魚中心の食事の有効性―水銀汚染にまつわるリスクをしのぐ

サーモン

早分かり -

  • 動物性オメガ3脂肪酸(EPAやDHAなど)を摂取するには、魚が最適であると考えられてきたが、海洋汚染が進み、健康な脂肪源とは位置づけにくくなってきている。
  • 幸い、有害物質の蓄積が最低限におさえられている魚については、今でも脂肪や抗酸化物質を摂取できる最適な食品となりえる。つまり、賢く選ぶことによって、魚中心の食事の有効性が、汚染物質によるリスクをしのぐといる。
  • 毒性が最も低く、脂肪や他の栄養素が豊富な魚類は、天然のアラスカ紅鮭や、イワシ、カタクチイワシ、ニシンなどの小魚が挙げられる。
  • 特に食物連鎖の中で上位にいる大きな魚類は、メチル水銀やその他の環境有害物質による汚染度がはるかに高いので避けた方がよい。
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Dr. Mercolaより

動物性オメガ3脂肪酸(EPAやDHAなど)を摂取するには、魚が最適であると考えられてきましたが、海洋汚染が進み、この貴重な栄養源は、健康な脂肪源とは位置づけにくくなってきています。

しかしまだ例外はあり、どの魚なら汚染が少ないかを理解することが重要なポイントです。

興味深いことに、幸い、有害物質の蓄積が最低限におさえられている魚については、今でも脂肪や抗酸化物質を摂取できる最適な食品となりえます。つまり、賢く選ぶことによって、魚中心の食事の有効性が、汚染物質によるリスクをしのぎます。

Vital Choice―命に関わる選択

Vital Choice Wild Seafood and Organicsの創設者で、社長のRandy Hartnell氏とのインタビューについてご紹介します。私個人は同社の紅鮭の大ファンで、時々外食時に魚料理を食する場合を除いて、Vital Choice の鮭は、唯一口にする魚です。というのも、あとで説明しますが、とある理由で汚染が低く、他の種類の鮭や、他のどの魚類よりも栄養面でもはるかに優れているとされているからです。

2001年に、環境に配慮した漁法で、重金属の汚染が特に低いとされる天然の鮭を扱う水産会社を創業する以前は、Hartnell氏は、20年以上もの間、漁師として生計をたてていました。

彼が漁師からサプライヤーの方に転向した理由は、養殖の鮭が市場に爆発的に出回るようになり、天然鮭は市場から追い出されてしまったからです。人々は養殖と天然の違いを理解しておらず、しかも養殖の鮭の方が安価だった(今でもそうです)のです。

「落胆の中、私は友人と飛び出し、ただ国中を旅しはじめました。Whole Foods MarketやWild Oatsのような食品スーパーに行き、店の前でグリルセットを設置し、天然の鮭を料理しました。そしていかに天然の鮭の素晴らしさ、養殖より優れている点を人々に伝えていきました。
とHartnell 氏は語ります。

「人々の反応は手応えのあるものばかりでした。人々はみな、『うん、これは美味しい!でも普段ここには置いてないですね。どこに行ったら買えます?』と、よく尋ねられました。その度に『すみません、わかりません。』というしかありませんでした。そしてある日、ひらめいたのです。そしてこういいました、『私が手配しましょう。そしてあなたにお送りします。』」

その後の話はご存じのとおりです。「最高品質の天然アラスカ鮭をあなたの家の玄関先までお届けします。」これが彼の現在の事業です。詳細はこちら、VitalChoice.comでご覧ください。

天然アラスカ紅鮭がオススメな理由

天然鮭と養殖鮭の違いは大きく3つ挙げられますが、それぞれどのように育ったかをベースに見ていくと、安価な養殖鮭が賢明な選択ではない理由がよくわかります。

  1. 魚の健康  天然鮭は、私たちが何もしなくても、毎年自力で産卵地へ戻りますが、養殖鮭はずっと囲いの中に入れられています。当然ながら魚にとって広い海で泳ぐことは良い運動になりますし、囲いの中に閉じ込められている養殖鮭に比べると健康的です。ブリティッシュコロンビア大学動物学部のTony Farrell氏が述べているとおり、窮屈な環境に閉じ込められた魚は、人間でいう「カウチポテト(怠け者)」族の海中版であり、健康状態も似かよってくるのです。
  2. 栄養成分 — 天然鮭は海中を自由に泳ぎ、自然の摂理で巡ってくるものを餌にします。つまり鮭に必要な微量栄養素、脂肪分、ミネラル、ビタミン、アスタキサンチンなどの抗酸化物質(鮭独特のピンク色、紅鮭に関しては鮮やかな赤色を与える成分)の摂取においては、より完璧に近い状態であるといます。

