これって痔?それとももっと悪い病気?

痔の予防

早分かり -

  • 痔は、肛門や直腸壁の静脈が、よじれる、腫れ、炎症を起こした状態で、肛門の内部たまは外部に発生します。
  • よくある痔の原因は腹圧の上昇です。年輩の方、妊婦、肥満の方に多く見られます。
  • 直腸からの出血も痔の徴候ですが、出血は結腸直腸癌などのさらに深刻な病気によるものである可能性もあります。
  • この記事では、痔を予防する正しいトイレの習慣をご紹介します。
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Dr. Mercolaより

痔というと、楽しい話題ではないですし、相手がお医者さんであっても話しづらいですよね。ですが、痔は男女問わず多いトラブルなのです。

典型的な西洋型の食生活と、ストレスが多く運動不足になりがちなライフスタイルを考えると不思議ではありません。痔は、現代的な西欧の国々だけの問題ではありませんが、より原始的で、より工業化の進んでいない文化圏ではあまり見られません。

痔とは?

痔は、肛門や直腸壁の静脈が、よじれる、腫れ、炎症を起こした状態です。肛門の内部たまは外部に発生し、痔核ができると痛みや出血を伴います。

痔が、肛門内部の直腸との境目より上部にある場合は、内痔核です。痔が、直腸と肛門の境目より下部にある場合は、外痔核です。内痔核、外痔核ともに肛門内に収まっている場合と、外に飛び出してしまう場合があります。

痔ができる仕組み

痔の多くは、腹圧の上昇によって、つまり、排便時にいきむことでできます。痔は、慢性消化障害、特に便秘のある人に多く見られます。年輩の方、妊娠中にも多く起こります。妊娠中は、胎児の成長と共に子宮が圧迫され痔に発展しやすいです。出産によって悪化することもありますが、妊娠がきっかけになっている痔は、出産を終えれば治ってしまう場合が多いです。

よくある原因のもう一つは、肥満です。体重が増えすぎると、腸内をとおる便を排出するための力が不足することが多いです。

痔かどうかを判断する

痔は症状出る場合と出ない場合があります。適切なケアでほとんどの場合数日で改善します。

内痔核の場合、鮮血が特徴です。トイレットペーパーに付いたり、便器に落ちたりします。内部痔は肛門の外に飛び出してしまうことがあります。その場合の痛みはさほど感じられません。

外痔核の場合、腫れがあったり血栓が肛門の周辺にできたりします。血栓性外痔核と呼ばれ、激しい痛みを伴います。

日頃の排便習慣が、不快症状、出血、かゆみなどのトラブルを悪化させてしまします(出血のせいでかゆみが起こることがあるため)。痔になってしまったら、排便時にいきみすぎないようにしてください。清潔にしようとして、強く拭くと刺激となって症状を悪化させます。

痔核と似ている症状の出る病気は、肛門周囲膿瘍、肛門裂傷、裂肛、痔瘻、肛門掻痒症(肛門周囲にかゆみを生じさせる様々な病気)などがあります。

直腸の出血に関する注意

排便時に出血があっても、痔かなと思う方が多いと思います。出血がはじめてと言う場合は専門家に相談することをお勧めします。直腸からの出血は、結腸直腸癌などのさらに深刻な病気によるものである可能性もあります。特に中年以降の世代の方は注意が必要です。

前述のとおり、鮮血が出るのがよくある痔の徴候ですが、はじめて、または突然の出血は年齢に関係なく診察を受けましょう。

興味深いことですが、ビタミンDは結腸癌のリスクを減らすことができる最も効果のある方法の一つです。体内のビタミンD量を最適に保つと80パーセントもリスクを減らすことができます。

体内のビタミンD量を測定して、通年で60ng/ml前後を維持するようにしてください。大変大きな予防効果があります。

第一の目標は、痔にならないこと

痔の原因は、多くの場合、便秘のせいで排便時にいきんでしまうことです。

便秘の原因は、食生活の乱れ、運動不足、水分不足、ストレスなどがあります。他にも、下剤の乱用、過敏性大腸症候群、甲状腺機能低下なども関係しています。便秘を予防する簡単な方法をご紹介しましょう。

  • 繊維の豊富な食品を食べましょう。野菜は、食物繊維が豊富です。様々な植物性食物繊維を摂ると、便の量が増え、腸の中をスムーズに通過できます。さらに多く食物繊維を摂りたい場合は、オーガニックのフラックスシードをお勧めします。コーヒー・グラインダーで挽いたものを、大さじ1-2杯ほど食品に加えてください。有機オオバコもお勧めです。便秘や下痢の症状を抑える効果があります。

