる他の運動をおこなったコントロール群と比較して、ピラティスをおこなった実験群で運動機能や痛みを改善する効果がなかったことがわかりました。

私自身も、昨年の夏、ピラティスの認定講師によるプライベートレッスンを受けたことがありますが、腰痛の改善はありませんでした。私の腰痛に効いたのは、10分座ったら立ち上がるというFoundation Trainingと、ゴーカレー法の姿勢を正す方法を交互におこなう方法でした。

この理由は、私が思うに、姿勢に歪みのある人が多く、身体の機能がもともと整っていないため、体幹を鍛えるだけでは不十分だからではないでしょうか。この特集記事は、次のように、ピラティスの効果について疑問を投げかけています。

「昨年発表されたピラティスに関する研究報告によると、ピラティスによる筋力増強効果や脂肪燃焼効果は体幹部分に限定されていることがわかりました。反対にヨガ(特にハタヨガのフロー)では、大きな筋肉を鍛える効果が高いことがわかりました。」

体幹を鍛えるだけに終わらないヨガ

ヨガは5000年の歴史を誇る修行法です。多くの人が、エクササイズの一種だと認識していると思いますが、ヨガは、心身、精神共に統合的に修練するための行なのです。ヨガの健康増進効果は多岐にわたります。肉体の強化、調子を整える、体液や酸素の循環を促す、朝には活力をみなぎらせ、夜には体を休めるなどの効果があります。

痛みが消えた、免疫力がついた、良く眠れる、血圧が下がった、消化が良くなった、怪我の治りが早くなったなどの声が多く聞かれます。

ヨガにはさまざまな流派があります。たくさんあるので、個人の好みや目的に合わせて選択することができます。関節や筋肉をほぐしながら身体や臓器機能の改善を目指し、運動強度も流派によってさまざまです。肉体面の強化のみを考えた場合、ヨガは、高強度インターバルトレーニングなど体幹を鍛える他の運動を補完する目的には最適です。背中、骨盤、肩、背骨を強化できます。6パックに割れた腹筋を作り出すのにも効果的です。

特集記事は、次の様に発表しています。

2011年に、Asian Journal of Sports Medicine誌に掲載された研究報告によると、太陽礼拝複数のパートからなる一連のヨガポーズ)のみ(他のトレーニングは一切おこなわなかった)6ヶ月間ほぼ毎日おこなった男女で、研究の開始時に比べて、ベンチプレスで挙げることのできるウェイトが著しく増加する、腕立て伏せや懸垂の回数が増えるなどの効果があったことがわかりました。」

ヨガは、天然の鎮痛法として有名です。脳内の痛みの中枢に働きかけ、呼吸に意識を集中することで鎮静作用を促し、痛みをコントロールする助けとなると考えられています。ヨガの講師は、関節炎、腰痛といった身体の状態に合ったルーティンを勧めてくれます。各自のニーズに合ったプログラムを選択すると良いでしょう。

腰痛に関しては、筋肉の柔軟性を高めることと、靭帯が緩んでいる状態との違いを認識することが重要です。背骨がJ字型のカーブを描くように体を維持できなければ、背骨の靭帯が緩んでしまいます。これは一番避けなければならない状態です。

Foundation Trainingでいいとこ取り

ヨガの他にも、整体師Eric Goodman医師が考案した、Foundation Trainingは、腰痛のある人、ヨガやピラティスが厳しい体力の方に向いています。座り過ぎによる体の不調にも効果的です。

Foundation Trainingは、背骨と体幹の強化を目指すシンプルで力強い運動によって筋肉群と身体を一体化させていきます。道具は何も必要ありませんので、どこででもできます。Goodman医師は、体幹とは、骨盤と上体、下肢をつなげる部位すべてであり、ハムストリング、殿筋、内転筋もこれに含まれると説明しています。Foundation Trainingは、これらの筋肉が一体となり、体本来の機能に従って一連の動作を生み出すための訓練です。