    一方、養殖鮭は、コーンや大豆のような穀物(ほとんどが遺伝子組み換え)からなる人工の餌や鶏肉、フェザーミールや人工着色料、合成アスタキサンチンなど人間の食物としては承認されていないものが餌として使用されています。
    母なる自然界では決して食することの無い餌を食べ、その結果、魚肉の成分まで悪い方へ変わってしまうのです。養殖鮭は天然鮭とは違う味になります。その原因は、脂肪の含有率が著しく異なるという点です。養殖鮭は、穀物ベースの餌のせいで、オメガ6脂肪酸をはるかに多く含みます。

    天然鮭では、オメガ3脂肪酸のオメガ6脂肪酸に対する比率は、養殖鮭よりはるかに優れています。天然鮭は通常、オメガ6脂肪酸1に対して600〜1000%ものオメガ3脂肪酸を含みます。一方で養殖鮭は、上述のとおり「ジャンクフード」による食事のせいでその比率はなんと1:1です。ちなみに紅鮭に関していえば6〜9: 1の割合となります。つまり、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスを改善しようとしている人は、養殖鮭を食べても意味が無いということになります。
  3. 環境 — 養殖鮭の99%が、海中に張られた網の中に囲われています。海中に投げ込まれ、余った餌(遺伝子組み換え原料、農薬、抗生物質、食品添加物など)は環境中に残されたままとなります。

    魚が食べなかったもの、または魚の排泄物も、環境を汚染するのです。スコットランドで発表された最新の研究報告によると、鮭の養殖場での農薬の使用が過去4年間で110%に増加しており、環境にも人体にも有毒物質の影響が高まっています。

鮭がベジタリアンであるという側面も注目すべき点です。肉食の鮭も存在しますが、天然の紅鮭は、ベジタリアンです。天然鮭はおもに、オキアミ、プランクトン、海藻などを食べ、ライフサイクルを終えようとするタイミングで捕獲されます。漁場に入ってくるときには、自然環境中でのライフサイクルの95%を終えた状態なのです。命を終える直前に、産卵のために川を遡上し、死ぬ時を迎えるか、人間に捕獲される、またはその他の動物に捕食されます。

不正表示の鮭に注意

残念なことに、不正表示の鮭が多く売られています。Hartnell氏によると、天然物と記載のある魚の70-80%は養殖魚であることを発見した研究が複数存在するそうです。これはレストランで提供される鮭も該当します。天然とメニューに記載されていても、実際は90-95%が養殖魚です。次に示す項目で鮭がアラスカ産かどうかを確認することができます。

  1. 「アラスカ産」と記載された缶詰。アラスカサーモンは養殖が許可されていないため。
  2. レストランでは、不正表示の場合、「アラスカ産天然」ではなく、「天然」と記載されている。「天然のアラスカ産」であれば、追跡が簡単にできます。「天然」という用語も不透明な部分があるために、良く使われています。この点は、「自然」という言葉が乱用されている点と非常に似ています。
  3. グローサリー店やレストランでは、魚介類の担当者やウェイターに産地を尋ねると良いでしょう。天然物であれば、仕入れ額も高いはずですので、その価値は理解しているでしょう。セールスポイントとして、産地は必ずわかっているはずです。産地がわからない場合は、養殖の可能性があります。またはさらに悪い理由があるかもしれません。FDA(米国食品医薬品局)は、遺伝子組み換え鮭を承認しようとしています。ご存じのとおり、アメリカでは遺伝子組み換え食品の表示義務はありません。
  4. アトランティックサーモンは避けましょう。現在、「アトランティックサーモン」という表示のあるものはすべて養殖です。
  5. 紅鮭は養殖ができませんので、天然物である確率が高いです。紅鮭は、身の色で他の種類と区別することが可能です。紅鮭の身は、ピンクというよりは明るい赤色です。赤身の強い理由は、アスタキサンチンの含有量が高いためです。紅鮭は、食品すべてにおいてアスタキサンチンの含有量が最も多い食品です。