    オーガニックでないもの、例えば食物繊維サプリメントはあまりお勧めできません。これまでの食事で繊維を摂ることに慣れていない場合は、慣れるまで、お腹が張ったり、ガスの量が増えたりしますので少しの量から始めて段々増やすようにしましょう。
  • フラボノイドを摂るために、新鮮なオレンジを食べましょう。フラボノイドは、静脈の健康を促進する強力な植物化学物質です。食事にココナッツオイルを追加するのもいいでしょう。南太平洋の熱帯の島々に住む人々は、食事から摂る脂肪の半分以上をココナッツから摂取することが知られています。その結果、痔をはじめとする、西洋文化に特有の疾患がほとんど見られません。個人的にお勧めするのは、ピュア バージン ココナッツオイルです。
  • 水を十分に飲みましょう。天然水か逆浸透水がお勧めです。のどが渇くかどうか、尿の色などを水分補給が足りているかどうかの目安としてください。尿の色は、薄い黄色が最適です。濃い黄色の場合、水分が足りていません。(くっきりとした黄色の場合、ビタミンB2の影響です。総合ビタミン剤によく使われています。)繊維や水分が十分に摂れていると便が柔らかくなります。便は柔らかい方が、大腸をスムーズに移動し、排便時に強くいきむ必要がありません。
  • 定期的な運動で消化管を刺激しましょう。
  • 質の良いプロバイオティクスを摂りましょう。腸内菌のバランスを整えると便秘にも、体調にも良い効果があります。
  • 感情面でのストレスをコントロールしましょう。感情解放テクニック(EFT)のようなツールで便秘の一因となる感情的なストレス要因を和らげることを強くお勧めします。痔の再発による痛みを伴う症状を軽減する効果があります。

ほとんどの人が気づいていない方法は、和式の(しゃがむ)トイレです。昨年インドに行ったのですが、興味深いことに、床に穴があるタイプがほとんどで、洋式のトイレがなかったのです。しゃがむタイプのトイレでは、便意を催したときに最も適した体勢がとれるのです。

洋式のトイレの場合、排泄するときに必要な力が入りにくい体勢になっています。トイレに穴を掘るようにお勧めしているわけではありません。しゃがむ体勢を再現できるようにトイレで使用し、排便を楽にする道具があります。

実践したいトイレの習慣

  • 便意があるときは、我慢せずにトイレに行ってください。便意を催したらすぐにトイレに行きましょう。こらえて行かずにいると便秘が悪化します。
  • 長い時間トイレに座り続けないようにしましょう。直腸に腹圧がかかるのでやめてください。一回のトイレで3-5分ほどにしてください。必要に応じて、立ち上がったり、歩き回ったり、他の方法で気を紛らして便意が戻ったらまたトイレに行きましょう。便器に座った姿勢のときに足置きを使って足の位置を上げる、腫れた組織にかかる腹圧を和らげることができます。
  • 排便時に、いきみすぎないようにしてください。いきむときは、あまり力を入れず、30秒ほどでかまいません。腹筋と骨盤筋を使いましょう。
  • しゃがんで用を足してみましょう。体の構造に従って、しゃがんで用を足す国では、痔はあまり見られません。1980年代後半に発表された研究では、しゃがんで用を足すようにした痔の患者20人のうち18人が、痛みや出血が消滅したり、大幅に改善されたと報告されています。

お尻の正しい拭き方

  • トイレットペーパーやその他のワイプ(お尻ふき製品)を使うときにごしごしと強くこすりすぎない様にしましょう。皮膚に刺激となって炎症のもとです。
  • 可能であれば、石けんを使わずにシャワーなどで洗ってください。(石けんは刺激になります。)
  • 患部をよくすすいで、柔らかいタオルをやさしく押し当てて、こすらないように拭いてください。
  • 洗い流すことができない場合は、使い捨てのお尻ふき(ウェットティッシュ)などで、強くこすらないように拭いてください。

自宅でできる対処法

  • Butcher’s broom(ナギイカダ)は痔によく効くハーブエキスです。強力な抗炎症作用と血管収縮作用があり、炎症の起きた静脈を引き締め、強化します。静脈のトラブルによく使われ、血管壁を強くして、排便時の腹圧がかかっても血管が広がりにくくなります。

    他にも、Horse-chestnut(セイヨウトチノキ)、Bromelain(ブロメライン)、日本のエンジュ・エキス、アロエベラエキスなども効果があります。
  • 腰湯。腰湯は、臀部を温水に漬けて体を温める方法です。浴槽の湯気の熱が症状を和らげ、患部の治癒を促します。熱すぎないお湯で、何も入れないようにしましょう。1回に10-15分を、何度でも好きなときに試してみましょう。症状が和らぎます。
  • 冷却パックや氷嚢などで、肛門の周囲を冷やしましょう。あてたままにしないように気を付けて10-15分間、1日5回までにしてください。
  • 肛門の周囲を、乾燥した状態に保ちましょう。湿りすぎていると皮膚の炎症やかゆみ、感染の原因となります。
  • 肛門の周囲に、ワセリンなどを塗って患部の炎症を鎮めましょう。アロエベラのジェルを塗ると、ヒリヒリが収まります。ウィッチへーゼルのような局所収斂剤も良いでしょう。
  • 排便の後はトイレットペーパー、脱脂綿、ウィッチへーゼル(薬売り場で購入できます)で湿らせたコットンで拭いてください。

医療措置

症状がひどい場合、外科手術や内視鏡手術が必要となる場合があります。ただし、これは最後の手段です。

痔に対する医療措置は、次のようなものがあります。

  • ゴム輪結紮法、は痔核をゴムバンドで縛る方法です。ゴムバンドにより、痔核への血流が止まり、痔核は数日でしぼんで壊死します。
  • 痔核注射療法は、薬剤を痔核に注射して収縮させる方法です。
  • 赤外線凝固法(痔核の組織を焼いて固める)
  • 痔核切除。痔を外科的に切除します。

このような痔の治療が必要な状態にならないように努めましょう。痛みや炎症を伴う様々なトラブルと同様、痔も、食事、水分の補給、運動、感情面のストレス、その他の生活習慣に注意を向けるように、体が発しているシグナルなのです。