このエクササイズでは、立った時や1マイル以上歩いた時に出ていた私自身の重度の腰痛に目を見張る改善がありました。同じく腰痛で悩んでいる方、Founderエクササイズを習慣にしてみませんか。このエクササイズでは、適切な動作を体にすり込むと同時に、背面全体の筋肉群に体重を分散させて筋肉を強化します。

その結果、体重が踵に乗るようになり、骨盤が解放されるのです。骨盤が解放されると、股関節の屈筋が伸び、体の前面が伸びやかになります。この運動では、股関節が正しい位置に納まり、体の前面が、力強く伸びやかな良い状態になります。

Foundation Trainingが適切におこなわれれば、高強度エクササイズと同じような反応が見られます。アイソメトリックなポーズをとるだけなのでそうは見えないかもしれません。ですが、正しくおこなうと汗ばむほどの運動効果があります。

体幹を鍛えて筋肉を強化する

Goodman医師は、「体幹を鍛えたいなら、股関節から」と述べています。骨盤に直接つながっている筋肉はすべて体幹と考えるべきです。運動能力、柔軟性、バランスや力強さはすべて、股関節の強さにかかっています。そのためには、Foundation Trainingで次に挙げる筋肉を鍛えると良いとGoodman医師は勧めています。

  1. 殿筋。力の源です。単独では機能しません。
  2. 内転筋(内ももの筋肉)は、牽引の作用があります。内転筋群の強度が保たれると、股関節が安定する、土踏まずがしっかりする、強い筋肉によって骨盤がしっかりと支えられるなどの効果があります。
  3. 腰の深部の筋肉も背面の筋肉群と一体化して機能することができます。つまり、腰が弱いと、すべての動作に悪い癖ができてしまうのです。
  4. 腹筋と股関節の屈筋。体の前面の様子を見ると、背骨や骨盤の状態が一目瞭然です。前面が固いと、背面はきちんと機能することができません。
  5. 腹横筋。体の支えとなる筋肉です。腹横筋が引き締まると、体幹の他の筋肉を支え、全体が強化されます。

腰痛を根本から絶つための正しい姿勢

非常に重要であるにもかかわらず、日常の動作と姿勢が健康の基本として注目されていない2つの要素であることに気がつきました。このことを良く知れば知るほど、健康で動きに制限や痛みがない状態で長い人生を過ごすには、良い姿勢や正しい日常動作が、定期的な運動と変わらないくらい重要であると強く思うようになりました。

重力に逆らいながら正しい姿勢を保ち、正しく体を動かすことが健康にとって何より重要なのです。人体の機能、生体力学的な一面を理解し、重力に逆らわず寄り添っていくことで生涯をとおして動ける理想的な体作りが可能です。また、痛みの発生そのものを予防することにもつながります。

Esther Gokhale氏が提唱するゴーカレー法の「基本姿勢」は、身体の本来の姿で立つ、座る、動く方法であり、短期間で効果的に身につけることができます。従来のメソッドでは、骨盤を丸めて、背骨をS字型にするよう指導するものもありますが、Esther氏は、J字型のほうがより自然な姿勢であると提唱しています。J字型の状態では、背中はまっすぐ、腰椎も平らに近く、臀部は少し出ている状態です。

骨盤に角度を付けると、骨盤腔が約3分の1狭くなり、内臓が押しつぶされてしまいます。どの臓器がどのように影響を受けるかは計り知れません。「基本姿勢」は、肺が自由に動き、消化器官が遮られることなく適切に機能することができる理想的な空間をもたらします。

ゴーカレー法は、姿の悪さが原因で起こる体の痛みに根本から対処します。痛みが起こる前に、正しい姿勢を学んでおいたほうが良いですよね。Esther氏の著書、「8 Steps to a Pain-Free Back痛みから解放されるための8つの方法」では、1000点を超える図や写真が掲載された優れた指導書です。彼女のテクニックを紹介したDVDも用意されています。さらに詳しく知りたい方は、GokhaleMethod.comで、ゴーカレー法の講師を探してみられてはいかがでしょうか。