環境有害物質を考慮した場合に食べたい魚/食べたくない魚

世界の大部分の主要な水路は、水銀、重金属およびダイオキシン、PCB、各種の農薬など、環境中に蓄積する化学物質に汚染されています。このような理由から、オメガ3脂肪酸を魚から摂取することはもはやお勧めしません。しかし、これには2点の例外があります。

一つは、産地に偽りの無い天然のアラスカ紅鮭の場合です。その栄養価は汚染のリスクを上回ると考えています。約3年という短い鮭のライフサイクルを考慮すると、紅鮭の体内に高い濃度の水銀やその他の有害物質を蓄積しているリスクは低いと考えられます。さらに、有害物質の生体内蓄積についても、鮭は他の魚を餌にしないため、リスクは低いです。

私は、魚を食べる場合はいつも、クロレラの錠剤をひとつかみ飲むことにしています。クロレラは、水銀と結合する作用があり、魚と一緒に摂取することで、水銀を体内に吸収せず、便として排泄することが可能です。

2つめの例外は、ライフサイクルの短い小魚です。含有している脂肪を考慮した場合にもより良い選択といます。汚染のリスクが低く、栄養価は高いと、良いことずくめです。おおよその目安として、食物連鎖の下位に位置する魚は汚染度は低くなります。リスクの少ない魚をご紹介しましょう。

  • イワシ
  • カタクチイワシ
  • ニシン

サイズの大きな魚は寿命も長く、汚染度は高いため避けた方が良いでしょう。

マグロ(ステーキ、寿司、缶詰など) スズキ、オオクチバス マカジキ
オヒョウ カワカマス スケトウダラ
サメ 太刀魚 シログチ

魚に含まれる解毒作用のある栄養素は水銀汚染の影響を相殺できるか

魚肉に含まれるセレニウム(解毒作用を助ける)などの栄養素がメチル水銀に対抗する効果があると信じられてきましたが、最新の研究報告によると、この仮説は間違いである可能性が出てきました。あるフランスの研究チームは、魚肉から摂取した水銀が他の食品から摂取した水銀と比較して毒性が低いかどうか、魚肉に含まれる栄養素が、魚肉に含まれる水銀の影響をおさえることができるのかどうかについて調査しました。この実験では、マウスに次のどれかが与えられました。

  • 魚由来のメチル水銀を含む餌。1g当たり5 mcgのメチル水銀を含む魚肉を使った餌。
  • メチル水銀を付加した餌。DHAとEPAが豊富に含まれ、塩化メチル水銀(魚由来のメチル水銀より毒性が高いとされる)を付加した餌。1g当たり5 mcg。
  • 水銀を含まない理論上の比較のための餌。

この3種類の餌は、水銀とセレニウムの濃度だけが異なっていました。興味深いことに、魚由来のメチル水銀を含んでいた餌を食べたマウスに実験開始後58日で、有意な異常行動が見られました。著者は述べています。

「この実験で使われた、水銀を含む2種類の餌の相違点は、水銀が塩化メチル水銀の付加によるものであったか、魚由来のものであったかという点です。メチル水銀を含む餌と、魚由来の水銀を含む餌との差は、含まれる水銀の化学種の違いや、魚の体内に含まれる高度不飽和脂肪酸(PUFA)、セレニウムなどの働きによると考えられます。

高度不飽和脂肪酸(PUFA)やセレニウムなどの栄養素に、メチル水銀に対抗する作用があるのであれば、魚由来の餌を食べたマウスにはメチル水銀を含む餌を食べた場合よりも影響が少なくても良いはずです。しかし、現在の研究では、魚由来の餌を与えられたマウスには、対照群、メチル水銀を含む餌を食べたグループと比較して異常行動が見られています。また、脳内の水銀濃度を比較してみると、両者に差は無く、魚由来の水銀を含む餌を食べたグループでは、線条体の水銀の量が少ないことがわかりました。

このため、水銀の化学種の差によって、Y字迷路における認知機能や、オープンフィールドでの運動活性に差が出ることが説明づけられます。